23話『商人の町チコフィ』
かんっぜんに忘れてました!
本来は昨日更新でした!
チコフィ。
伝説と言われる商人が造り、商人の町として栄えてきた町……らしい。
マイラはそういう風に言っていたが、事実かどうかは不明だ。
『商人の町』という名に相応しく、商店が立ち並び風呂敷を広げて商売をする旅商人も多くいる。
商人間での取引は多く競争も激しいためか、品質の良い道具や武器、防具等を揃えたいのであればココが良い……だそう。
マイラは観光だのなんだのと言って私を連れまわし、町の隅々まで歩きつくした。
隅々までとは言え町自体の規模はそこまで大きいわけではないため、時間はあまり掛からなかった。
それから、町を存分に観光したところでマイラは適当に昼食を摂り、私の入っていた壺を売っていた商人の元へ向かった。
私を売っていた商人は町の端の方に店を構えており、中心部とは違い人の入りはそこまでなかった。
木造の家屋にうねうねとした緑色の植物が垂れかけてある少し不気味な店。
マイラが小窓の付いたドアを開けると、キシキシと軋むような音が鳴った。
不気味というか、もう壊れかけているというか。
正面の通りに面した唯一の窓は植物で遮られており、光は入ってこない。
そのためか店内は暗く店としては異様な光景であった。
壁に隣接するように木造の棚がいくつか設置されていて、その棚には様々な色の液体が入ったガラス瓶が多く置かれていた。
ガラス瓶には白いシールが貼り付けられておりとても汚い字で何か書かれている。
あれが恐らくポーションなのだろう。
そしてあのシールはポーションの名前、といった所だろう。
でも字が汚くて読めない。
また、棚の一番下の段には茶色い壺が置かれており、その中にも液体のようなものが入っていた。
マイラは何故こんな所でポーションを買ったのだろうか……。
「すみません、誰かいらっしゃいますか?」
マイラが静まり返った店内で、店の奥へと続く通路に向かってそう呼びかける。
「あ……はい……」
その通路の奥から小さな声が聞こえ、バタバタと足音を立てながら通路の奥から何者かがやってきた。
通路の奥から姿を現したのは小さな男の子だった。
「商品の購入ですか?」
青い無地のエプロンに黒いパンツ、そして白いシャツを着ているその男の子は、マイラの前へとやってきてそう訊いた
「……あれ、違います?」
マイラよりも少し身長の大きなその男の子は、何も手にしていないマイラに対して首を傾げた。
「いや、別件です」
「別件……? ですか?」
「以前購入したポーションについて訊きたいことがありまして」
「はあ……。失礼ですが、ここに来たことってあります?」
マイラの顔をじっと見つめるその男の子は、顎に手をやり頬杖をついている。
「僕、結構記憶力には自信があって、他人の顔は覚えるタチなんです。でもあなたのようなお客さんは見たことがなくて……」
「うーん……なんというか、少し前に治癒のポーションを壺丸ごと購入したんですけど、覚えていませんか?」
「……確かにそんなお客さんがいたような気がします。まさか壺ごと買っていくなんて初めてでしたから……普通は瓶に小分けして持っていくんですけどね……」
「覚えてます? この顔」
マイラは自分の顔を指さす。
「うーん……。確かにあのお客さんに似てる……? かもしれませんけど、あの人と背も種族も違うじゃないですか」
「それはちょっと事情がありまして……」
「事情……? どういうものですか?」
腕を組んで小首を傾げるその男の子は眉を顰めていた。
――それからマイラはこれまでの経緯を1から丁寧に説明し、私のことも含めて男の子に伝えた。
「……なるほど。詰まるところ私の売っていたポーションに問題があったと」
「簡単に言うとそうですね」
「それにしても、ポーションから生まれる生物なんて聞いた事ありませんね……」
腰に手を当てて目を閉じる男の子。
「生物学者の方にも、魔物学者の知り合いにも同じような事言われました」
「……まあ、あなたが言うそれが真実であると仮定して話を進めましょう」
男の子が目を開ける。
マイラは息を「ふぅ」と吐いて安心するように胸に手を当てた。
「それで、別件というのは?」
「今の話にも通じるんですが、あのポーションについて、作った人の事が知りたいんです」
「……なるほど」
男の子が腕を組み頭を下に向ける。
「個人情報……ではありますが、そういうことならば教えます」
「え、いいんですか?」
「ええ。僕も丁度困っていた所なので、ついでにお願いを聞いてくれるのであれば」
「困っていた、ですか?」
「はい……。実はですね……その人、忽然と姿を消してしまったんです」
次話もよろしくお願いいたします!




