嫌な予感
次に目を開けたら、そこは…
敵国王子の部屋でした。
第二章〜敵国王子攻略編〜
「なななんであんたがここにいるのよ!!」
「いや、ここ俺の部屋だし!」
「そんなの知らないわよ!」
私は起きて早々、クソ王子と言い争っていた。
どうやらここはコイツの部屋らしい。ここがどこかまでは分からないが。
というか、私はなぜここにいるのだろう?
気づい見知らぬベットの上で私は横たわっていた。
記憶を思い返そうとする。
確か私はあの時、コイツに負けて…気を失って…なんだっけ?記憶がない。
「ところでさお前、自分の状況わかってる?」
「え?状況って…」
呆れたような顔をして、彼がグッと私の顔に近づく。
「な、なによ…」
「いや、バカだなと」
「は!?…って!痛ったいわね!」
暴言を吐き捨てた上に額にデコピンをされる。
かなりの音がなった。
クソ王子はまた、近くの椅子に腰をかける。
「言っとくけどな、俺はお前の正体も全部知っているからな」
その言葉は受け取り方によっては「お前のことはいつでも殺せる」ということだ。
それほど、自分の立場弁えろってことか。
「それくらい分かってますよ。私はアスティカンの兵器ですもの」
「なんでちょっと自信満々なんだよ」
まさか敵国の王子とこんな他愛のない(?)会話をする日が来るとは…
「これから私の事どうするつもりなんですか?」
「うーん、どうしようかな?」
「え、何か目的があるから私を生かしたんじゃないんですか!?」
そう。あの場面、確実に私は死んでいた。なのに今の私は何事も無かったかのように体が元気だった。魔法だろうか。
それほどまでして、わざわざ敵国の人間を生かすということは何か目的があるのではと思ったが…用がないなら
「なら、殺してもらって構いません」
早く殺してもらった方が楽だ。もう、私の生きる目的が見つからない。
「…死にたいのか?」
「まぁ、できれば即死がいいですが」
「そうか…よし!」
何かと思えばいきなり彼が立ち上がる。
そして、あの時のように指を広げる。
また私は何か嫌な予感がした。
「お前に生きる選択肢をやろう」
やっぱな。
「必要ないと言ったら?」
「またあの牢屋行きだ」
なるほどね。仕方ない。どうせ誰も助けてくれる人なんていないのだから、聞くだけ聞いておこう。
私は同意の視線を送る。彼は私の気持ちに察したかのように不気味に微笑んだ。
そして、私の前に人差し指を出す。
「1.俺の護衛専用騎士として働く」
論外だ。とにかく1は却下…
「以上だ」
ん?
「ま、待って。もはや選択肢では…」
「あぁ。強制だ」
や、やられた。聞くんじゃなかった。
彼は満面の笑みで私の耳元に近づく。そして、ある提案をした。
「王子である俺といれば、お前の大切な隊長さんに会えるかも」
私は理解するよりも先に彼の胸ぐらに飛びかかった。
「その人の名を口にするな。貴様にその価値はない。」
「かなりご立腹で」
「その腹立たしい物言いどうにかしたらどうです?」
「生まれつきなもんでね」
私は呆れて彼から手を離す。そして、扉の前に近づく。
「どこいくの?」
「この国を出ます」
彼はキョトンとした顔をして、クスッと笑った。
「ここから出れるとでも?」
「は?」
そして、彼は私に1歩1歩近づいてくる。
ドンッ
彼は私の真横に手を置いた。
「な、なんですか?」
「ここどこだと思う?」
「え?」
また、意地悪そうな顔をした彼を見て、何かを察した。この豪華な内装に今までの言動から、恐らくここは…
「エリストリアの城…ですか?」
「正解ッ!」
ありえない。
恐らくだが、あの牢屋からここまで来るのに何日かはかかるはずだ。なぜなら、あの牢屋の周りには町や村が1つも見当たらなかったからだ。それほど国とは離れてるはず。まぁ、それもうろ覚えなので見た正確とは言えないが。
でも、見知らぬ敵国の私をそこまでして…
「なぜ、そこまでして私を生かすんですか?」
彼は一瞬、不思議そうな顔をしたがすぐにフッと鼻で笑った。
本当にこいつといると嫌な予感しかしない。
「…決まってるじゃん」
彼は私の唇に人差し指を当てる。
その時の彼の顔はどこか見覚えがある気がした。
「お前が最高の玩具だからな。そのネジを壊してやりたいんだよ」
…
「は?」