第8話 全部!!
「お前ら、この服はなんだ? どこで手に入れた」
腕を胸元でクロスさせて身を縮こめその場を動けずにいるユリにべたべたと触りながらじじいは言った。
「……えっと、俺のは……ビジネススーツで動きやすい戦闘服みたいなもんだな。ダンジョンのレアドロップだ。ユリのやつは、アイドル衣装だ。……俺たちの故郷じゃ容姿の良い人間にだけ授けられる特別な衣装だ」
「びじねすすーつ、あいどる衣装……」
「ところでじいさん、俺たちはあんたの服を買いにきたんだが……。ユリの上着とか色々欲しくて」
「服など勝手に持っていけと言っただろ……」
またアイドルにべたべたとあちこち触り出したじじい。
「きゃ、ちょ部長!!」
「さすがにファンサービスも限界だな。じいさんその衣装はやるから先に代わりの服を選ばせろ」
「ええ!? 部長!? あげちゃうんですか!!」
「ここじゃそれで過ごせないだろ。代わりの服を貰うぞ。いいよなじいさん?」
「構わん全部持っていけ」
部長の発言を受けてユリへの接触コミュニケーションをやめたじじい。
「よし、ユリ全部着て帰るぞ。サティさんも好きなの着てください、今日の俺とユリからのお礼です」
「部長ノリでやってません……?」
「……部長さん……すみませんありがとうございます。ではお言葉に甘えさせてもらいます」
「え、サティさん」
「サイホがすみませんユリさん、店主があの態度です。こちらも好き勝手にやらせてもらいましょう」
「サティさんナイスノリです!! 変なじいさんのノリに負けるなユリ!! せっかくの服屋だ、閉店まで追い込むぞユリ!! ……俺も選ぶか、ねくたいねくたい……」