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スライム育成論  作者: 桜木はる
旅の始まりは突然に
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1話『発見』

桜木はると申します!

めちゃくちゃ久しぶりに書いてます!(勢)

『エルフの旅路』というシリーズの1作目になります。

よろしくお願いいたします!m(_ _)m

「5、4、3、2、1……」


 繰り返し数字がカウントされる。

 最近こんな夢をよく見る。

 いや、最近かどうかも怪しい。

 遠い昔から……なのかもしれない。

 カウントはゼロにならず、必ず1で終わり、再びカウントを繰り返す。

 何も意味がないのに、まるで意味があるかのように錯覚してしまう。


「5、4、3、2、1……」


 また繰り返される。

 それに、女性の声なのだが、どこか懐かしい感じがする。

 誰だかは思い出せない上、そもそも関わったことがあるのかすらも分からない。

 一体、誰の声なのだろう。


「5、4、3、2、1……」


 そもそも、私は眠っているのだろうか?

 夢と言う割には確実な意識がある。

 自分の思いたいことを思えるし、身体を動かすこともできなくない。

 とはいえ、その動かす体は視認することはできない。

 ……何を言っているのか、自分自身でも意味が分からないが、そう表すしかないのだ。

 確かに分かるのは、私が木漏れ日が降り注ぐ場所にいるということ。

 蝶々のような羽をもった何かが、時折辺りを舞っているということの2つのみ。

 それが何処なのか、また何者なのかは分からない。


「5、4、3、2、1……」


 私が何もしなくとも、数字はカウントダウンされる。

 時が巻き戻っている訳でもなく、何か情景が変化する訳でもない。

 ……ただ安心する。

 その声が聞こえていない間は不安になる。

 私は一体、何モノなのだろう……。


「……0」

「(……え?)」


 突然、今まで1で止まっていたカウントがゼロに進む。

 あまりに唐突なことで私も言葉を失ってしまった。


「――さあ、目覚めるのです。我が子よ……」


 その刹那、眩い光が辺りを包み込み私は気を失ってしまった。





 身体が思うように動かない。

 いや、身体が何かに収まっているみたいだ。

 こう……暗くて、少し丸みがあって、狭い何かだ。

 そこに私はぴたりと収まっている。


「母さん~! 準備できたよ~!」


 遠くから幼い声がする。

 いや、遠くから聞こえるというより声がこもっている。

 恐らく私が収められている何かが密封されているからであろう。

 ここは一体……。


「ユウ、薬草はしっかり持った~? あとは装備品とか荷物袋とか……」

「俺、もう子どもじゃないから大丈夫だって!」

「……本当?」

「……あ、薬草忘れてた」

「ほら」


 多数の何かによる会話のようだ。

 会話を聞く限り、1人は「カアサン」、もう一人は「ユウ」という者らしい。

 薬草や装備品など聞きなれないことは多いが、薬草というものが無いそうだ。


 コト、コト――。


 何か音が聞こえる。

 どうやら私が収まっている何かに、誰かしら近づいてきているようだ。


「そうそう。この前、北の町の商人さんから買ったポーションがあるの。これも持っていきなさい」


 私が入っている何かが揺れる。

 今、私は持ち運ばれているらしい。


「ポーションなんて買ってたんだ……」

「あなたが冒険者になるってきかないから……。他の冒険者さんに必需品とかを聞いておいたら、治癒のポーションがあると良いって言ってたから買ってみたの。ちょっと値は張ったけど……」

「……ありがとう、母さん」


 何かしんみりした空気になっているみたい。

 それはそうと、今の話の流れから私の正体が判明した。

 私はポーションだ。

 「ポーションを買っておいた」と言う発言から、私が収まっているこの何かを運び出したということは、つまり私はポーション。

 ……おそらく。

 いや……? 必需品が私のように意思など持つのだろうか?

 あれ……、何かがおかしい……。

 私はポーションという必需品……? ……()、なのか?


「よいしょっと!」


 ドンッ、と音が鳴り、震動が私に伝わる。

 私の入っている何かが、何処かに置かれたのだろう。


「確か開ける方向は左だっけ……?」


 キュッキュッという音が上から聞こえる。


「ん~! おりゃあぁぁ!」


 やけに威勢のいい声とともにこの空間に光がやってきた。

 唐突にやってくる眩い光に慣れず、思わず目を瞑ってしまった。

 あれ、ポーションに――目?


「あら、何かしら……?」

「どうしたの?」

「うーん、なんか思ってたのと違うような……」

「ポーションってこんな色だったっけ?」


 目がやっと慣れてきて、少し目を開けるとそこには2つの顔があった。

 どちらも眉間に皺を寄せているようだ。

 私はポーションのはずなのに、一体何をそんな怪しんでいるのだろうか……。


「なんか、小さい目みたいなの付いてない? それに、さっきから少し動いてるような……」

「もしかして……魔物?」


 2つの顔は互いに相手をじっと見つめ、何か思い立ったかのように再びこの空間を密封した。


「あれ……? 私間違ったかな……」

「でも、町の商人なんでしょ? その人が間違うかな……。まず魔物が入ってるって商品としておかしくない?」

「確かにそうだけど……、でも……ね?」


 どうやら私はポーションではないらしい。

 この2名の意見を聞くに、私は魔物……らしい。

 それでも、ポーションよりかはしっくりくる。


「とりあえず、取り出してみる?」

「俺がやるよ。危ないかもしれないし」

「うん……」


 再びこの空間に光が訪れ、私は再び片方の顔と見合わせる。

 そして、再び私が収まっている何かを持ち上げて逆さまにした。


 にゅるんっ。


 出入口が少し狭くて引っかかりがあったものの、私は外に出ることができた。

 身体が地面にぶつかり、私に付着している何かが飛び散る。

 それは水色で半透明で……そう、ゼリーのような物。


「これ、何だ……? ゼリーみたいな……うーん、魔物にも見えなくないけど……」


 一先ず辺りを見回してみる。

 窓から差し込む光はキッチンのシンクを照らしている。

 ここはダイニングだろうか?

 それに魔式冷却庫(フリーザー)魔式熱調理器(レンジ)もある。

 私がいるこの机は、差し詰め食事をするためのテーブルだろう。

 それから目の前にいる二人――恐らく人間だ。


「襲ってはこないみたいね……?」


 人間の女性と少年が私の顔を見つめている。

 それにしても、机の上にいるのにも関わらずこの視点の低さ。

 私は小型の魔物なのか。


「敵意はないみたいだけど、何するか分からないからなあ……」


 そう言って、少年は腕を組み下唇を噛みながら小さく唸る。

 ここで何かしらアクションを起こそうものなら警戒されてしまいかねない。

 ここは何もしないべきか……。

 言葉を発する方法も分からない今、どうしようもないだろう。


「一先ず壺に閉じ込めておくしか……」


(――それは絶対に嫌だ!)


 そう思った私は身震いして意思表示をした。

 言葉を発せれないのであれば、行動で示すしかない。


「この子、身震いしてるけど……嫌なんじゃないの?」

「そうかも……。あ、そろそろ出ないと。集合時間に遅れちゃうな……」

「……みんなと行くんだもんね。じゃあこの子は私が見ておくから。ユウ、あなたは行きなさい」

「でも、危なくない?」

「見た感じ悪い子じゃなさそうだから……大丈夫。もしもの時は、冒険者さん呼ぶから」

「心配だけど……連れて行くわけにもいかないから……。うん、わかった。じゃあ、母さん頼むよ。何かあった時は――すぐ来るから! じゃあ行ってくる!」

「うん……。行ってらっしゃい!」


 少年は床に置いてある袋と壁に掛けてある剣と盾のセットを持ち、キッチンとは反対側にある扉に向かって駆けて行く。


「ユウ! 気を付けてね!」

「わかってるって!」


 そう言って、少年は部屋を外に出て行った。

 少年が出て行き扉が閉まった途端、女性は物寂し気にため息を吐いた。


「……はぁ、心配」


 椅子に座り俯く女性。


「ユウも冒険者かあ……。やっぱりあの子は()()に似てるなあ……」


 戸棚の上に置かれた写真立てを見ながら、ひと息つく。

 聞くところによると、「ユウ」と「カアサン」に加え、「パパ」という存在がいるらしい。


「…………」


 女性は写真を見たまま動かなくなってしまった。

 何か物思いに耽っているようにも見える。

 ……それはそれとして、私はこれからどうしたらいいのだろうか……。

 この女性が何かしら反応を起こさない限り、私も下手に動くわけにはいかない。

 もしかしたら割と狂気的な一面を持ち合わせていて、急に刃物を持って襲ってくるかもしれないし。

 ステイ、ステイ……。


「……くよくよしていらんないか。よし、私も私で次に進まないとね」


 意気込んだ様子で頬を膨らませて強めに息を吐く女性。

 そして、茶色の髪を捲り上げ、一本の束にしてゴムで結んだ。


「とりあえず、机の上片付けないと」

とある部分までは毎日21時~24時に更新する予定です。

文章は拙いですが、次話もよろしくお願いいたします!

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