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ミラクラーズ  作者: 神渡楓(カワタリカエデ)
6/20

再会ー①

思いしないと思っていただけましたら、ブクマ、評価、コメント・格差お願いします!

カァーカァー。

朝の透き通った空気に乗って間延びしたカラスの声が森中に木霊する。その声の数は徐々に大きくなっていき、耳をくすぐって十六歳の高校二年生。達山烈火。改め、継島烈火の意識を覚醒させた。

「いってて〜」

昨夜の戦いによる痛みがまだまだ残っている体。

負傷し、プルプル小刻みに震える体をどうにか無事な(とはいえかすり傷は目立つが)腕で支えながら、上体をゆっくりと起こす。

しょぼしょぼした目をこすり、視界をはっきりとさせる。

すると、先ほどまではもやがかかってよく見えなかった我が家の真の姿。

つまるところ、その景色がよぉ〜く見える(悪い意味で)ボッロボロの無残な家の姿がくっきりと見える。

ベキベキに折れた床、潰れた屋根、ひしゃげた柱に割れた茶碗。

「改めて見るとヤベェなコレ」

ぽりぽりと指で頭を掻きながら昨夜のことを思い出す。

謎の生物改め、穢塊なるものとの戦闘(逃げてただけだが)により、我が家は一部が大きく倒壊した。

烈火が普段過ごしている子供部屋(この名称は恥ずかしい)も損傷。机やベッドはギリギリで被害を免れたものの、壁は破壊され、外に剥き出しの状態となってしまった。

他にも部屋はたくさんあるのだが近頃掃除しておらず、埃まみれの虫虫パラダイスだったので昨日はしょうがなく剥き出しの部屋のベッドで眠りについた。

六月は初夏だが日中はちょっと動いただけで額に汗が滲むレベルだが、むき出しの部屋だと流石に朝は肌寒い。

思わずむずりとくしゃみをして、少々ざらつくティッシュで鼻をかむ。


今日から自分の人生が大きく変わる気がする。

そんな予感がずっとしている。それがいいことなのか、悪いことなのかは今はまだ、判断しかねる。ただ少し不安。

 

頬を両手で一回パチンっと叩き、気合を入れてみる。

「よしっ、行きますかぁ」

気合を入れて、上を向き、不安な心を閉じ込めた。

あーたーらしーいあーさがきた!きぼーのあーさーだ!

頭の中で大きく歌いながらベットを降りた。


二階にある自分の部屋から昨日までに比べて、よりギシギシと音の鳴る階段を伝って一階に降りる。

「おはよう」

「ん。おはよう。寝れたか?」

すでに茂雄は起きていたようだ。

「全然っ!部屋寒すぎっ!」

烈火は努めて明るく振る舞う。

きっと、茂雄じいちゃんは負い目を感じているだろうから。

烈火は何があっても茂雄を親だと思っているから。

「ほら、たくさん食べな。繰り返すようでわるいが、今日からしばらく大変だからな」

差し出された茶碗には白ごはんが山盛りになっていて、味噌汁や、卵焼き、ウィンナーも別の皿にたっぷりに乗っている。

「いただきます」

昨日の夜たくさん動いたので、烈火はかなり空腹だった。

美味い。物心ついてからずっと食べている味を改めてしっかりと感じながら、烈火は食事を摂った。


 

○ ○ ○ ○



朝食をとってから二時間ほど経ち、部屋には太陽の光が燦々と差し込む時間帯になった。

「いやこれ、差し込むってレベル越えてんな。ガンガン当たってるじゃん。あっつー」

すごく暑い。すべての光入ってきてるから溶けそうなほどだ。

そんな中、取り敢えず昨日茂雄が言っていた、陽術師の本部的なところに行くために、烈火は準備をしている。

「そろそろ、準備できたか?」

じいちゃんが顔を覗かせる。

「うん。服は制服でいいの?それしかお堅い服は持ってないけど」

烈火は、制服のブレザーのネクタイを締める。

庭には既に送迎の黒塗りの高級車が数台並んでいるようだ。ヤーさんみたいで少し落ち着かない。

「おう、いいぞ。それじゃあ、行こうか」

玄関は破壊されているので、外に繋がるのは廊下だった。

その廊下の端に置いてある靴を履いて庭に出る。


車の前に立っているのは数人の大人。

「遠山さん。こちらの車へ」

烈火と茂雄はスーツがよく似合う運転手の男にうながされ、車に乗り込む。

車はスペースがかなり広くゆったりとすることができるシートに、お菓子やジュースなども用意されている。至れり尽くせりだ。

烈火が乗ってシートベルトを締めると、程なくして車が走り出す。

ガタガタと揺れる山道を降っている途中、ウィーという機械音と共に、自動で横の窓のカーテンが閉まり、烈火たちがいる車の後方と運転席がある前方を仕切る壁が出現する。

「うぇ?」

烈火の素っ頓狂な声に気がついたのだろう。

スピーカーから、カーテンと仕切をした理由が述べられる。

『申し訳ありません。陽術規定にのっとり、本部の場所は、一部の術師を除いてお伝えできないのです。前方のガラスから外の景色が判別できてしまいますのでこのような処置をさせていただいております』

カーテンは普通に開けて外が見れそうなものだが、そうできないように術がかけられているらしい。

茂雄に言われて試しにカーテンに触れてみたところ、びくりともしないどころか触れた瞬間、体にビリィと中々強い電流が駆け巡った。

「はぇー、いってー」

ハリウッド映画とかでよくある秘密部隊とかが使ってそうな車だなぁ。なんて思って烈火は目の前に用意されているお菓子に手を出した。

 

どれくらい車に揺られていただろうか。長旅になるというので、トイレ休憩のため途中で車が止まった。

降りたところは高速道路のパーキングエリアらしい。人は全くいない田舎の見たことのないパーキングエリアだった。

後で聞いた話だが、軽めの幻影陽術ヴィジョンがかけられているらしく、烈火は偽物の景色を見ていたと言うことらしい。

たしかに、よくよく見てみると周りに広がる景色や、地面の感触テクスチャには多少の違和感があった。

機密情報の流出を防ぐため車内でスマホは使えないとの説明を受けたため(そもそも、電波が届かない作りになっていた)車内のテレビで映画を見たり、持ってきていた本を読んでいたらいつの間にか俺は眠りに落ちていた。

ずっと窓が閉まっていたので、どれくらい寝ていたかは分からないが目が覚めたら、もうすぐ到着とのことだった。

朝食(だと思う)のおにぎりを食べ終わったところで車が止まる。

 

『到着しましたお疲れ様でした。これより、施錠陽術ロックを外しますので、暫くお待ち下さい』

一分程の運転手の詠唱の後、ガチャン!という重低音が鳴り、元々車の機能としてついている施錠機能と、それに重ねてかけられていた施錠陽術ロックが解かれ、ようやく車のドアが開く。


外に出ると、そこは洞窟の中。のように見えた。だが、天井はかなり上にあり、こんな大きな洞窟は見たことがない。その景色は地下に掘っているか、山の中身をきれいにくり抜いているかのどちらかしかありない。普通に考えたらあり得ない芸当だが、陽術なる力があるから可能なのだろう。

陽術を使えばできないこともなさそうだ。

運転手は俺たちの前に立ち

「まもなく、遠山美代子様並びに、継島美空つぎしまみう様が到着されますのでしばらくお待ちください」

と、説明をして一礼するとさっと車に乗って駐車場から出て行った。

程なくして、烈火たちとは別枠の車が数台細い入り口から入ってきた。

烈火達と同じく、本体の車の周りに護衛車がある感じだ。

くだんの妹を乗せているという車。

先頭護衛車の男性が俺の時と同様、施錠陽術ロックを外す。

ガチャン!

施錠陽術ロックが解かれたということは、まもなく妹との顔合わせだ。

緊張する。かなり緊張する。

まずは、扉がゆっくりと開く。

そして足が見える。細い。女子のものだと言うことが一目でわかる。

ドアの端に手をやって、よっ、と勢いをつけて車から出てきたのはーーー。

意外にも見覚えのある顔だった。

すらりと長く美しい髪を一つに束ねたポニーテール。今時逆に珍しい校則を遵守している長さの制服スカート。胸元にあしらわれている飛び立つ鶴をかたどったエンブレム。

「え・・・美空ってまさか、翔蘭うちの一年生の後輩の・・・美空?」

烈火の驚きの呟きは彼女の耳にも聞こえたようだ。

「え?烈火先輩?」

烈火の妹・・・らしい美空は、我が千葉県立翔蘭高校の一年生であった。つまり、直の後輩。


何故違う学年なのに知っているのかというと、委員会が同じだからなのだが・・・

「え、こんな近くに妹いたの?わざわざ分けて育てた意味ある?なんなら学校で普通に話さてるんですけど?」

思わずツッコミを入れてしまう。でもこれは仕方ないでしょ?だって、こんなすぐのところにいたんじゃ意味ないじゃん。とまくしたてる。

「そういうな烈火。最初は俺たちも離れた位置で育てていたんだ。だがな、気がついたら近くにいてな・・・これも星の導きってやつだな」

「・・・へぇ」

半ば投げやりのように茂雄が説明?を加える。・・・不思議オカルトだなぁ。

 

「お二人とも揃われましたね」

少し離れたところから声が聞こえる。

声のしたところを見てみると、駐車場の奥にそびえる大きな階段の中腹に一人の人間の影が見える。ピシッと決められたスーツの比較的若い男性。それがこの声の主だろう。


男はゆっくりと話した。


「継島烈火様、継島美空様、遠山茂雄様、遠山美代子様。こちらへ、蒼天の間にて陽術のかみ様がお待ちです」


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