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第8話 加護と出発

 部屋に入るのに気が緩んでた俺はめちゃくちゃ驚いた。

「びっくりした!ウンディーネ、帰ったんじゃなかったのか?」

 『帰る途中で思い出した事があったの』

 「何か忘れ物?」

 『違うわよ!わたしが何を忘れるっていうのよまったく!これを渡すのを忘れてたの』

 俺に手渡してくれたのは金のネックレスだった。

 「何これ?キレイだな」

 『でしょ!けっこういいモノなのよ』

 ネックレスのトップには綺麗な彫刻が施されていて5つのくぼみがあり、そのうちの一つには水色の宝石が付いている。

 『着けてみて』

 言われるままネックレスを着けてみる。ネックレスなんて初めて着けたかも。

 すると俺の身体のまわりが水色の光に包まれた。 「なっ、なんだこれ!」

 しばらくして光が消えると、ウンディーネが『よし!』と言った。

 「よし!ってどういう事?何がどうなったのか教えてよ〜」

 『これはね、精霊の加護を授かれる首飾りなの!ちなみにこの石はわたしの加護の証しだよ』

 エッヘン!と胸を張ってる姿は先ほどの村人たちの前の精霊様とは思えないくらい可愛いらしい。

 「精霊の加護?」

 『そうよ。あんまり人間に与える事はないんだけど、アサヒには感謝してるから是非もらってほしいの』

 ウンディーネにまでこんなに感謝してもらえてるなんて改めて良い事したんだな俺。

 「ありがとうウンディーネ、大事にするよ。ところで精霊の加護ってどんなものなの?」

 『えっとねぇ、わたしの加護はいつでもどこでもキレイな水が使えるわ。そこに付いてる宝石に触れて念じればいいの。少しずつ〜とか一気にいっぱい〜とか雨みたいに〜とか色々楽しいのよ』

 「何それ!めっちゃ使えそうじゃん!」

 キレイな水がいつでもってのが一番デカい。

 この村ではウンディーネの泉からの綺麗な水があったから安心だったけど、これからの旅で浄水されてないどこのかわからない水を使わなきゃいけないのかと思ってたから正直めちゃくちゃ助かる!

 いつでも顔や手も洗えるし、シャワーみたいにも使えそう!グッジョブ、ウンディーネ!

 「この空いてるところも宝石が入れられるって事?」

 『そうよ、ただし精霊から加護をもらえたね』

 なるほど、精霊の加護をもらうとここに付ける宝石ももらえるってことみたいだな。

 5つのくぼみがあるって事は…。

 「精霊って5人なの?」

 「ううん、火、水、風、木、雷、氷、大地…とか細かく分かれたりするといっぱいいるわ、でもいくつも加護を貰える事ってそうそうないから」

 そうなんだ…俺って既に大魔王の加護もあるんだけど、これは黙っておこう。

 『アサヒ様、精霊から加護をもらえるのは大変珍しい事なのです。ウンディーネはそれほど此度の件を感謝しているのでしょう』

 『そうなのよ〜、今回の事で森の木は人間が植樹する事になるし、動物の乱獲も減る予定でしょ、わたしへの信仰心も上がってオマケにおいしいお供えまで!そりゃあ加護のひとつも授けたくもなるってものでしょ、翡翠⁈』

 うんうんと翡翠も納得してる様子。

 『誠にそなたの言う通り。甘いなどと言った自分を恥じるばかりですぞ。吾輩、アサヒ様の深いお考えに感服致しました』

 深いお考えなんてあるわけないから!

 偶然イイ感じにまとまっただけだし!

 「ちょっと、二人とも褒めすぎで恥ずいって!」

 『ハズイ?』

 「恥ずかしいってことだよ、もうその話は終わり!ウンディーネも加護くれてありがとな」

 『いつでも呼んでね、どこでも大丈夫だから』

 呼ぶのもアリなんだ、さすがは水の精霊だな。

 「頼りにしてるよウンディーネ様!」

 『ウフフ、じゃあまたねアサヒ!』

 キラリと光ったと思ったらもうウンディーネの姿は消えていた。

 それにしても水の精霊の加護か…すごく助かる気がするぞ、面倒事に巻き込まれたと思ったけど良い結果になったし良いコトだらけだったな。

 「翡翠も色々手伝ってくれてありがとな。また明日から旅に出るけど行きたいところとかある?」

 俺は道具屋で買った簡単な地図をテーブルに広げた。

 『そうですね、目的にもよりますがレベル上げなら一番近い南のダンジョンに向かうのが良いでしょうし、少し大きな街へ行くのでしたら森を西へ抜ける事になりますが…』

 何か言いたそうな感じ。

 「どうした翡翠?」

 『無礼を承知で申し上げますが、アサヒ様はレベル上げを為されるべきかと思いますぞ!』

 レベル上げ?

 攻撃力や魔力量が増えるとか次のギフトの獲得とか、翡翠は絶対やるべきって体で力説しているけど…。

 「でもさー、俺に強さは必要なくない?翡翠もいてくれてる事だし…喧嘩とかした事もないしダンジョンなんて俺には無理だと思うな」

 ゲームではデカいモンスターを狩ったり倒したりはあっても、実際のところ兄弟とさえ殴りあいどころかひっぱたいた事もない俺に魔物を倒したりはハードル高すぎな気がする。

 翡翠にどこに行きたいか聞いといてなんだけど、出来れば危ない所は避けたい。

 つか寄りつきたくもない。

 『アサヒ様ご自身で魔物を倒した方がレベルも上がりやすいですぞ。レベルが上がればまた新たなギフトを獲得出来るのですぞ!さきほどは相談もしてくださらなかったですが…』

 ズモモモモ…と顔を寄せて恨みがましい言い方をする翡翠。

 「ごめんごめん、さっきのは仕方なかったんだよ。不味いパンケーキをウンディーネに出す訳にはいかなかっただろ?」

 俺だって背に腹はかえられなかったんだよ、ととりあえず言い訳しておく。

 『それはそうですが…』とは言ってるけど翡翠も仕方なかったのは分かってくれてるみたいだ。

 「でも、料理人スキルのおかげでウマイ飯が作れるようになった事だし、翡翠にもウマイ飯作ってやるからな!」

 『それはとても楽しみですぞ』

 ウマイ飯は無敵だな。でも翡翠の好物ってなんだろう?出来れば幼虫とかは勘弁して欲しいなと思う俺だった。

 でも翡翠の言うように俺のレベル上げは必須だよな。

 今は翡翠がいるけど、いつか俺に愛想が尽きて離れてしまう事があるかもしれない。

 翡翠に頼りきってると結局自分が大変な事に遭うということだ。

 「仕方ない、南のダンジョンに行ってみるとするか…気は進まないんだけど」

 『左様でございますか⁈よくぞ決断なさいました!全力でフォローしますぞ』

 …とまぁ、めっちゃ張り切る翡翠とは真逆で俺はかなり不安だ。

 けどこのままのレベルでもどっちにしても不安だからな〜。

 その不安を払拭するべく俺はダンジョンにちょっとだけ寄る事に決めたのだった。

 本当にちょっとだけ…。

 

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