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スライム育成論  作者: 桜木はる
旅の始まりは突然に
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10話『目が覚めたら幼女になっていた件』

 驚きのあまり跳びはねてしまった私。

 なんとかベッドから落ちる寸前で何とか持ちこたえ、その女の子の方を見る。


「え……!? なにこれ!? どういう……ゆ、夢!? え!? は!?」


 顔や体、声などは幼くなっているものの、この女の子は確実に()()()であると直感的に分かった。

 何故かマイラが幼くなっているのだ。


「ど、どういう事……!? 何が起きたの……!? 昨日までの私はどこ!?」


 動揺するマイラはひどく取り乱している。

 私ももちろん動揺している。

 昨日までは座る体勢であれば付いていなかった髪が今はベッドにべたりとくっついている。

 身長で言えば、20から30cm(セチルメータ)ほどは小さくなっているだろうか。

 もはや10歳児並みの身長。

 一夜の間に何が起こったというのだ。


「と、とりあえず、か、鏡を……」


 震える脚に震える手。

 動揺が身体にも現れているマイラは、何とかベッドから降り寝巻を引きずりながら洗面所へと向かう。

 その(さま)はまさに昨日までのマイラとは思えない子どもの(よう)だった。


「キャーーー!?」


 洗面所から、廊下にまで聞こえそうな事件性のある高い悲鳴が鳴り響く。


「み、耳も何でこんなに長く――!?」


 耳が長くなってるらしい。

 壁にぶつかったような音が聞こえたと思ったら、再び寝巻を引きずりながらマイラが帰ってきた。


「どうしよう……まるでエルフの子どもみたい……」


 気分が沈んでいるのがよく分かる。

 ベッドに手を掛け自分の胸にもう片方の手を当てるマイラ。

 何とか落ち着こうと息を整えている。


「これじゃあユウにもパパにも気づいて貰えない……どうしよう……。それに、服とかどうしよう……下着は大丈夫だけど……うわああああ」


 泣き叫ぶマイラに私が言えることはただ一つ。

 何で下着は大丈夫なの。


「夢じゃなさそうだし……一体何が起きたの……?」


 徐々に落ち着きを取り戻しているがまだ息は荒い。

 人間の身体が一夜にして縮み、その上耳まで長くなるとは。

 私もその現象が何なのか、原因は何か知りたいくらいだ。


「……更年期? いや、何か違う気がする……」


 絶対違うでしょ。


「……まさか天罰? いや、なんか違う気がする……」


 昨日とか、何か悪い事したか? いや、してない。


「今までこんな事なかったのに、どういう事なの……?」


 ここで、私の脳裏にとある商人の顔が浮かぶ。

 昨日、このフェディロニーまで送ってくれたあの商人。

 確か私たちを降ろす時、様子が変だった。

 まるでマイラと初めて会ったかのようなきょとん顔。

 一昨日の夜までは何もなかったというのに、昨日になってそれが突然あった。

 それに加えてケルコニーのあの反応。


『まあ、失礼かもしれませんけど、32歳には見えませんよ。私が見る限りだと20代前半くらいに見えますけどね』 


 私はマイラの顔を見ることがあまりないため気づかなかったが、実は一昨日の夜から徐々に若返っていたのではないだろうか。

 私も昨日の夜になってマイラの肌が綺麗であることに気づいた。

 まあ元々かもしれないけど……。

 また、マイラ自身には今日の朝に至るまで自覚がなかったうえ、今までこんなことはなかったと言っている。

 つまり一昨日に現れた私の影響である可能性が大きいということ。

 いや間違いなくそうだろう。


「うぅ……」


 私はマイラに何とか自分の影響であるはずだとを伝えるために、先程偶然習得した跳びはねる仕草をした。

 ぴょんぴょんと跳びはねる私にマイラが気づき、目に涙を浮かべながら私の方を見た。


「どうしたの……? 嬉しいの……?」


 そうじゃない!


「……? えっ、まさか……!?」


 少ししてから気づいたのか、跳びはねる私をマイラが捕まえて離れないように抱きしめる。


「あなたの所為なの!?」


 恐らく私のせいなのだ。

 しかし、私も全く意図していなかったこと。

 私は更に、意図的ではない事を示すために大きく身震いした。


「……あなたにも分からないの?」


 少し違う捉え方をされてしまったが、何とか意図的ではないことは伝わっているようだ。


「うーん……どうしよう……」


 私の身体を頬でスリスリとしながら唸るマイラ。

 このままでは益々幼くなってしまう。

 そう思った私は、マイラの腕から跳んで離れた。


「わぁっ!」


 それに驚いたマイラが床に尻餅をつく。


「もう、びっくりした」


 私にできることはマイラから離れること。

 それから励ますということだけだ。

 そうでなければ先に進めないような気がする。

 私は何度も縦横無尽に跳びはねた。


「ど、どうしたの?」


 精一杯のエールということに気づいてほしい。

 起きてしまったことはもうどうしようもないのだ。

 それならこの状況からどうするか、先の事を考えなければいけない。


「…………」


 私は跳びはねまくり、最後に壁に激突した。


「……ふ、うふふ」


 先程まで俯きがちだったマイラが、顔を上げて静かに笑う。


「いつの間にそんな事できるようになってたんだね」


 両手を使い勢いよく立ち上がるマイラ。


「そうだね、前に進まないとね。夢じゃないし、もっと先のことじゃなくて、今出来ることを考えないとね!」


 伝わってくれたようでよかった。

 それにしても、寝起きからこんな事が起こるなんて……。

 はあ、疲れた……。


「よし、そうと決まればここから出る策を考えよう!」

エルフ姿の幼女が生まれました。

次話もよろしくお願いいたします!

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