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クジラに見える。だが鳥のようでもあり、もしかしたら龍かもしれない。

 眷属の群れと野鳥を従えた巨大な姿のシーホフと呼ばれる「それ」が空を悠然と飛んでいる。

 地上の各地から単座機スフィアに乗った狩人たちのが、一斉に空に向かい、山のような群れを形作った。

 スフィアのほとんどが、シーホフに近づく前に、小さな眷属であるジュモに撃墜されて行く。

 その光景は遠くの地上から眺めると噴火した火山のようにも見えた。

 今日もまた、大量の死者が出る。

 地上の人々は、墜落してくる狩人たちを逆に狩り身体の一片をも奪ってゆく。 

「おーおー。一年ぶりか。なかなか壮観じゃねぇかよ」

 薬物のカクテルを入れた電子タバコを咥えて、砂漠の上に四輪を走らせるイブネフは楽し気だった。

 隣に座る少年のビージーは小さな飴を舐めながら、嗤った。

「あのスフィア、全部死者になるんだぜ? 良く面白そうに観てられるな」

「見たくなくとも、視界に入ってくるだろうが。ならせいぜい楽しむのが粋ってもんだ」

「趣味が悪いねぇ。あんたの場合、今更だけども」

 いかにもやる気がなく、だらりと全身から力を抜き、死んだような目をした少年だ。

 ビージーはもう興味ないとばかりに、シートの上に身体丸めた。

「今夜は冷えるが温まるには不便しないだろうな」

 少年の二倍は歳を取っているイブネフは、呑気そうに煙を吐いた。

「臭いのは嫌だなぁ」

「嘘言うな。飴のせいで匂いもわからんだろう、おまえ?」

 思わず、ビージーは鼻を鳴らす。

「わかんないじゃなくて、マシに変えてるんだよ。あんたの電子タバコの煙もな」

「あー、ダメだな、こいつ」

 イブネフは苦笑いした。

 電子タバコの煙自体は、フィルターのおかげで無臭である。

 一方の飴は感覚を過敏にしつつも、意識にはダウナーになる成分が含まれている。幻覚作用もたまにあるのだ。

「なーにがダメだよ。俺はあんたの口の中のことを言ってんだよ?」

 ケラケラと小柄で細身の少年は小さく嗤う。

「うっせぇガキだ」

 三十四歳のイブネフは、十七歳の少年を相手にぶん殴りたい衝動に駆られる。

 この時は電子タバコが自制させたが、二人の取っ組み合いの喧嘩は日常茶飯事だった。

 これで、二年も付かず離れずで仕事をしている。

 今回は、ヒュロンという街が目的地だった。

 依頼された仕事は、街の名士の暗殺である。




 砂漠から城塞といって良い外観をしたヒュロンに入ってしばらくすると雰囲気は一変した。

 石畳とレンガの合間には、水路が縦横に走っている。

 樹木や草花も植えられて、渓流の森林に建物が所狭しと建てられたといった雰囲気だ。

 人々の往来も多い。

 中央部に限ってだが。

 ここまで来る周辺は、雑多なガラクタがひしめき合う貧民街だった。

 観光めぐりよろしく、四輪を街中の隅々まで走らせたのだ。

 イブネフの四輪は主に中流層が乗っているもので、汚れもそこそこ取ってあるため、特別に目立つということもなかった。

 はずである。

 貧民街に戻り四輪を売ると、二人はわかれ、イブネフは同じ地区にある予定の場所に向かった。

 水路を見渡せる公園のベンチで、河原にあり、背後には植林されてあって道からは覗けない。

 先にこれと言って特徴のない背の低い老人が、座っていた。

 白髪は豊かで、両手を杖のうえに起き、猫背で水路の流れを眺めている。

 街にはいってから、煙の出ない電子タバコに変えたイブネフは、自然にベンチの端に無言で座る。

「……バレたよ。ウチの組織は今、一斉検挙されている」

 老人は静かに淡々としていた。

「ほう。なかなか相手も鋭いな」

「焼けたスフィアの匂いがプンプンしてたからな」

「一晩、暖を取らせてもらったもんでね」

「そうかい」

 老人の返事が終わると同時に、イブネフはジャケットの裏からナイフを抜いた。

 この男は暴力性が強いくせに、恰好は清潔感のある青年といった感じで、スーツ姿にネクタイをして、髪は後ろになでつけている。

 老人は彼の動きに顔をやろうとしたところを、首に深々とナイフを差された。

 身体中に黄色と青い小さな発火がした。

 ナイフを抜き、老人がベンチにもたれると、イブネフはその場から立ち去っていた。

 



 ヒュロンの名士ヴィーケの邸宅の一室で、一人ビージーは待たされていた。

 飴が良い具合に意識をとろけさけている。

 しばらく経つと、呼ばれてホールに案内された。

 そこには、オートクチュールの上品で様々な姿をした男女が十数名、立って談笑をしていた。

 ビージーはまったくその場にふさわしくない、だぼだぼのパーカーにカーゴハーフパンツと二つのヒップバックという姿である。

「よぉ。今来たところだ。良い酒出してくれるぜ、ここの奴は」

 近づいてきたのは、カクテルグラスを持った、イブネフだった。

 電子タバコは咥えていないのが、軽くビージーの癪にさわった。

 なにしろ、イブネフは没落したが名士だったこともある男なのだ。

「ふーん。へんな酔い方して、舌がおかしくなったんじゃねぇの?」

 イブネフはクックッと嗤った。

「腐るなよ。今回のは楽だったろう?」

「こういう場が一番疲れる」

「そうかい。じゃあ庭でボール遊びでもして来いよ」

「こんばんは、イブネフ様にビージー様」

 四十代。半端に長い灰色の髪をポニーテールにした長身の男が、二人に話かけてきた。

 この邸宅の主で街の名士であるヴィーケだ。

 名士というのは、民衆の支持を受けた名望のある人物の呼び名だった。

 支持のされ方にも色々あるが、ヴィーケの場合は裕福層の安全を守ることによって確立されていた。

「さすがですね。リターの始末はお疲れさまでした。リター解放戦線の連中はもう、ほとんど処理したところですよ」

 にこやかだが、どこか含みのある様子だった。

「……どうかしたのですか?」

「ふむ。ウチにメイドが一人いるのですが、紹介しましょう」

 ヴィーケは振り返り、軽く手を挙げた。

 人々が談笑しているなか、メイド姿の小さな少女がゆっくりと近づいてくる。

 セミロングの髪をサイドポニーテールにした、一見十代前半に見える娘だった。

 一礼してヴィーケの横に静かに立つ。

「この子はリズィユという十七歳の子なのですが本名はわかりません。最近雇ったメイドです。丁度、リター解放戦線が私を標的に計画を立てだした時に雇った子です」

 リズィユは顔色一つ変えずに黙っている。

 ただ、ビージーにはその瞳の奥にある憂いを鋭く見て取っていた。

「で、どうかしたのですか?」

 イブネフは先を促す。

「この子には定期的に休みを与えているのですが、家にこもりっきりで外に出ないのですよ」

「ほう」

「そこで、彼女が仕事中の間、食客をしている先生の一人に家を調べてもらったのです。すると、どこかと連絡を取り合っている跡がありまして」

「内容は?」

「そこまではわからなかったそうです」

 ヴィーケは皮肉な笑みを浮かべて、少女に横目をやった。

 それでも、リズィユの様子は変わらない。 やや困ったように少しだけ眉を下げていたが、いたって特別な感情めいたものは表に出していなかった。

「ただ、考えるにリター解放戦線と関係があるかと思うのです。そこで、お二人にこの子を始末してもらいたい」

 ヴィーケはいたって口調も変えなかった。

 一瞬の間が四人を包んだ。

「……困りますねぇ、ヴィーケ閣下。その子は、我々の仲間です。失礼と思いましたが、先に潜入させて、リターの連中の情報を集めさせていたのですよ」

 ビージーはしれっと言葉を並べた。

 これには、ヴィーケも軽く驚いて見せる。

「ほう。そうだったのですか……」

 彼がリターの暗殺を依頼をしたのは一か月前だった。

 漏れ無いように。また漏れても時間が相手に疑念や油断を起こさせるように、期間を儲けていたのだ。

 ヴィーケはあくまで陽気だが、どこか釈然としないようである。

「閣下にも内密にしていて申し訳ありません。事が事だけに、情報をふせさせていただきました」

 続けるビージーは、少女に笑顔を向ける。 リズィユと名乗っている彼女も、微笑みを返した。

「なるほど……そういうことでしたら、失礼しました。危うく、あなた方の仲間を処刑するところだった。どうか、お許しください」

「いえ、それも覚悟の上の仕事ですから。こちらこそ失礼しました」

 ワイングラスに口をつけたところで、イブネフは派手な咳をして前かがみになった。

 数名いたヴィーケの使用人が駆けつけようとするのを、手で制す。

「……いや、鼻に入っただけです。どうも、このような美味しいワインはのみなれてないもので」      

「大丈夫ですか?」

「ええ、もう問題ありません」

「では、この子はお引き取り願って、お待ちになられていた部屋へ。部下をやらせますので」

 ヴィーケは愛想よく素っ気ない内容を伝えると、これもあっさりと彼らから離れて行った。

「これだからな……」

 誰にともいわず、イブネフはつぶやいていた。




 報酬として与えられた額を受け取ると、二人はヒュロンの貧民窟に向かった。

 リズィユはしばらくヴィーケのところで改めて雇ってもらった。

 彼はやや不思議な様子だったが、報酬はイブネフの総取り制になっていると説明すると、納得した。

 この都市に住むメルヒという人物の名義で一か月前に借りられていたのは、貧民窟一か所と中流層の居住区に二か所だった。

 イブネフは貧民窟の方をメインにするつもりだ。

 ヴィジョンと呼ばれる空中に枠を設けて広がるディスプレイで、通信を開く。

 後ろでは、買ったばかりのソファにビージーが偉そうにふんぞり返っていた。

『やぁ、ヴィーケ。顔が見れて嬉しいよ』

 短い挨拶はわざとだろう。

 アシンメトリーの髪は、額を半分出して片目を髪に隠していた。

 二十歳の細い女性だ。

『うまく行ったぜ、カディ。潜入したところだ』

 イブネフの報告も簡潔だ。

 カディはうなづいた。

 彼女はDLОという福祉団体を表にした組織の裏の実力行使部隊DОLの指導者だった。

 DLОは借地であるこの国の各地都市に支部を持つ団体だ。

 一方のDОLは細胞単位で動く。

 東部地区の本拠は隣の都市であるフギアにあった。

『では、依頼通りに』

「わかったぜー」

 それだけで通信は終わりだった。

 リディの顔を拝めたのは、イブネフが依頼を受けた時の条件の一つであったからだ。

 イブネフは、買って来たカップラーメンを取り出して、水を沸かしはじめた。そのあいっだに、ベーコンの塊を丸かじりする。

「ビージー、腹減ったか?」

「……飴があるよ」

 イブネフは皮肉な笑みで短く嗤った。

「最近のは飴飴と、そればっかりだ」

「栄養も満点だしねぇ。ああ、イブネフは古いタイプだから食えないか」

 可哀そうにという顔をする。

「うるせーな。そんなちゃちなもん必要ないんだよ、俺は」

「うわ、健康体だ。テロリストの隅にも置けないなぁ」

「何とでも言えよ」 




 借地は本来イザブ民主主義共和国があった土地の半分にあった。

 イザブが帝国を名乗り、周辺国に侵攻を始めた世界大戦は二十年続き、諸都市を疲弊させた。

 負けたイザブの国土は六か国が永年借地として取り上げ、あらゆる人種の坩堝となって四年が経つ。

 イザブ借地に移住した人々同士にと元イザブ人も加わった憎悪の争いは絶えず、各地に解放組織が立ち上がった。

 戦争はまだ終わってはいなかったのだ。




 控えめに、ドアをノックされた。

 一気にイブネフは警戒する。

 この時間にこの部屋に来る予定の人物はいないのだ。

 彼はわざと返事をしなかった。

 ナイフはすでに抜いている。

「どちらさーん?」

 その横を全て壊すかのように猫背でのっそりとドア口にビージーは向かった。

 イブネフは少年の背に小さくため息をつく。

 板を重ねた割に分厚いドアを無造作にあっけると、少女が一人立っていた。

 腰まで入ったスリットのワンピースに黒い革のショートパンツ。腰に太い帯を巻き、後ろで大きく結んでいる。

 リズィユと呼ばれていたビーボール邸のメイドだ。

「ちょっと話があるんだけど?」

 か細い声だが、芯の強いはっきりとした口調だった。

 ビージーが迷いなく、彼女を中に招き入れたので、イブネフは平静を装いながら内心驚いていた。

 藤の椅子に座ってテーブルに面していたイブネフは彼女を目で追って、ビージーはそのままソファに戻った。

 当然のように、リズィユの場所はない。

 彼女はテーブルのそばに立って辺りを見渡す。

「……それにしても、余計なことしてくれたね」

 ためらわずに床にちょこんと胡坐をかいた少女は、頬杖をついて二人を挑発的に睨んだ。

「まったく、ホント困ったわ。どうしてくれる?」

 後の帯を結んだ所ろから、一本の疑似ビール缶を取り出して床に置き、片手でそのままプルをあけた。         

「何が困っただよ。怪しがられてたから、フォローしたんじゃねぇかよ」

 心外も良いところだと、イブネフは顔だけやった。    

「クビにさせたじゃねぇか! せっかく潜入できたってのに!」

「同業社さんかぁ。ヴィーケ相手になにしてたの?」

 多少、呂律が怪しいビージーが興味をもった。

「生活状況の調査だよ」

「なんだそれ、おまえ探偵か公安か?」

「うっせ! れっきとしたRRKってところのメンバーだよ! それに最終目的は違うから」

 その時、リズィユの携帯端末が鳴った。

 うっさいな、と舌打ちして通話通知を切った。

「RRKだと?」

 暗殺組織として有名な党だ。

 今年に入り、RRKはすでに借地の地方官の重要人物や政党の指導者を十二人も殺害している。

 正直やりすぎなのだが、背後にはティスタ共和国の情報機関が関わっているため、ほかの党が手を出せないでいた。

 ごたごたはティスタ国に対して当てられ、RRKはあらゆる地に党員を隠して潜み、未だに活動を行っていた。

 今度は文面が送られてきたので、面倒くさげに、リズィユは携帯端末を手にして覗いた。

 しばらく黙って、何度もよく返す。

「ざけるな!」

 携帯を壁に投げつけ、疑似ビールを一気に喉に流し込む。

「あーあ……鬱陶しいのが先客でいたのかぁ」

 ビージーですら、相手の正体に呆れた様子である。

「ふざけるなっていうのは、こっちのセリフだぜ?」

 イブネフは苦笑した。恐ろしく余裕のある態度である。その目の先で、リズィユはうなだれて何か恨み事らしき言葉を吐いている。

「……終わった」

 しばらくして、ぽつりとつぶやく。

 顔を上げた彼女の目には殺気が灯っていた。

「あんたら、野良だってねぇ。後ろにイザブ武警の三課がついている」

「よくわかったな。で、先方はどんな用だった?」

 応じたのは、イブネフだ。

「クッソタイミングが悪い!」

「あー?」

「ウチのRRKが、あたしを裏切ったと断定しやがった。あんたらとビージーのところの様子とここに来たのが丸わかりだった」

「そりゃ、お気の毒に」

 同情の一片もイブネフは表していない。

「あんたらもあたしも、RRKの暗殺リストに入ったよ。おめでとう。ありがとう」

「俺らも?」

 リズィユはうなづいた。

「馬鹿な。自爆する気か、RRKの連中は?」

「DLОとDОLが背後にいたって、躊躇しないと世に知らしめる絶好の機会だってことだよ」

「どこまで生真面目なんだよ、RRKは」

 RRKの死刑宣告に加え、本当に恐ろしいと思ったのは、この短時間でイブネフたちの特定をした情報網と解析力だった。

「うるせぇ。クダグダ言ってないで、あたしを助けるって言えよ、犬が!」

「助ける? 俺らは巻き込まれた上に標的にされたんだぜ?」

「知るか。おまえらが、あたしをこの状況まで持って行ったんだろうが。責任取れ!」

「責任って……おい、ビージー?」

 疲れたように、イブネフは少年に顔をやった。

 ビージーは飴を奥歯で砕いた。

「良いんじゃねぇの?」

「考えでもあるのかよ」

「手土産だ」

 その言葉をしばらくかみ砕くと、イブネフは眉にしわをよせる。

「……おまえ、悪魔か?」

「んー? みんな得していいじゃんかよ」

「上手くいくかねぇ」

「ほかに手はないんじゃね?」

 イブネフはため息のようなものを吐いた。

 電子タバコを咥える。

「良かったな、リズィユ」

 冷たい目で、少女を見るとスキットルを取り出して、一口中身のウィスキーを飲み込む。

「当然でしょう。よろしく」

 疑似ビール缶を軽く掲げて、リズィユは残りを飲み干した。




 イザブ総督府は、新たな総督を招き入れるためのパレードを借地の各都市で開いていた。

 新たに六か国の調整した人事である。

 各地の軍閥の都市にもこれ見よがしに強行して行っていた。

 だが、これに対して借地のイザブ人たちは、別の人間の集会に人を集めていた。

 賑やかに盛り上がるなか、武警は一人の男を釈放した。

 ギナーが出る刑務所のドアの前で、二人の武警が見守るなか、一人が彼の手錠を外した。

 同時に腹をけり上げて、痛みにかがんだませた頭をさらに殴る。

 地面に転がったギナーは荒い息をしつつ、身体を丸めた。

「ふざけやがって!」

 三人の武警は殴る蹴るをやめずに、執拗にギナーの身体を痛めつけた。

 やがて息の上がった三人は、強引に彼を立ち上がらせて、ドアの外に放り出した。

 ギナーは耐えられずに、再び道路に倒れた。

 その口からは荒い息と不気味な笑いが混ざっている。

 ギナー釈放の報は、記念式典があるので統制を掛けられて人々には伝わらなかった。

 彼は、ようやく立ち上がると、ついでに放り投げられた所持品の入っている袋を手にして、携帯端末を取り出す。

 数字を打った次の瞬間、背後の刑務所内が一斉に騒ぎだした。

 銃声も聞こえる。

 囚人たちが蜂起したのだ。

 ギナーはそれを壁越しに眺めながら、満足げに笑う。

 先ほどの三人の武警も、これでタダでは済まされないであろう。

 今度は通信を入れた。

 現在、壇上でイザブ人の権利を主張している、ブラトという人物にだ。

 イザブの国土が借地になったときから設立されたイザブ人保護目的の組織TKYに所属する若い男だ。次代の名士として有力視されている。

「今出た。これからそっちに行く」

 短く言って通話を切る。

 よろけながらも、ギナーは薄笑いを浮かべて道路を進んでいった。


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