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第9話「キャベツへの冒涜を許さない男」

「イヒヒヒヒヒヒヒ!バカめ!」


無数のインビテーションライトが爆発したことにより遊園地の一部分が煙に包まれる。

徐々に煙が上へと上がっていくと、そこにはサタンモードが解除されボロボロの状態で地面に倒れる紅葉の姿があった…。


「モミジさん!!」


ハクイが急いで紅葉のもとへ駆け寄る。ハクイが紅葉の様子を確認すると紅葉は意識がなく、マナを使い切る勢いで治癒魔法をかけ続けないと命が危険な状態だった。ハクイは急いで紅葉に治癒魔法をかけ始める。


「もしかしてインビテーションライトは1つずつしか出せない魔法だと思ったぁ〜?ざぁ〜んねぇ〜ん、全然たくさん同時に出せちゃいマァース!!そしてインビテーションライトの数だけそれを見た人は強い洗脳状態になってしまうのさぁ〜、オマエたちのバカみてぇな戦法じゃ洗脳を解除できないほどにネ!イヒヒヒヒヒヒヒ!ヒァーッハッハッハ!」


黒い丸メガネをかけていて見えていなかったアンコウの黄色の瞳をした目は、誰が見ても恐怖を感じるであろう最高に悪人の目だった。

アンコウが再び黒い丸メガネをかけ直す。

(アンコウのインビテーションライトは配置魔法だ、なのでインビテーションライトをどこに配置、つまり出現させるかを決める視界が重要。1つや2つしかインビテーションライトを出現させなくて良いときは基本相手がインビテーションライトの攻略法をわかっていないときなので、相手の視界にインビテーションライトが入るようにさえ配置すれば配置は別に適当でも大丈夫なためアンコウは視界の悪い黒い丸メガネをかけたままでいる。しかし、大量に出現させるときは相手がインビテーションライトの攻略法を理解しているときだ。その場合インビテーションライトの洗脳効果を無効化できないほどの量のインビテーションライトを『相手の視界に入るように配置』、『爆発がきちんと連鎖するように配置』、『できるだけ多くの爆発が相手に当たるように配置』と配置する上で工夫すべきことがたくさんあり、アンコウは視界の悪い黒い丸メガネを外す。では何故アンコウはそんな視界の悪い黒い丸メガネをインビテーションライトを大量に出現させるとき以外かけているのか?その理由は『ある国にアンコウが訪れたとき、そこで出会った可愛い小さな女の子がくれたものだから』だ。子供が大好きなアンコウはそれがとても嬉しかったらしくその可愛い小さな女の子を拐おうとしたが、女の子が悲鳴をあげ、周りにいたその国の大人たちによってその誘拐は阻止された。しかし、女の子はなんとか無事に逃げたが、その大人たちは全員アンコウのインビテーションライトの餌食となった…。女の子がアンコウに黒い丸メガネをあげたのは『くじで黒い丸メガネを当てたがいらなくて、自分が持っているのももったいなかったから近くにいたメガネが似合いそうな(アンコウ)にあげただけ』だったらしい…。)



ハクイはアンコウのほうを一切見ることなく、ただ必死に自身の今あるマナを使い切る勢いで紅葉に治癒魔法をかけ続ける。

そんな中、体はまだボロボロであるが紅葉は意識を取り戻した。


「うっ…ハクイさんごめん…突き飛ばしちゃって…やらかしちゃったな…」


「モミジさん!無理して喋らないでください、命だけは絶対に…!」


「ハークーイちゃ〜ん、ちょっと退いてねぇ〜」


「キャア!」


「ハクイさん!…」


アンコウが紅葉に治癒魔法をかけているハクイに蹴りを入れ紅葉から退かし、紅葉を踏みつける。


「ウッ!…」


「さっきはよくもボクの手を切り落としてくれたねぇ〜、ほんとにずっと痛くてさぁ…、ねぇ…早く死んでくれよ…イヒヒヒヒヒヒヒ!」


紅葉の瞳に黒い丸メガネの隙間から紅葉を見下ろすアンコウの最高に悪人な目が映る。


―― クソ…、コイツはきっとディープシーの中でも相当野放しにしていてはいけない性格のヤツだ…、絶対…倒さなきゃ… ――


「やめて!!」


ハクイがアンコウに攻撃魔法を放つが、ハクイの放てる攻撃魔法は弱く、アンコウに命中するもアンコウはビクともしない。


「じゃ〜ねぇ〜、イヒヒヒヒヒヒヒ!」


アンコウが紅葉に攻撃魔法でトドメをさそうとしたその瞬間、何者かの声が遊園地内に響き渡った。


「貴様か、カラパティシコ王国の素晴らしく美しきキャベツ畑を遊園地へと変貌させたのは」


「んあぁ〜?」


アンコウが声の聴こえるほうに顔を向けた瞬間、アンコウの顔面に真正面から黄緑色の丸い何かがものすごいスピードで直撃する。


「ンゴォォォオオ!!」


―― え?キャベツ? ――


アンコウはキャベツがものすごいスピードで顔面に当たったことにより吹っ飛び地面に倒れる、黒い丸メガネもその衝撃でどこかへと吹っ飛んだ。


「ダ、ダレだァ!?」


アンコウがすぐに立ち上がり声の聴こえたほうをもう一度見ると、ジェットコースターのレールの1番高さのあるところに誰かが立っていた。


「トウッ!」


レールの1番高さのあるところにいた誰かが3人の前に着地する。その人物は降りてきたことによりアンコウの他にハクイ、そしてボロボロの紅葉がいることに気がついた。


「君たちは昨日の…!、貴様ぁ!キャベツを愛す者達にまで危害を!私の名はキャベツマン!素晴らしく美しきキャベツ畑を遊園地に変貌させ、さらにキャベツを愛す者達にまで危害を加えた貴様のキャベツへの冒涜…絶対に許すわけにはいかない!!」


キャベツマンと名乗る人物は顔全体を囲うキャベツそのものの形と色をしたメタリックな仮面を被っていて、緑色の全身タイツ姿だ。正直とてもダサい。


「いやほんとにダレだよ…」


めちゃくちゃ冷静に困惑するアンコウ。

キャベツマンはすぐさまグーパンをアンコウにぶち込もうとする。しかし、アンコウは相手が自分に攻撃する意識を持ったとみた瞬間もちろんインビテーションライトを1つ自身の真上に出現させた。しかし何故かインビテーションライトの洗脳効果がキャベツマンに効かず、キャベツマンのグーパンがアンコウの顔面にぶち当たった。


「ウゴァァァァアア!!」


またしても吹っ飛び地面に倒れるアンコウ。

でもアンコウはまたしてもすぐ立ち上がる。


「な、なんで!?なんでインビテーションライトが効かないんだオマエェ!?見たよなボクの真上にあった光を!」


「え?どれのことだ?ちょっとこの仮面視界めっちゃ悪くて…」


「ハアァァァア!?仮面の視界の悪さでインビテーションライトの効果を防いだァ!?インビテーションライトの効果ってそんな視界悪いとかで防げるものだったのォ!?てかあれ?視界が悪いといえばボクの大切な丸メガネは?」


アンコウが地面を見渡すと、そこにはバキバキに割れた黒い丸メガネが…。

可愛い小さな女の子に黒い丸メガネをもらったときのシーンがアンコウの頭の中で何度も繰り返し流れる…。


「キ…キサマァァァァァァァァァアアア!!!!」


アンコウは怒りのあまりインビテーションライトの『見た人を無意識に近づかせさせる』というアイデンティティが失われるからと自ら禁じ手にしていた『無数のインビテーションライトで相手を直接全方位から囲ってそこに攻撃魔法を打ち込んで爆発させる(インビテーションライトゲージダイナマイト)』をキャベツマンに使った。


「どぉうだァ!インビテーションライトの洗脳効果が効かないなら直接囲ってしまえばいいだけよォ!イヒヒヒヒヒヒヒ!」


しかし、アンコウの目に爆発の煙の中からだんだんと見えてきたのはクソデカいキャベツ。インビテーションライトゲージダイナマイトにより明らかに爆発をもろにくらったであろうキャベツマンは、自身を大きなキャベツの葉で覆うことにより爆発から身を完全防御していた。クソデカいキャベツが魔法のように消え、中から傷一つ無いキャベツマンが現れる。


「なんじゃそりゃァァァァア!!」


「キャベツありがとう、君の温もりは爆発をも防ぐんだね…」


「まじで何言って…くっ!マズイ!もうマナが…!」


アンコウが体をふらつかせる。

アンコウは紅葉に重症をおわせたときと今のインビテーションライトゲージダイナマイトでインビテーションライトを使いすぎたことによりマナ切れ間近の状態となっていた。

キャベツマンがまたアンコウに攻撃を入れようと接近し始める。アンコウはどうにかしようとキャベツマンと自身の間にレーザートラップかのように残るマナで出せる分のインビテーションライトを出現させたが、キャベツマンはインビテーションライトとインビテーションライトの間をスピードをまったく落とすことなく走り抜けてゆく。


「視界悪いってほんとかよ…グアッ!」


キャベツマンが走ってきた勢いのままアンコウに回し蹴りを入れた。


「地面からはここで生まれてくるはずだったキャベツたちの、空からはここが故郷だったキャベツたちの泣き声が聞こえてくる…こんなことになる前に私が君たちの助けを求める声に気づいていれば…くっ!ほんとに守ることができなくてごめん…コイツを倒すことが私からのせめてもの君たちへの償いだ…、いくぞ!必殺!」


回し蹴りをくらったダメージとマナ切れによる体のふらつきで流石にもう動ける様子でないアンコウの周りに突然大きなキャベツの葉が1枚現れアンコウの体に巻きつき、さらにキャベツマンが遠くから先を持ったまま放ったロープがキャベツの葉に巻かれたアンコウに巻き付く。


「ロールキャベツ!!」


キャベツマンはロープを背負い投げのように引っ張り、キャベツの葉に巻かれたアンコウは空中を経由して反対側の地面へとおもいきり叩きつけられた(必殺ロールキャベツ)。


「ンガッ!!」


叩きつけられた衝撃でアンコウの全身の骨がボロボロに砕ける。

キャベツマンがトドメの一撃を入れようとアンコウに近づいてゆく。

アンコウは心の中で思った、『やられる…このボクがこんなキャベツの仮面を被った意味のわからないやつに?…嫌だ…絶対に嫌だァ!左手なんとか動いてくれェェエエ!!』と。


キャベツマンがトドメの一撃をアンコウに入れようとした瞬間、アンコウに巻かれたキャベツから先端がまるでワニの口のような形をしたドス黒い色の細長い風船のようなものがキャベツを突き破って出現した。


「なんだ!?」


その風船のようなものは先端のワニの口のような形の部分でアンコウを掴み空へと急上昇していく。アンコウはなんとか力を振り絞り、ほぼ身動きが取れない状況のなかで骨が砕けてるはずの左手を動かすド根性をみせ、ポケットに入れていた脱出魔法搭載兵器フウセンウナギを起動させたのだ。


「トドメをさし損ねたなクソキャベツ頭ァ!いつか絶対殺してやらァ!イヒヒヒヒヒヒヒ!ってあれ?」


フウセンウナギにより空へ上昇したアンコウが地上を見ると、キャベツマンの横にサタンモードになり見ただけでわかるとんでもない量の魔力を鎌に溜め込んだ紅葉の姿があった。紅葉はキャベツマンとアンコウの戦いが行われている間にハクイに治癒魔法をかけ続けてもらったことにより、完全回復ではまったくないが動けるまでには回復していたのだ。

アンコウは心の中で思った、『え?アイツ遠距離魔法使えなさそうだったよな?もしあんな魔力こもった遠距離魔法放たれたとしたらヤバくない?…え、使えないよね?使えないで…お願いィィィィィイイ!』と。

アンコウの願いは届くことなく、紅葉は鎌に溜め込んだ魔力を斬撃としてアンコウに向かって飛ばした。


「ク…クソガァァァァァアアア!!!!」


紅葉が飛ばした斬撃は空中へ上昇したアンコウにぶち当たり、その瞬間黒紫色の大爆発を起こした(デーモンストライクインパクト)。アンコウは完全気絶した。


「ふぅ…」


紅葉はホッと一息つく。


「君凄い魔法じゃないか!ハハハ!」


―― この人絶対… ――


「あのー…コウジさんですよね?」


「…」


「…」


「キャベツマンだ!」


「いやコウジ…」


「キャベツマンだ!」


「…」


「キャベツマンだ!!」


「わかりましたわかりました…」


―― 隠す意味あるのか? ――


「コウ…キャベツマンも凄い魔法をお持ちで…」


―― 凄いキャベツ愛デケェ人だと思ってたらまさか使う魔法までキャベツとは… ――


「あぁ、私も自分がこの魔法を使えることに気づいたときはとても驚いたよ。実は僕…私はこの国とは景色も、暮らしの風景も、存在する物もまったく違う遥か遠い国からこの国にやってきてね、最初この国にやってきたときは前に暮らしていた国と違いがありすぎてずっと困惑の日々だったよ、そんな中ある日ここにあったキャベツ畑を見つけたんだ、前の国にもキャベツはあって、前の国にいたときからキャベツが大好きで愛していて、そのキャベツだけはそのままの姿と味でこの国でもそばに居てくれたことがとても嬉しくて、しかも自らを守る魔法としてもキャベツはそばに居てくれて、私はキャベツが本当に大好きで愛してると心の底から思ったよ。でも…」


キャベツマンが遊園地を見回す。

仮面で表情は見えないが、きっと哀しげだ。


―― 何言ってるかあんまよくわかんなかったけど、とにかくコウジさんはここにあったキャベツ畑が理不尽で無くなったことが悲しくて許せないのだろう ――


「モミジさん!シュウジャくん無事見つかりました!」


紅葉とキャベツマンが会話をしていると、地下からシュウジャを見つけ出したハクイがシュウジャと2人がいるほうへと向かってきた。


「良かった…」


紅葉はまたもホッと一息つく。


「なるほど、君たちは彼を助けるためにアイツと戦っていたんだね」


「はい、シュウジャくんを助けられたのは完全にコウ…キャベツマンのおかげです、ありがとうございます」


紅葉はキャベツマンに深々と頭を下げた。


「いやいやそんな、最後にアイツを仕留めたのは君だしさ、でも助けられて本当に良かったよ。では私はそろそろ行くよ、これから色々調べたいことがあるのでね…、ではさらば!また会おう!トウッ!」


「え!ちょっと!」


紅葉が待ったをかけようとしたがキャベツマンは大ジャンプをしてどこかへと行ってしまった。


―― 唐突にどっか行っちゃったな…、もしかしたらディープシーに立ち向かうための仲間になってくれるかもと思ったんだけど…。まぁ、また会えるよね ――


紅葉とハクイはシュウジャの無事をみんなに伝え、シュウジャを無事家に送り、城へと帰った。



〜第9話「キャベツへの冒涜を許さない男」[完]〜


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