3話『小さな旅出』
ドコ、ドカッ、バタンッ!
隣の部屋から激しい物音がする。
旅の準備――と言えば、武器とか道具とか、それからお金?
服や替えの下着なんかもあるか……そう考えると大変だ。
私のことはどうやって連れて行くつもりだろう。
「よし!」
意気揚々と手提げバッグ持ってやってきたマイラ。
服装は白いワンピースに白茶のジャケット。
……もしや、準備ってそれだけ?
「美容薬もお金も持ったし、もしもフェディロニーで泊まる時の為の瞬間乾燥器とか魔式小型洗濯機もあるし、オッケーね!」
マイラは旅をナめているのか?
いや、便利なものが出来過ぎて必要な物がなくなっているのかもしれない。
それにしても、武器を持たずにもし襲われた時はどう対処するというのか。
商人が雇っているらしい冒険者を見ずに信頼している訳でもあるまいし……。
私は旅支度をしないから何とも言えないが、ただ近場に出かける訳ではないだろう。
ここから真南だって言っていたが、地図を見る限り凡そ2日、3日は掛からないか……?
馬車で連れて行ってもらうとしても丸1日は掛かるような距離だ。
馬も疲れてしまう訳で、途中の休憩も挟むとすれば今日中に着くとは言い難い。
セラの先程の盗賊の被害報告が変なフラグになっていなければいいが――。
「あなたはじっとしててね」
色々と考えている内に私はマイラに抱えられた。
本当にこのまま行くらしい。
行動力こそ凄いものの、考えが浅いのかそれとも深いのかが分からない。
一先ず私は言われた通りじっとしておくことにしよう。
「鍵は全部閉めたし大丈夫ね」
玄関の扉を開けて外に出る。
日差しが強い。
時間的にはまだ昼頃か。
身体がぽかぽかして温かく心地が良い。
「ここの鍵も閉めて――オッケー! 一人で遠出するなんて何年ぶりかしら」
久々だからと言ってもその装備はひどいと思う。
「まずは商人さんを探さないと――」
マイラがキョロキョロと辺りを見回す。
ここは小さな集落らしい。
人間が住む家が点々とあり、中央と思われる場所には大きな樹が生えている。
どちらかと言えば、村と言うよりも町の中央広場のような感じ。
樹の傍には井戸があり、水をくみ上げている人が時折見受けられる。
「あっ」
何かを見つけたのかマイラが走る。
視線の先、目的と思われる場所には、一つの大きな馬車がある。
荷台に大きな木箱が多く積まれている馬車で、恐らく商人のものに違いないだろう。
荷台には誰かが乗っているようだ。
「商人さん!」
荷台に乗っていた人物が顔をこちらに向けた。
少し太り気味で、立派な口ひげがある男性だ。
「あい? 何でやんしょ」
「はあ、はあ……。あの、これから出るんですか?」
「まあそうですが、何かお買い求めで?」
「いえ、実はかくかくしかじかで――」
マイラはフェディロニーへ行きたいという趣旨の話をした。
冒険者を雇ってもいいが道のりが大変だということや、道に迷ってしまう恐れもあるということなど。
様々な問題がある、というか馬車に乗りたいから何とかでっち上げたのだと思うのだが、商人は快く受け入れてくれた。
「フェディロニーですねぇ。私も寄って行く予定でしたし、いいですよ。一応代金は貰いますがー……まあ銅貨5枚程でやんしょか」
「あら、そんなに安くていいんでしょうか?」
マイラが口元に手を当てる。
「まあ……特別ですよ」
商人は頬をカリカリと擦りながら視線を横に逸らす。
「じゃあ、これでお願いしますね」
バッグの中から小さな袋を取り出すマイラ。
ジャラジャラと音がする袋から銅貨を5枚取り出し、商人に渡した。
「先程も説明しやしたけど、今回雇った護衛は1人ですから……。腕っぷしが強いので大丈夫だとは思いますが、最近は盗賊が多いと聞きやしたので、もしもの時はなるべく隠れていてくださいねぇ」
「分かりました!」
「それじゃ、行きやしょう。ほんら、護衛さん行くよぉ!」
それから私たちは、馬車の荷台に乗り込み村を出て行った。
馬車って何か……憧れますよね。(乗った事はあります)
次話もよろしくお願いいたします!