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第5話「愛しき人」

紅葉は『カラパティシコ王国にはどんなものがあるのだろう』とカラパティシコ王国の中を適当に散歩していた、のだが…


「この建物おっしゃれー!」


「…」


「わぁ犬さんだ!カッワイイー!」


「…」


「えぇ何このお花!?初めて見たスッテキー!」


―― おいコイツ誰だ ――


なんの生物だかわからない顔の描かれたフードの付いたパーカーのような赤色の服を着ていて、赤よりのピンク色のロング髪で、裾にとても短い触手のようなヒラヒラが付いた長スカートを履いた都会JKのような女性が何故か紅葉の腕をまるで彼女かのように両手で掴みながら紅葉の散歩に着いて来ていた。


「え…あの誰ですか?」


「わー!何あの食べ物めっちゃ美味しそー!」


「話聞いてる!?」


女性は紅葉の腕を掴んだまま見つけた食べ物屋に近づいてゆく。


「すみませーんこのゴーナツ?ってやつください!」


―― おいなんだこのゴツい見た目のキモドーナツ ――


「はいじゃあ500ゲロね」


「高すぎるだろおぉぉおお!!!!」


「オアァァア!!」


女性が食べ物屋の店員の顔面をおもいきり殴り飛ばした。


「いやいきなり何してんのぉぉぉおお!?店員さん大丈夫!?」


「だって高いんだもーん」


「いや全然定価ぽい値段だったけど」


「ところでダーリン聞きたいんだけどさぁ…」


―― 誰がダーリンだよ ――


「…アカグツとデメニギス、今どこにいるか知ってる?」


「なっ!」


女性の目つきが一瞬にして鋭くなり、女性は紅葉の左腕を右手で掴んだまま左手で紅葉の顔面にグーパンを入れようとした。しかし紅葉は顔を体ごと逸らしそのグーパンをギリギリで回避し、左腕から女性の右手を振り払い女性から少し距離をとった。

女性の服装をよく見ると、パーカーの下にディープシーメンバー特有の黒スーツを着ている。


「オマエもディープシーのメンバーかよ」


「『オマエも』って言うってわけは知ってそうね」


「あ、やべ」


紅葉は思わず口を手で抑える。


「焦っちゃってカッワイイー、でもいいのよ別に、昨日のデメニギスとの戦い私見てたから」


「昨日の時点でいたのかよ」


「デメニギス1人で勝てると思って外で待ってたら私いつの間にか寝ちゃってて…、朝起きて様子を見に行ったらデメニギスが倒れててびっくりしたわ」


「寝落ちしてんじゃねぇか!」


「1対1でデメニギスに勝つなんてあんたそうとう強いようね、だから私の魔法で私の下僕にしてあげるわ。私の名前はメンダコ、そして私の魔法はラブインジェクション、私のグーパン(ラブインジェクション)を顔面にくらったものは全員私にメロメロになってなんでも私の言うことを聞くようになってしまうの。ほら!」


「メロメロォオゥ!」


さっきメンダコに殴られた店員は完全にメンダコの虜状態になってしまっている。


―― すげぇありがちな能力持つ魔法使うヤツ来たな、でもグーパンを顔面にくらわないように気をつければいいだけなら簡単に勝てそうだ ――


紅葉はサタンモードになり、速攻で正面からメンダコに鎌での攻撃を仕掛けるが、メンダコにまるでバレリーナかのような上体逸らしで余裕で避けられてしまう。


―― チッ、コイツも動きが速ぇ ――


メンダコが上体を起こす勢いでそのまま紅葉の顔面にグーパンを入れようとしてきたので、紅葉はそのグーパンを避けようとしたが、なんとメンダコは紅葉がグーパンを避ける方向を完全に読み切りグーパンを紅葉が避ける方向に振っていた。その結果紅葉はメンダコのラブインジェクションをくらってしまった。


「グアッ!」


「ハハハハハ!あまいわ、私が今まで何人の顔面にグーパンを入れてきたと思っているの!確かに顔面にグーパンをくらわせないと能力が発動できない魔法は弱いと思われるだろし、実際弱いと思うわ。しかしその弱点を補おうと努力を重ねてきたこの私!何人もの顔面にグーパンを入れようと努力してきた結果、いつの間にか相手の動きをほんの少し観察するだけで相手のグーパンの避け方を完全に読み切れるようになっていたわ、流石私!」


「くっ、このグーパンの当て感は完全に自身の技量のものってことか、すげぇな」


「でしょーでしょー!…ってあれ?」


メンダコは紅葉の違和感に気づく。


「あんたなんで普通に喋ってるの?なんで『メロメロォオゥ!』って言わないの?」


「…確かに、というか全然精神に違和感感じないのだが」


メンダコはすぐさまもう一度紅葉にグーパンを仕掛け、またも紅葉の避け方向を読み切りラブインジェクションをくらわせるも紅葉は平然としている。その後もメンダコは紅葉に百発百中でラブインジェクションを当て続け、なんなら紅葉が平然としているかどうかを確認する前にラブインジェクションを連続でぶち込んだりもしたが紅葉は平然とし続けている。ただ紅葉の顔がグーパンで腫れ上がっていくだけだった。


「メンダコさん…、なんか全然メロメロなんないからそろそろ殴るのやめて…、グーパン普通に痛いから…めちゃ痛いから…」


「なんで!?」


ラブインジェクションは何故か紅葉には効かなかった。


「なんでよ!どうして!私に魅力を感じないっていうの!?」


「いやめちゃ可愛いと思いますめっちゃ!てか魔法なんだから魅力感じるとかの問題じゃないでしょ!なんで俺圧かけられてんの今!」


「じゃあなんで…どうして…」


「フッ…、それはきっと、俺には強く愛し続ける人がいるからじゃないかな」


紅葉が立ち上がり何故か急にカッコつけ始める。

顔面がグーパンくらいまくったせいで腫れまくっていて全然カッコついてないが…。


「ハァ!?あんたのその人への愛の強さが私のラブインジェクションの効果を無効化したっていうの!?」


「俺の愛する人はこの世界にはいなくてさ…、まぁこの世界にいないのは当たり前なんだけど、とくにかくいなくてさ…」


「ま、まさかその人死んじゃったの?…」


「いやそうではなくて、実際に会うことができなくて…」


「まさか宇宙人にさらわれて…」


「話がありえない方向に行きすぎだろ発想力豊かだな!とにかく実際に会うことはできない人なんだ絶対に、もちろん実際に喋ったこともない、でもその人を見ているだけでどんなにそのとき気持ちが落ち込んでいても心が癒されて自然と笑顔になれるんだ。俺の心を何度も救ってくれた恩人、その人のことを俺は本当に強く愛してる、ずっとずっと。」


「うっ、うっ…」


何故か紅葉を話を聞いて涙ぐみ始めるメンダコ。

なんで『何故か』って言うかというと、第三者たちは紅葉が愛する人がどうゆう存在の人なのか薄々気づき始めているからです。


「なんでその人に会えないのか私にはわかんないけどさ、あんたは本当にその人のことを強く愛しているだね…、その気持ちはめちゃくちゃに伝わってきたよ」


「うん!さっき宇宙人にさらわれるとかありえないだろと思ったけどさ、でも俺は今ありえない状況を体験してるわけで、だから俺は実際にその人に会うことができる日がいつか来るってこれから信じて生きていこうと思うよ、それで会えたらきちんと愛を伝えるんだ!」


何故かめちゃくちゃ拍手した後紅葉の手を握るメンダコ。


「その恋応援してるよ!ありえないなんてありえない!!」


メンダコの手を握り返す紅葉。


「ありがとうメンダコさん、…でもメンダコさんのこといつか倒さなきゃだから今倒すね」


「へ?ウワワワワワワ!!」


紅葉は握った手からメンダコの体にまるで電流かのように攻撃魔法を流し込む(デーモンプラズマジック)。メンダコは静かに倒れ完全気絶した。


―― いつか会えるのかな…、魔女っ子チホコちゃん ――



~第5話「愛しき人」[完]~


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