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第2話「覚悟を決めろ」

「あのー、すみません…あのー…大丈夫ですか?」


誰かの呼びかけが聞こえたと共に紅葉は意識を取り戻した、視界のぼやけがゆっくりと解けてゆく、周りを見渡すとお花だらけ…


―― あー、俺死んだんだな…、死因1mものさして… ――


紅葉が目の前を見るとメイドのような服装をした茶髪でボブヘアの紅葉と同じ歳ぐらいの女性が顔を覗き込んでいた。


―― あの世って天使がいるものだと勝手に思ってたけどメイドさんがいるのか、個人的には良きですな ――


紅葉は死因が意味不明だったあまりに逆に素直に現実を受け入れ、ゆっくりと上体を起こした。


「さぁメイドさん、俺を三途の川へ案内してください」


「いやここあの世じゃなくてうちのお城の花壇なんですけど」


「…え?」


紅葉が改めて周りを見渡すとそこは確かに中くらいのお城の庭にある花壇だった。


10秒ほど紅葉と女性の間に変な空気が流れる。


「…すいません、一旦花壇から出ますね」


「はい、早く出てくれると助かります」


立ち上がり一旦花壇から出る紅葉。


「…え、ここどこ?」


「もしかして記憶喪失ですか?私としてはあなたが何故花壇に倒れていたのか知りたかったんですけど…。良いですか、ここはカラパティシコ王国の王、カラパティシコ王がお住いになられるカラパティシコ城です。」


お城の外には洋風な街並みが広がっている。


―― あー、なるほど、これ多分俺…転生したな ――


「どうです?国の名前を聞いて何か思い出しました?」


「いや、全然」


「マジですか…」


――「なんか転生してきちゃいましたw」って言っても信じないだろうし、まぁ一旦記憶喪失ってことにしとくか ――


「んー、濃すぎる黒髪に赤い目、ちょっと見た目が悪い人ぽそうすぎるので結構警戒していたのですが…、何もする気ないならとっととそこの門から外に出て行ってください」


「え?記憶喪失の人を見捨てるの?…」


「関係ないです」


女性が紅葉を城の外に出そうと紅葉を門のほうに強制連行しようとしていると、城の門から黒スーツ姿で体型は太り気味、円盤型の赤い髪型で頭にグラサンをかけた30代前半ぐらいの男が入ってきた。


「やぁやぁハクイさん、そろそろこのお城の建築費全額払ってもらわなきゃ困りますのよ、今日こそは払ってもらえますよねぇ?」


「げっ!アカグツさん…、もちろん全額用意しましたよ」


―― この人名前ハクイさんていうんだ、てかなんだなんだ?国の王の城の建築費をまさかの分割払いしてんのか? ――


「どうぞ、これで残った建築費30000000ゲロきちんと払いましたよ、建築費全額払ったんですから、もうこの国に入り浸るのはやめてください」


―― 金の単位キモすぎやろ ――


「んー?おやおやぁ?あと10000000ゲロ足りないみたいですがぁ?」


「…!!そんなはずないです!きちんと数えてください!」


「うるせぇ!足りねぇっつったら足りねぇえんだよ!オラァ!」


「キャア!」


ハクイはアカグツと呼ばれる男に頬をおもいきり殴られ地面に倒れた。


―― えぇ…、女性を容赦なく殴るとかコイツまじか…、コイツは多分この世界のヤクザだ ――


「ん?おめぇ初めて見る顔だな?新しい使用人か?」


―― うわ絡んできた、目合わせないようにしよ… ――


「…」


「目逸らして俺のこと怖がってんのか?あ?ハハハ!まぁいいや、おめぇもこいつみたいな思いにあいたくなかったら俺らに変な態度とらねぇようにな!」


アカグツと呼ばれる男はポケットに手を入れ大声で笑いながら城の外へと帰って行った。


「はぁ…」


ハクイは殴られ腫れ上がった頬を自身の治癒魔法のようなもので直したが、座り込んだままずっと地面を見つめている。


―― まさか国の王がヤクザと関係を持っているとは、凄い設定の異世界に来てしまったな… ――


「今『国の王がディープシーと関係持ってるとかヤバ』って思いましたか?違うんです!これには事情があるんです!」


―― 心読まれとる ――


「いや思ってない思ってない、てかディープシーて何?」


「ディープシーも知らないんですか!ほんとに記憶喪失なんですね…、ディープシーは簡単にいうと裏社会の頂点にいる集団です、この国、この国以外の人たちもみんな知ってると思います。それぐらい絶対に関わってはいけない集団なんです」


―― やっぱりこの世界のヤクザみたいなもんてことだよなー、異世界にも裏社会ってあるんだ ――


「何故そんな絶対に関わってはいけない集団と関係を?」


「あなたがどこまで記憶喪失なのかわからないのでもうあなたは何も知らない前提で話しますが、カラパティシコ王国は他の国に比べてとても歴史の浅い国なんです、まだ国ができてから3年しか経っていません」


「3年!?え!3年でこの広い街を作ったの!?」


「はい!カラパティシコ王国ができる前はここ全体完全なる荒地でしたからね、元々民家などがあったわけではなく、全て1から作られました」


「流石にそれは凄すぎる…」


「カラパティシコ王は自身の住むお城より街を作ることを優先しました、『国民の暮らしを優先に』と。なのでこの国で最後に作られた建物はこのお城です。」


「国民思いの王様なんすね」


「お城は国の象徴となるものなので、王はお城をどのような作りにするのかとても難儀されました、そこで王は親友であった隣の国のガンギマリ王国の王、ガンギマリ王に城の作りについて相談することにしたんです。」


「おい名前どうした!?多分その王に相談したことが原因なんだな!絶対関わっちゃいけない名前してるもん!」


「はいそうなんです…、ガンギマリ王に相談をした結果、ある建築集団を紹介されたんです、『ここに任せれば良いお城を作ってくれるよ』と。王は親友だと思っていたガンギマリ王からの紹介だったためそれを素直に受け止め、その建築集団に城の建築をお願いしました。しかし、その建築集団はディープシーの支配下にある集団だったんです…」


「なるほどねぇ、それでディープシーが城の建築費を最初に伝えられていたものより大幅に高額に、分割でないと払えないほどの額を請求してきて、それが払えていないことを理由に国でめちゃくちゃをしていると」


「そんな感じです…、国民からディープシーの被害にあったという情報が城に毎日のように入ってきます…、そのため王は自分が国民を脅かしてしまったと完全に病んでしまい、今は自身の部屋で寝たきりの状態です、王は騙されただけなのに…。でもそれも今日で建築費を払い終わって終わるはずでした!そう思っていました、なのに…、残りの全額きちんと用意してあったはずなのに…」


「いやきちんと全額あったと思うよ、まぁハクイさんも気づいてると思うけど…。きっとディープシーはこれからもずっとこの国でめちゃくちゃをするつもりだよ」


―― まだ3年でこの完成度のカラパティシコ王国、そんなカラパティシコ王国にいつか自身の国を飲まれてしまうんじゃないかとガンギマリ王は勝手に脅威を感じてそんなことをしたのか、それともただの嫌がらせか…、まぁ半分半分だろうな、なんなら後者よりかも、悪意は絶対ある。ガンギマリ王が裏社会と繋がりを持つ悪野郎なのは確実だろうし、そんなやつはカラパティシコ王のことを元々親友なんて思ってなかっただろうからな ――


「一体絶対これからどうしていけば…」


ハクイの目からは涙が溢れだしそうになっていた。


―― 単純にちょっと可哀想だな…。んー…、まぁせっかくの異世界生活、自分らしくないことしてみるのもありかな… ――


「あのー、ディープシーやつけるんで城に泊めてもろても良ろし?」


ハクイの動きが数秒固まる。


「は!?何言ってるんですか!」


「だってこれもうディープシーやつけるしか今の状況打開する方法なくない?」


「そうですけど…、ディープシーは戦いの実力も全員折り紙付き、だからこそ裏社会の頂点にいる。そんな人たちを相手にあなたは戦える実力があるんですか!」


「…あ、魔法ってどうやって使うの?」


「ふざけてるんですか!!魔法の使い方も喪失した状態でよくディープシーをやつけるなんて言えましたね!」


「なぁなぁさっきから話きいてりゃあ俺らに刃向かおうとしてんのか、あぁ?」


声の聞こえた城の門のほうに紅葉とハクイは目を向ける。

するとそこには帰ったはずのアカグツの姿があった。


カラパティシコ王国の運命は、たまたま城の花壇に転生してきた自身がどんな魔法を使えるか、能力があるかを1ミリも理解してない野郎の手に託されようとしてしまっている。


カラパティシコ王国、覚悟を決めろ



〜第2話「覚悟を決めろ」[完]〜

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