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第1話 ダンジョン!!

「想いはムゲン、未来的スタート!」



 デビュー曲でシメた圧巻のライブは終わりステージ裏へと戻るアイドルたち。


「ユリ、神近(かみちか)、お疲れ様」


「お疲れ様です部長」

「おっつー部長」


「ユリ今日のライブは」


 突如、現れた白い光がユリと部長を呑み込む。


「えっ!? 部長、ユリ先輩!?」


 白い光はおさまり、ふたりは姿を消した。きょとんとした顔でふたりがいたはずの場所を見つめる神近。またアレが起こったのだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆








「きゃああ、いたた……」


「ここは……」


 白い光から放り投げ出されたユリが尻餅をつく。すたっと、膝立ち着地を決めた部長。



 また飛ばされたんだろうユリのまきこまれ体質で。


 これまでもユリと俺は、何度も異世界に飛ばされている。だからわかる。


 ここは異世界でダンジョンってやつだろう。


 このパターン……。ここに来たらまずやる事は……とりあえず武器を探さないと。


 とにかくアイドルの命を守るのが部長の仕事だろう。


 何度も異世界に飛ばされてきた部長の脳の回転は割と速い。


 おっと、忘れていたがまずはうちの大事なアイドルの紹介だ!


 ユリ。アイドルにふさわしい黒髪ロングの女の子だ、現在は動きやすいようにポニーテールにしているが、解放すると中々イケてるぜ。こいつは容姿がなかなかに良く俺が街で見かけたら速攻でスカウトしたぐらいだ。しかも歌までそこそこ歌えたというまさに俺の最高傑作だろう。身長は163cm、体重は不明。年齢は本人は19だと言っているがまぁ容姿がそこそこに良ければ細かいことはどうでもいいな。イメージカラーはアオ、かわいいが少しクールな面も見受けられるユリの色でありアイドル部を象徴する色だ。まったく、まさにアイドルにふさわしいヤツだな。……ちなみにコイツは曲も作れるみたいだが……まぁ俺や偉い人が手直しをすればそれなりになんとかなる感じだ。


 よし、アイドルの紹介は終わった! だが、そんなことより異世界だ。異世界に来たら情報が命。




「ユリ、いつものやつをたのむ」


「……わかりました、部長」


「見抜き!」


 【見抜き】ユリの覚えたスキルのひとつ。敵や味方の情報その他武具アイテム食べ物ありとあらゆる情報を見抜く、こんなのアリ? ってぐらい便利すぎるスキルだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

部長 レベル1

チカラ 10

ぼうぎょ 10

まりょく 0

【剣人の血】



ユリ レベル1

チカラ 8

ぼうぎょ 5

まりょく 1

【日本人】【サイ菌の歌姫】【女剣士レベル1】


スキル 【見抜き】


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「レベル1になってます……ね」


「やっぱりかぁ。ユリ、慎重に進もう」


「はい部長」


 石床の暗がりをコツコツと足音を立て歩き続けるふたり。暗がりの奥から緑の何かが歩いてくる。通路を進む2人の前にゴブリン、が現れた。


「ゴブリンか。素手ならスライムじゃないだけマシか」


「ユリたのんだ」


「はい! 見抜き!!」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ゴブリン レベル18

チカラ25

ぼうぎょ22

まりょく1


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ゴブリンレベル18……」


「よし、ユリ逃げるぞ」


「はい部長!!」


「うおおおおおお急げえええ、急げユリ!! レッスンで鍛えたアイドルの足見せつけろおおお」


「はい部長おおおお!!」


 レッスンで鍛えたアイドルはそこそこに足が速い。日々なまけている部長とではその差は明らかだ。


「ちょ、ユリ速い! 速いって!」


「うおおおおお! ゴブリンはえええ」


 日々ダンジョンをウォーキングしているゴブリンと部長の差も明らかであった。


 後を追いかけてきたゴブリンが部長に飛びつこうとする。


「部長! これを!」


「ナイスだユリ!!」


「でりゃあああああああ!」


 ユリが手早く丁寧に部長に投げ渡した通路の照明として置かれていた松明。部長は松明を宙から垂直に振り下ろしゴブリンのアタマをかち割った。


 得物を手に持ち【剣人の血】の効果で戦闘力が約6倍に跳ね上がった部長はつよい。


 【剣人の血】剣人と呼ばれた大昔に好き勝手暴れ回って処刑された冒険者の血を受け継ぐ者。部長の強さの秘密。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

部長 レベル4

チカラ 16(96)

ぼうぎょ 16(96)

まりょく 0(0)

【剣人の血】


ユリ レベル4

チカラ 14

ぼうぎょ 8

まりょく 2

【日本人】【サイ菌の歌姫】【女剣士レベル1】


スキル【見抜き】【ヒール】

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ふぅ、助かったユリ」


「いえ部長が無事で良かったです」


「あぁ。う……得物が壊れちまったな」


 部長が振り下ろした松明は木の持ち手部分がパッキリと折れその火は消え役目を終えた。


 部長にアタマをかち割られたゴブリンは光の粒へと還った。コンと何かが石床に落ち音を立てる。


 部長はそれを拾い上げた。


「木の棍棒かラッキーだな。鉄パイプには及ばないが、良いな」


 部長が装備したのはそこそこ丈夫そうな木作りの短いが太い棍棒だ。力任せに振るえばその威力を発揮させることは可能だろう。


「部長これからどうすれば……また飛ばされたんですよね」


「そうだな。とりあえずダンジョンだから上か下を目指すんだが、まぁ上だろう! ユリ賭けに勝とう!」


「はい部長……」


「大丈夫だユリ。幸い得物は手に入った。後ろを離れるなよ」


「はい!!」


 部長を先頭に、その黒い背にぴったりと少し身を縮め後につづくアイドル。


 薄暗い通路を歩くふたりの前にゴブリンが3体仲良く横に並び現れた。


「見抜き!!」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ゴブリンユニット


ゴブA レベル15

ゴブB レベル17

ゴブC レベル17


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「15、17、17!!」


「よし、任せろユリ」


「来い!! 売れない3人組ユニット!!」


 粗悪なナイフを手に持ったゴブリンたちは一斉に部長に飛びかかる。


「だらあああああああ」


 地に両足を着けて放った力任せの棍棒の一撃が空中にいたゴブリン3体を右から順に仲良く押しつぶしブッ飛ばした。


 ゴブリンユニットは光の粒へと還った。


「お見事です部長」


「ふ、アイドル部の部長は伊達じゃないってな」




 その後も部長無双は続いた。レベルをガンガン上げつつ装備を更新していく部長に敵うものはもういない。


 迷いながらも順調にダンジョンの上を目指す部長とユリ。ゆるい上り坂になっている通路を上っていくと。光が差し込んできた。




「地上か?」


 上り坂を抜けると青々と辺り全体を照らし出す明かりと遠目からでもにぎやかな街が見えてきた。


「ユリ勝ちだ!」


「はぁ……はい! 部長なんとかなりましたね。お疲れ様です!」


「はは、そうだな。おつかれユリ。でもまずは……」


「ギルドパターンですね」


「ユリもわかってきたみたいだな。あると良いがな」


「大丈夫です部長! ダンジョンがあるならひゃくぱーギルドもあります! だいたい初見でも入らせてもらえます!」


「ははは、ユリ。あんまりしゃべると喉が乾くぞ。じゃあ探すとするか」


 それから気の弱そうでやさしそうな街の通行人のお兄ちゃんにギルドの場所を聞くと、一瞬で詳しく教えてもらえた。


 部長とユリは、さっそく教えてもらった緑色の117という数字が目印の建物へと向かいそして目的地へとたどり着いた。


 大きめの木の扉を開け建物の中へと入っていき空いていた受付らしき場所へと歩みを進めた部長とユリたち。


「ようこそダイバーギルド117へ。本日は依頼ですか? 買い取りですか? 買い取りであればギルドが直接お持ち込みのアイテムを査定し適正な金額で買い取りいたしますよ」


 受付の20そこそこの綺麗な長い銀髪、落ち着いた声で応対するお姉さんはこちらの格好や様子を見て買い取りだと悟ったのだろう。


「あー、えっと。買い取りだな。ユリとりあえず剣以外の着込んでいたものを全部出そう。後で必要なものだけ譲ってもらおう。出来ますかね?」


 部長無双でドロップしたアイテムを見抜き、装備を更新していった部長とユリ。値の付きそうな装備を無理のない範囲で着込み装備しそれをギルドで売り払う目論見であった。


 ユリはアオくかわいいアイドル衣装の上に鎧や籠手、ネックレス、腰に剣をぶら下げたり。かなり珍妙な格好になっていて誰もこれをアイドルとは思わないであろう。


「はい、可能ですよ。それだけの装備やお荷物大変でしたでしょう。そちらの空いているお席にどこでもお掛けください。査定が済みしだいダイバー様たちをお呼びします。……お飲み物など査定額から差し引いてサービス出来ますがどういたしますか?」


「じゃあ、たのむかユリ。疲れたろ。お願いします事務員……ちがった、受付のお姉さん。飲み物はおまかせでなんでもいいので、喉がカラカラで」


「ふふ、はいではすぐ他の職員がお飲み物をお持ちしますので空いている席でお待ちください。査定するアイテムはこちらの絨毯に置いてください。ではごゆっくり」


 部長とユリは床に敷いてあった大きめの絨毯に装備やアイテムを脱ぎ捨て置いた。すると置かれたアイテムはぶわっと一瞬で絨毯を残しその場から消えていった。


 少し驚いた部長とユリであったがそこは異世界トラベラー、表情にはなるべく出さないよう目と目を合わせ目で何か会話をして、軽くうなずき合っていた。


 広いギルド内の空いていたテーブルに座って一息ついた部長とユリ。




「これはスカウトだな……」


「部長……ここはじっくり行きましょう」


「あぁユリ……俺も成長している。同じ失敗はしないさ」


「はい部長……。でも、なにも異世界でスカウトしなくても……」


「いやユリ。異世界だからこそだ。俺たちの世界なんてまだまだ誰もアイドルをやらないからな。神近ぐらいだろう」


「神近はまぁ変人ですけど……。そこそこじわじわ売れてはきたかなぁなんて」


「まぁな、でもまだまだ風当たりは強い。アイドルなんて底辺も底辺だ! このまま容姿の良い異世界人をスカウトして戦力補強だユリ! 歌はまぁ……ユリがいれば大丈夫だろう!」


「いいんですけどなんか騙しているような……」


「ふっ、ユリも俺も現在進行形で騙されて騙しながらアイドルやっているみたいなもんだしな!」


「はぁ、まぁそうですね!! って、部長はアイドルじゃないですけど」


「ハハハ、ユリ。じゃんじゃん騙していこうぜ!!」


「……はい部長!!」







 これはアイドルをぶち壊すアイドルの物語……のつづき。


 彼女、彼女たちはまだまだ歌い、戦い、アイドルになりつづける。




歌え、戦え、アイドルになれ!! 新曲を引っさげ……まだまだアイドルは



つづく!!

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