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11.お菓子と蛇

代子のスマホが鳴動した。塔子は、知り合いの店に行っていた。

 ========== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 島代子しまたいこ・・・有限会社芸者ネットワーク代表。元芸者。元プログラマー。小雪の先輩らしいが、小雪以外には、本名は知られていない。芸者の時の芸名は『小豆』。また、本部の住所も極秘である。後輩達には堅く口止めしてあるのだ。

 飽くまでも、私的組織だが、警察にはチエを通じて協力している。可能なのは、情報提供だけである。

 戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。

 烏丸まりこ・・・芸者ネットワークの事務員。

 貴志塔子・・・代子がプログラマー時代、組んでいた相棒。ネットワークシステムは、2人の合作だ。

 西川稲子・・・代子と塔子の、プログラマー修行時代の仲間。


 茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。

 楠田幸子・・・チエの相棒の巡査。


 =====================================


 ※京都には、京都伝統伎芸振興財団(通称『おおきに財団』)と京都花街組合連合会という組織が円山公園の近くにある。両者は、芸者さん舞妓さんの『芸術振興』の為にある。オフィシャルサイトも存在する。

 現在、京都花街組合連合会に加盟している花街として、祇園甲部、宮川町、先斗町、上七軒、祇園東の5つの花街があり、総称して五花街と呼んでいる。 鴨川の東側、四条通の南側から五条通までの花街。

 ※この物語に登場する『芸者ネットワーク』とは、架空の組織であり、外国人観光客急増に伴って犯罪が増加、自衛の為に立ち上げた、情報組織である。

 リーダーは、『代表』と呼ばれる、芸者経験のある、元プログラマーの通称島代子しまたいこである。本部の場所は、小雪しか知らないが、『中継所』と呼ばれる拠点が数十カ所あり、商店や寺社と常に情報交換している。


 午後1時。芸者ネットワーク本部。

 代子のスマホが鳴動した。塔子は、知り合いの店に行っていた。

 お菓子がイートインで食べる上に、店主がアコーディオンの演奏をサービスしてくれるのだとか。店主の先代は電気器具店を営んでいたが、とうとう閉業してしまったが、隣で営業していた、お菓子屋さんは営業している。

 塔子は、言った。

「ふわふわのお菓子、お土産に買って帰るからね。」

 ふわふわのお菓子は、口コミを通じ、SNSで話題となった。

 行列こそ出来ていないが、繁盛している、と言う。

 塔子は、挨拶を兼ねて「取材」に行っていた。

 カムフラージュを兼ねて、芸者に関わる事件の情報だけでなく、タウン誌(小冊子)を発行するようになったのだ。

 塔子は、タウン誌のシステムを手がけたことがあり、そのノウハウを心得ていた。

 突然、電話の向こうが騒がしくなり、塔子を含む「女の悲鳴」が聞こえた。

 代子は、迷わず東山署のホットラインの電話を取り上げた。

 電話に出たのは、チエだった。

「ごめんなさい。塔子の身に何かあったらしいの。何とか・・・。」

「場所はどこですか?」

「西ノ京の、『ふわふわ堂』。」

「今、行きます。」

 午後2時。西ノ京円町。ふわふわ堂。

 元は電気店だった店の隣に、『お菓子と音楽・ふわふわ堂』があった。

 先代は電気店だったが、廃業。隣に既に開業していたのが、二代目が作った喫茶店。

 チエが行ってみると、白い蛇が横たわっていて、皆怯えて隅で震えている。

 先に到着した茂原も震えている。

「ばらさんも、蛇、苦手か?」茂原は無言で頷いた。

 チエが臆せず、蛇の頭を掴むと、どうしたものか、と考え込んだ。

 チエが、表に出ると、キャンピングカーが停まり、中からアメリカ人らしい女性が出てきた。

「あら、ホワイティ。ダメじゃない。一人でお出かけしちゃ。」

 流暢な日本語で言った女性は、車の中から専用ケージらしきものを取り出し、蛇を入れた。

「ペットがはぐれたんですか?」

「ええ。私、今、奈良県に住んでいるんだけど、三室戸寺から大豊神社に行って、出町青龍妙音弁財天に向かう途中、ナビが故障して、道に迷ってしまったの。それで、道を尋ね回っている内にホワイティが、どこかに行って・・・助かったわ。その制服は、ポリスウーマンね。」

「分かりました。今年の干支ですね。蛇の神様にお参りに回っているんですね。先導しますから、ついて来て下さい。」

 チエは、店に入って言った。

「迷子の蛇は、文字通りラッキーな『お使い』やった。ケージに入ったから。ばらさん、楠田。行くで。塔子さん、代子さんが心配しているから会社に電話してあげて。」

 2台のパトカーに先導されて、キャンピングカーは去って行った。

 店の主人は、よく分からない曲をアコーディオンで演奏し、歌った。

 午後4時。芸者ネットワーク。

 塔子が帰って、代子に事情を話していると、稲子が帰って来た。

 まりこが感嘆した。

「見事なヘビ柄ですね。ひょっとしたら、本物?」

 稲子は頷いた。

 塔子が気絶した。

「まりちゃん、気付け薬。」

 暫く、喧噪は続いた。

 ―完―

 ※三室戸寺。

 光仁天皇の勅願により奈良時代に創建された宇治市の古刹「三室戸寺みむろとじ」。西国観音霊場の第10番札所として、また、季節の花々に出合える花の寺として広く知られていますが、実はヘビゆかりのお寺でもある。

 参道の入口に架かる小さな橋は「蛇体橋じゃたいばし」といい、雨の降る日には橋の裏側にヘビの影が現れるのだとか…。その昔、ヘビにさらわれそうになった娘が三室戸寺の観音様に救われたという民話に由来するもので、寺にはその娘がお礼に奉納したと伝わる「宇賀神うがじん」の木像(非公開)もある。

 ※大豊神社。

 京都を代表する観光地・哲学の道の近くにたたずむ「大豊神社おおとよじんじゃ」。平安時代初期に宇多天皇の病気平癒祈願のために創建され、その後は地域一帯の産土神として信仰されてきた。大豊神社といえば、境内末社の大国社に鎮座する「狛ねずみ」で有名で、境内をくまなくめぐると、おなじみの狛犬や狛狐のほか、狛鳶とび、狛猿、そして狛蛇にも出合える。

 狛蛇はどこにいるかというと、医薬の神様・少彦名命すくなひこなのみことらを祀る本殿前。治病健康長寿や若返り、金運のご利益をもたらすご祭神のもと、左右一対の狛蛇が並んでいる。ヘビも健康長寿や金運の象徴であることから、まさに適材適所、最強の組み合わせと言える。

 ※出町青龍妙音弁財天。

 賀茂川に架かる出町橋の西詰にひっそりとたたずむ、出町妙音堂こと「出町青龍妙音弁財天でまちせいりゅうみょうおんべんざいてん」。伏見宮家に代々伝えられてきた妙音弁財天画像を本尊として祀り、かつて伏見宮邸があったこの地域の信仰を集めてきた。ご利益は、技芸上達、福徳円満、財宝増益など盛りだくさん。

 こちらで多く目にするのが、弁財天の使いとされるヘビにまつわる奉納品の数々。拝殿の軒下にヘビの絵や瓦が祀られているほか、拝殿内には双頭の白蛇像や、「巳」の字によく似たヘビの抜け殻も安置されてる。



「迷子の蛇は、文字通りラッキーな『お使い』やった。ケージに入ったから。ばらさん、楠田。行くで。塔子さん、代子さんが心配しているから会社に電話してあげて。」

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