表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

69/139

決戦前夜

翌朝、オストロー公爵とその嫡男のエリック、ドットールー侯爵とその嫡男のジャックは、国王直々の呼び出しを受け、登城していた。



 平日の呼び出しに、学園を休む羽目になったジャンは、少し不満そうだった。


「イメルダ嬢に会えない一日なんて……」


「ジャン、君にも大いに関係のあることですよ」


 国王の前でも全く臆することのない、いつも通りマイペースなジャンをアンソニーが嗜める。


「ドットールー侯爵令息、今回もその方の力を貸して欲しい」


 国王が苦笑しながら、ジャンに声をかける。


「かしこまりました。まずは詳しいことをお聞かせいただけますか」


 国王に一礼すると、ジャンが一転真面目な顔で願い出た。


「うむ。ウィリアム、アンソニー、ブートレット公国でわかったことを話してくれ」


 二人がアーゴク侯爵家とクロー伯爵家の企み、その二家とメッシー伯爵家との繋がりを端的に説明した。




「今回の薬物騒動は、僕がメッシー伯爵家を潰したことが発端だったのか……」


「完全な逆恨みだ。お前のせいではない」


 さすがに少しショックを受けた様子のジャンの肩を、父のドットールー侯爵が抱く。


「ええ。僕は為すべきことを為しただけです。そして、今度も為すべきことを為します」  


 (イメルダに危害を加える恐れのあるものは、全て潰しておかないと……!)


 ジャンはこれまでに見せたことのない真剣な表情で力強く頷いた。




「お話はわかりました。それで、これからどのように動きますか?」


 それまで黙って聞いていたオストロー公爵が口を開いた。


「クロー伯爵家を断罪するための物証が必要だ。明日にもブートレット公国からの知らせが届くだろうが、それを待つ間に王国内の調べを進めたい」


「オストロー公爵とドットールー侯爵には、コモノー男爵の周辺を再度洗い直していただきたい。薬を売り捌いていた実行犯も含めて、再度徹底的に追求していただけないだろうか」


 国王と宰相が今後についての指示を出す。


「その間、我々ハートネット公爵家はクロー伯爵家とその周辺の監視と調べを続けます」


「ウィリアムは隣国のディミトリ公世子との連絡を密に頼む」


「かしこまりました」


「陛下、僕は元メッシー伯爵のことを再度調べたいと思います。アーゴク侯爵夫人の弟という人物が気になります」


 ジャンが国王に自身の考えを伝えると、国王は頷いて言った。


「いいだろう。だが、あまり時間はない。各々できるだけ速やかに調べを進めてくれ」


「「「「「「御意」」」」」」


 集められた全員が頷き、一礼するとそれぞれ部屋を後にした。



 ===========================



 学園では、ポール、アリス、イメルダ、エラリーの四人が、授業に集中しようとしてできずにいた。その原因は先ほどの休み時間にあった。  



 一年生のクラスでは、休みかと思っていたジャンが突然現れた。


「ジャン様!」


「ん?ジャン、今日は休みのはずじゃ?」


「イメルダ嬢、エラリー、ちょっと急ぎで伝えたいことがあってさ」


 ジャンは驚く二人を手招きすると、小声で話をし、とまどう二人を残して去って行った。



 二年生のクラスでは、ジャンと同様ウィルが現れて、アリスを呼び出していた。


「ウィル様?今日はお休みされると……」


「ああ、すぐに行かなければいけない」


「それなら、どうして……」


 疑問を呈すアリスに何事かを囁いたかと思うと、顔を真っ赤にしたアリスを一人残してウィルは去って行った。



 三年生のクラスでは、アンソニーがポールを廊下に呼び出していた。

   

「あれ?アンソニー、お前、今日休みだったんじゃないのか?」


「そのはずでしたが、ポール、君に一つ頼みたいことがあります」


 アンソニーの言葉に驚くポールに、真剣な顔で頷き、念を押すと、アンソニーはウィルの後を追って去って行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ