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第11話 助けた者達

 

ようやく俺は翡翠と魔法陣を使って出口へと戻った。

 『初ダンジョンクリアおめでとうございます、アサヒ様』

 「めちゃくちゃ緊張したけど、翡翠のおかげでなんとかなったよ」

 一人だったら絶対行ってない自信がある。

 『色々ありましたが人助けも出来ましたし…ムムッ⁈』

 「どうした?」

 翡翠の見た方を見ると、さっき助けた白大蛇がこちらを見ていた。

 「君は、さっきの」

 『先程はありがとうございました。実は…強い黒蜘蛛族を従えていらっしゃる貴方様を見込んでお願いしたい事がありますのじゃ』

 白大蛇は頭を下げてそう切り出した。

 「俺も気になってたんだけど…もしかしてこれと関係あるのかな?」

 さっきの偉そうな人からもらった白水晶の像を取り出して見せた。

 『そっ、それは!』

 思ったとおりの反応。

 「君の後に助けた人が俺にくれたんだけど、君にそっくりだから気になってたんだ」

 白大蛇の全身が震えている。

 『その水晶の像は我が白蛇族に代々伝わる御神体なのですじゃ…。数週間前に祠から盗まれて行方を探しておりましてのう。そして遂に盗んだ人間を見つけて先ほどのダンジョンまで追い詰めたところ、あのボスの罠穴に共に落ちてしまったのですじゃ』

 「あの人が盗んだ証拠はあるの?」

 偶然持っていたのかもとか他の人から盗品と知らずに持っていたとか…。

 『ワシら白蛇族には治癒回復の能力がございましての、もちろん御神体を拝むだけでも治癒の加護が得られますのじゃ』

 治癒力に長けているんだ、カッコいい!

 『かの人間には病を患った息子がいるらしく、それを治したいが為に盗んだと話しておったのですじゃ。じゃが、御神体の効力を得るにはワシらの里の中でなければならぬ掟があり、掟をやぶれば御神体の祟りがくだされ死ぬまで悪夢に悩まされる事になるのですじゃ』

 ウンディーネといい白蛇族の御神体といい呪いやら祟りやら縛りが怖すぎる。

 今俺がこれを持ってても呪われてしまうのだろうか、ちょっと心配だ。

 それにしてもいくら息子が病気で治してあげたいからって、御神体を勝手に盗むのは絶対に許されない行為だよな。

 盗むくらいならそこにお参りに連れて行ってあげればいいのに…。

 起き上がれないほど容体が悪いのかな。

 人にはそれぞれ理由はあるだろうけど、そんな自分勝手は貴族だろうと通らないと俺は思う。

 「まぁでも、こうして偶然だけど御神体も戻ってきたから解決したんじゃない?」

 白大蛇を見ると、御神体が戻って来たものの手放しで喜んでる様には見えない。

 「まだ他に気になる事が?」

 『それなんですが…』

 白大蛇が言うには、病に侵されている息子は大層心優しい青年で白蛇族の事も病に伏せる以前から信仰して寄付なども心を尽くして行っていたらしい。

 その息子がある日吐血した事により、慌てた父である領主が御神体を奪うという事態に陥ってしまったのだという。

 しかもどこで聞いたのか、クマの生き肝を食べれば病が治るなどという妄言を信じてクマを捕まえて邸内のどこかに繋いでいるという。

 「どうしちゃったんだろうね、その領主さん」

 正常な判断が出来てないし、誰も教えてあげれなかったのかな。

 『奥方は息子が幼い頃に亡くなっておるのじゃよ。以前は穏やかな人柄でこの辺の魔物との軋轢も起こさぬよう努めておる領主じゃったが、御神体を盗んでから悪夢に苦しんで今やその面影や心の余裕もなくなっておるのですじゃ』

 そうなんだ…白大蛇も少し同情しているみたいだな。

 根っからの悪人ではないということか。

 『アサヒ様、あちらを』

 翡翠がまた何かに気付いた。

 「あれ?君は…」

 そこにいたのはさっき助けた灰色クマだった。

 灰色クマも憔悴した様子でこちらを伺っていた。

 「もしかして君も…?」

 『力ある貴方様に私の子供を助けていただきたく、お待ちしておりました』

 はっ!まさか…。

 さっき話に出てたクマの生き肝と関係ある感じなのでは?

 「もしかしてさっきの人に攫われたクマって?」

 項垂れる灰色クマはこくりと頷いた。

 『私の子供が攫われたと思われる場所にあの人間の臭いが残っていたので、それを頼りに探していたらこの洞窟に辿り着き、私も穴に囚われてしまったというワケなのです』

 なんつー偶然、いや必然なのか。

 関係者が全員罠にハマり、そこにたまたま俺がボスを倒して助けてしまったと…。

 手助けしてあげたいけど、またあの感じの悪い領主に会うのは気が引けるなぁ。

 「どう思う翡翠?」

 『吾輩と致しましては人間はどうなっても構いませぬが、魔獣であるこの者達には手を貸してやりたく思います』

 まったく正直なヤツ。

 そうだよなぁ…子グマはまだ助かるかもしれないし。

 信心深い息子も助けた方が結局領主にも良いに決まってると…なれば。

 「そうだよね、分かったよ。一緒にその領主の屋敷まで行こう」

 『ありがとうございます!アサヒ殿』

 こうして俺たちは件の領主の屋敷まで行く事になった。

 『アサヒ様、よろしければ吾輩の背にお乗りください』

 「えっ!良いの?」

 『勿論です。その方らも乗るが良い、道案内だけ頼む』

 2匹共驚いていたけれど、恐る恐る翡翠の背中に乗り合わせた。

 少し揺れるけど、けっこう早いスピードでガンガン進んで行く。

 早く走れるブルドーザーみたいだ。

 『まさか黒蜘蛛殿の背に乗せていただけるなんて…』

 『まったくじゃ、黒蜘蛛族の方を従わせていらっしゃる貴方様は一体…』

 別に従わせてるつもりはないんだけど。

 『フッフッフ…その方達、知りたいか?』

 不敵に笑う翡翠。

 『『是非!!』』

 興味津々の2匹。

 まったく…そんなに知りたがることかな。

 翡翠もちょっと楽しんでる気がするし。

 『ならば今少し前に来い』

 2匹が揃って前に寄る。

 『実はアサヒ様は…』

 『フムフム…なっ、なんと』

 『それで吾輩がだな…』

 『まさか、大魔王様の…だなんて』

 内緒話になってる様でなってないから!

 ウンディーネの時と同じじゃん!

 変な肩書き付きになってて微妙に恥ずかしいよ。

 『この先の丘を越えて右が領主の屋敷ですじゃ、翡翠様』

 白大蛇の案内で翡翠バスはあっという間に領主の屋敷に到着した。

 「立派なお屋敷だなぁ」

 さすが領主というだけあり、屋敷は立派な門構えと塀で囲まれている。

 「俺たちは別に悪いことしてる訳じゃないから、普通に正面から訪ねて行こうか」

 門の上に大きな呼び鈴と思われる鈴があるので、とりあえずその鈴をリンリンと鳴らしてみた。

 すると、すぐに門番が走って来た。

 「どなた様でしょうか?」

 門番は俺たちを見て驚いていたけれど、頑張って冷静に取り次ぎをしてくれた。

 「すみません、迷子の子グマがここに居るって聞いたので迎えに来ました…と執事さんに伝えてもらえますか?俺の名前はさっきダンジョンで会ったアサヒと言えば分かると思います」

 多分、領主とは会ってもまともに話せない気がしたので、ちょっとまともそうだった執事に話をした方が良いと俺は判断した。

 しばらくすると、屋敷から執事が出て来るのが見えた。

 しかもその腕には毛布に包まれた子グマを抱えている。

 俺たちに手遅れだったのかと緊張が走る。

 しかし、よく見ると子グマはスヤスヤと気持ち良さそうに眠っている。

 門番が門扉を開けて、執事が出て来る。

 「子グマは無事なんですね」

 「はい、今はおやつを食べた後でお昼寝中でございます」

 執事は俺たちを見て、灰色クマの方へ歩み出る。

 「さぞかし心配された事でしょう。攫うなどして本当に申し訳ございませんでした」

 執事は深々と頭を下げて震える手で灰色クマに子グマを手渡した。

 子グマは寝ぼけ眼で灰色クマに気づいたようだった。

 『あれ?パパだぁ〜お迎えに来てくれたんだね〜』

 と、無邪気に喜んでいた。

 『よくぞ無事で…』

 『始めは怖いおじさんに無理矢理連れて来られたんだけど、ここに着いてからは他のみんなは優しかったよ。さっきも美味しいおやつをもらって食べたんだ〜』

 『そうか、そうだったのだな…』

 灰色クマは安堵した声で呟いた。

 「旦那様が病気のおぼっちゃまの為にクマの生き肝を用意せよと仰ったのですが、そんなむごいことが出来ましょうか⁈しかもクマの生き肝で病が治るなどと聞いた事もございません。仕方なく旦那様には子グマは逃げたとお伝えして匿っておいて、ほとぼりが冷めたら森に返そうと思っていたのです」

 門番もうんうんと頷いている。

 とっても優しい執事さん達で良かった。

 心配した子グマは元気そうだし、あとは領主の息子だな。

 「執事さん、ここの領主様には会えますか?こちらのお二方も巻き込まれて始めは怒っていたけど、今は息子さんを助けてあげたいと思ってくれてるんです」

 執事は驚いた様子で顔をあげた。

 「わ、わたくしどもに制裁を下しにきたのではないのですか?」

 恐々たずねる執事。

 『始めは八つ裂きにしてやろうと思っておったが、これまでのこの一族の善行を思い出してじゃな…』

 『私も子供に危害が及んでいたら領主諸共どうしていたか分からん。だが、この領主の治めるこの領地は戦さがなく魔獣を問答無用で襲って来る事もない平和な所…元に戻るのであれば話を聞いても良いと思ったのだ』

 白大蛇も灰色クマもとても有効的な感じに考えてくれてる。

 「領主様も心配だけど、息子さんの病気が治すのが先決だよね。翡翠の回復魔法で治せるのかな?」

 会いに行く前に確認しておこう。

 『吾輩の回復魔法では病は治せませぬ、病を治すのは治癒魔法なのです』

 「そっか、体力の回復や傷の回復は病気とは別なんだ」

 『傷も命に関わる大怪我は治癒魔法でなければ完治いたしませんのじゃ』

 そういえば白大蛇には治癒力があるって言ってたっけ。

 助けてあげる空気感だし、思い切って白大蛇に聞いてみる。

 「あのさ、俺と翡翠では病気を治す事は出来ないんだけど君が助けてあげれるかな?」

 執事と門番も祈るようにして返事を待っている。

 『ハァ……』

 白大蛇は少し黙っていたけどため息をひとつしてから『分かり申した、ご子息を治せるよう努めますじゃ』と言ってくれた。

 「おぼっちゃまの為にありがとうございます!蛇神様!」

 『致し方あるまい…』

 良かった良かった、ちょっと一安心だな。

 あとは…。

 「その…領主様は今この屋敷に?」

 「あっ、はい…そうなんですが…屋敷に戻られてからすぐにクマを捕まえてくるよう申しつけられましたので、恐ろしくなって旦那様がお部屋に入られてから気付かれぬよう外から鍵をかけております」

 「それは思い切りましたね」

 「最近の旦那様は普通ではありません!目が血走っていて落ち着きもなく…まるで別人のようなのです」

 重病人の息子を心配する余り人格まで?

 そんなに変貌してしまうものなんだろうか?

 「翡翠はどう思う?」

 『もしかすると、何かに取り憑かれているのかもしれませんね』

 「取り憑く?幽霊みたいなヤツ?」

 俺は幽霊とか占いを全く信じてないので、幽霊に取り憑かれて…ってのはイマイチ釈然としない。

 『死んだ者の怨念や成仏しきれなかった魂が死霊やゴーストになりあらゆる場所を彷徨い、時には心に隙が生じた人間に取り憑き人格をも狂わせるのです』

 死霊やゴースト!

 有りなんだ。

 この世界では霊の存在は普通にありなんだ。

 そうか〜幽霊か。

 俺の乏しい知識によると、取り憑かれたらお祓いとか除霊とかすれば治まるんじゃないのかな?

 「教会の神官様とかにお願いしたらなんとかなるんじゃないの?」

 「実は数日前に旦那様を診ていただく為に教会へ行ったのですが、とくにお変わりはなく…」

 ちゃんと怪しいと思ってやる事やってあげてるみたいだ。

 とにかく、ここで話してるだけじゃ埒があかないな。

 直接領主のステータスを見ることにしよう!

 そうすれば原因も解るだろう。

 「よし!こうなったら領主様に会いに行こう!」

 

 まったく…俺はダンジョンへレベルを上げに行っただけだったのに、なんでこうなったんだ?と思いながら執事の案内で領主の部屋へと案内されたのだった。


 

     ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

 読んでいただきありがとうございました


ゆっくりではありますが、更新していきますのでよろしくお願いします


 自分だったらこんな風に異世界を旅したいなぁなど妄想しながら楽しんでいます


 感想やご指摘あればぜひともいただきたいです

 励みになり一層頑張れます


 応援くだされば幸いです


 ではまた次回お会いしましょう


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