1.牢屋脱出
嘘をついた。とんでもない嘘を。神様も呆れるくらいの。
きっと来世は虫けら以下の存在であろう。
そんなことを考えている私に大柄の男の人が近づいて来た。
「証拠は?」
あ、終わった。
「あー、えっと…ほほほら!この私を!知らないの?あのかの有名な私を!」
(何言ってんだこいつ。)
明らかに不審人物を見るような顔をして、また私に問うた。
「これがラストチャンスだ。お前がエリストリア国民だという証拠は?」
ここまでか…。
さすがに私も諦めがつく。こんな顔を向けられたら誰だって諦めるだろう。でも…私は、
「私はっ」
ギギギィ!
私の言葉を遮って勢いよくどこかの牢屋の扉が開く音がした。
1人の男の焦る声が聞こえた。
「おい!脱走したぞ!ヒョロい男が1人!」
「は!?ちゃんと見張っとけや!!」
顔を真っ青にした大柄の男達が次々に別の牢屋へと走り出す。
全員が目の前から消えた瞬間に全身の力が抜け、私は牢屋に寝転がるように倒れた。
(た、助かった…。)
命拾いをしたものだ。戦場にいる時よりも緊張した気がする。
私は天井を見上げる。
雨漏りの水が顔に落ちてくると同時にすぐにガバッと起き上がった。
(今しかないじゃん!脱走!)
私はすぐにまず手足を縛ってある手錠を外そうとした。しかし、
「…え?あ…」
頭が真っ白になる。
(なんで…?どうして、…もう既に外れているの?)
そう、手錠は既に外れていた。外れているとは分からない程度に。
明らかに意図的なものであった。
誰が…いや、そんなこと考えてる暇は無い。
私はすぐに切り替えて、次に牢屋の扉を確認する。
変な音を立てたら、また奴らが来る。慎重に手を牢屋の扉へと伸ばす。
…私はすぐにドアノブに回した。
左右を確認する。奴らはいない。
私は出口に向かって駆け出した。
(はぁ、はぁ…まじでどうなってんだよこの牢屋のセキュリティはよぉ!!)
そう、扉も開いていた。さすがにこれはミスというレベルでは無い。誰かが…私を意図的に助けようとしている。
しかし、この国で私は敵だ。そんな私を助けようとするやつなんているのだろうか。
もしくは、私と同じ敵国民なのか…
そんなことを考えながら走っている内に出口がみえた。
(まじでどうなってんだ!?ここのセキュリティ大丈夫か!?)
あまりのガバガバさに逆に不安になる。私は出口に向かって足を止めず走った。
裸足で走り続けたからか、足はもう傷だらけになっていた。
こんな足、もうどうにでもなれ…!今は、この瞬間のために…!
眩しい光が指す。
出口だ。
ずっと日の当たらない暗いところで過ごしていたからか、疲れていたからか…
私は目の前にいる敵国の人間に気が付かなかった。
次回もよろしくお願いします。