再会ー②
今回は少し短いかな?
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「蒼天の間にて陽術の頭様がお待ちです」
シワひとつない黒色のネクタイが非常に似合うスーツの男の手招きに従い烈火たちは少し戸惑いながらも、歪な形をした荒削りの岩の階段を登っていく。
・・・軽く山登りをしてるんじゃないかと錯覚するほど長い階段を登り終えると、先が見えないほど開けた場所に出る。そこには立派な建物がドンと聳えていた。
それはまるでジブリの映画に出てきたような、和洋折衷が独特の塩梅で行われている大きな建物ぇあった。
まず目の前に見えるのは戦国時代のような開けるのに苦労しそうな重々しいドア。
果たしてどうやって開けるのかと烈火と美空はごくりと喉を鳴らして覚悟した。
しかし、意外にもこの扉は自動ドアだったようで、近づいたらあっさりするほど動いてすぅーと開く。ギギギギギ・・・とこの手の扉にお約束の音すら鳴らない扉が開ききるのをまってから潜る。
そこにら、意外や意外、最新のショッピングモールやターミナル駅のような白をメインとして、その白の美しさを強調するために、緻密に設計された曲線の模様があしらわれた綺麗な造りの内装が広がっていた。
そのフロアの真ん中にはショッピングモールや公園でも中々お目にかかれないサイズを誇る噴水まである。
純白の壁の広間の中央部分には二人の髪を後ろに丸く束ねた瓜二つの女性がいて、そこが受付らしい。
茂雄や美代子の見様見真似で烈火と美空の二人は見たこともない機会に指を置き、陽術認識という本人確認をする。
意外と近代的な見た目をした機会に親指を置いてしばらくすると、
フォン。
と、携帯の通知音のような軽やかな音が鳴り、機械の横にある半透明の筋が青く光る。それを確認した女性が首から提げるカードを取り出し、パソコンに文字を打つでもなくカードに手をかざして文字を浮かび上がらせた。
「烈火様ならびに美空様の出生時に陽術師連盟術式データベースへ登録されているデータと97%一致しました。成長測定術式と組み合わせた結果現在の術式とほとんど一致すると思われます。・・・確認しました。四人に入館許可証を発行します」
女性から渡されたパスポートを首にかける。
カードにはいつの間にか撮られていた顔写真が載せられており、そのほかには生年月日や術師IDなるものが記されていた。
「それでは、謁見の間へご案内いたします。こちらへ」
案内役の男性がエレベーターのボタンを押すと、間髪入れずポォーンと穏やかな音が鳴り扉が開く。
全員がゾロゾロと入り、五人が乗り込むが、それでも空きスペースがあ十分にあるほど広いエレベーター。
すぅー。
エレベーターが上がる静かな音が流れる。
この状況では不親切なことに、BGMなどは一切流れておらず無音が続く。
その沈黙に耐えかね、最初話に口を開いたのは烈火であった。
「・・・あのさ、美空ちゃん」
急に声をかけたからかか、美空は少しビクッと体を跳ねさせる。
「あ、先輩どうしました?」
二人は学校の図書委員として何回か話したことがあるレベルの関係性。
話せる事は話せるが、いきなり兄妹だと言われると違和感を感じるぐらいには距離感のある間柄だ。
「いや、美空ちゃんも一昨日?急に陽術とかの話聞いたの?かなーって」
ええいままよ!と気になることを素直に問うてみた。
「え、あ、はい。車の中で体内時計が狂ってたるかもしれないですけど、多分一昨日の夜?急に身体にビビビって電撃が走った感覚がしたんです。
それでなんだろと思ってたらいきなりおばあちゃんが部屋に来て陽術とか、昔あった出来事とか色々説明されて、最初は訳がわからなくて、ドッキリか何かだと思ったんですけどおばあちゃんの言った通りの手順を、踏んだらピリッと静電気程度に電気が出たのでほんとなんだって」
「雷?焔じゃなくて?」
「え?は、はい」
てっきり、烈火は美空も自分と同じ焔を使うのだと思っていた。
この前見た術も糸を操る人を除いて全員焔を使っていたしな。
美空の顔を見ると驚いている表情が伺えたので、逆に烈火が雷を出せると思っていたようだ。父と母のどちらかが焔を操り、どちらかが雷を操っていたのだろうか?
ポォーン。
再び優しい音が鳴り、扉が開く。
エレベーターを降りて、辺りを見渡してみるとその先に広がっていたのは非常に幻想的な空間だった。
淡い光りを発する青色の壁や、名は知らないが朧げに咲く花。その上を楽しそうで美しく、それでいて儚げにひらひらと舞う翠色の蝶。
パチパチと心地よい音を立てて、燃えて燃えて火の粉を散らしている松明。
その広間の奥は、ぽこっとステージのように一部が盛り上がっていて、そこが唯一人の手が加わっているんだなとわかる。
自然とはかけ離れているように見えるがそんな事がどうでも良くなるほどに美しく、どこか悲しくなる空間だ。
その光景に思わずぼっーと見惚れていると、突如、頭の中で静電気のような、言ってしまえば不快な感覚が迸る。
『揃ったようだね』
突如、頭に直接声が流れ込んでくる。
「うおっ!?」
「きゃっ!?」
奇妙な感覚に烈火と美空は思わず悲鳴のような声を漏らす。
しかし、遠山夫妻は慣れているのだろうか。特に気にするそぶりもなく、寧ろ流れるように片膝をついて、片手を胸に置くいた。
それを見て、二人も見よう見まねで片膝をついた。
「二人を連れてきました。陽術の頭様」
茂雄が言う。
『ええ、ご苦労です茂雄さん、美代子さんお二人の方が年上なんですから、普通に天翔で良いですよ』
「ふふっ、もったいないお言葉」
「お気持ちはありがたく頂戴いたします」
この反応を見るに、この人間(声では男か女かが分からなかった)が、陽術師を統括するリーダーなのだろう。
『ふむ・・・あぁ、すまない。二人には自己紹介がまだだったね。私が陽術の頭。天翔だ。よろしくね』
「あっ、よろしくお願いします。えっと俺はー」
『ああ、君たちのことは知ってるから大丈夫だよ。うん。よろしく』
烈火の自己紹介は遮られてしまった。出鼻を挫き、主導権はあくまでこちらにあるよと宣言しているように思える。
天翔の声は非常に穏やかで優しく、包み込まれるような感覚がある。
だからこそ、何故か怖くもあるのだが。
それは置いといて、脳に直接送り込まれてくる声はいったいなんなのだろうか。
そもそも、天翔はどこにいるのか。
という烈火の疑問を読み取ったかのように、天翔は説明を始める。
そしてこれは後に思い出すたびに思う事なのだが、やはりこの日が烈火たちの人生を大きく変える分岐点になった。