偽物か本物か
ロベリア王子。
エリストリアの次期皇帝として、この世界で1割も満たない魔法を扱う者。そして、敵国であるアスティカンにとって最も殺したい人物。
「…なんか言ったらどうだ?」
そう、私の敵だ。
「おーい、聞いてるのか?」
本当ならここで殺してやりたい。しかし、ここは…敵国の城。どどどういうこと!?私は今、敵国の王子と同じ部屋にいて、しかもここはエリストリアの城…!?
「おい」
王子の怒りがこもったような声に気がつく。
1回落ち着こう。いや、落ち着けない。
私は焦りながらも慎重に彼の顔を見る。
「…なんです?」
「…なにがだよ」
「いえ、その表情」
まるで子供みたいに頬を膨らませ、私をじっと見つめていた。
「別に」
ふいっと顔を逸らす。こうみると本当に彼は王子なのだろうか?何故か幼く感じる。もしかしたら…
「私を騙すつもりですか?」
「は?」
この王子は偽物なのかもしれない。確かに魔法は使えていたが、彼が本物とは限らない。私は王子の容姿は見たことがないが、彼が偽っている可能性もあるのだ。きっと城も内装だけそれに見立てただけで…うん、絶対にそうだ。
私は何故か自慢げそうに鼻を高くした。
「なにか目的があるのでしょう?仕方ないので協力はして上げますよ偽物王子さん」
なら、別に協力しても構わない。偽物なのだから。
それに…今の私はいつ殺されても立場だ。それなら最後までこの国と戦ってやる…!
「…じゃあ、王子の俺に協力してくれるの?」
「えぇ。何度も言わせないで下さい。もちろん、出来る限りの協力はしましょ…」
その時、見たくもない王子の顔が目に入った。その顔は
「言質取ったからな」
意地の悪いエリストリアそのものを表す顔だ。
「ま、まさか…」
「お前さー、なに勘違いしてんだよ。俺が」
彼が私に近づくと同時にこちらに向かって来る足音が聞こえた。
そして、バンッと扉の音と共に大きな声で
「ロベリア王子!!」
その名が聞こえた。
「う、嘘…」
唖然とする私に先程来た使用人の様な人も驚いているようだ。
「ロ、ロベリア様…?この方は?」
彼はまた不気味な笑みを浮かべ、私の肩をグイッと自分の方に傾ける。
「今後、俺の専用護衛騎士になる女だ」
使用人は唖然として、口をパクパクさせている。私も頭が追いついていない。恐る恐る彼の顔を覗くと、彼はまた子供らしい笑みを浮かべていた。