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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

仲良し姉妹が更に仲良くなるお話

作者: 秋田リリ

 私と妹は仲が良い。

 幼稚園でも小学校でも中学校でも仲良し姉妹として有名だった。


 仲が良いと言っても、普通の仲良し姉妹と思わないで欲しい。

 休日に手をつないで姉妹仲良く買い物をする程度ではない。


 一緒のベッドで寝て起きて、お風呂に入って、食事のときはお互いにあーんして食べさせたり、休日にお出かけする時にはもちろん手を繋ぐ。

 恋人繋ぎで。


 何より、おはようとおやすみのキスも行ってきますとお帰りなさいのキスをするのだ。

 普通の仲良し姉妹でもこの行為はしないだろう。

 だが、私たちはそこら辺の仲良し姉妹よりも仲が良いのだ。


 そして今日も、妹の楓と行ってきますのキスをする。


「んむっ、お姉ちゃん。そろそろ、んっはぁ、行かないと」


「はぁはぁ、もう少し……」


 楓との行ってきますのキスは格別だ。

 スイーツよりも甘く、お花よりもいい匂いがして、今日も一日頑張ろうと元気を貰える。

 その後、十分に楓の唇を堪能した後、手を握り一緒に登校する。




☆☆☆




「ほんと、いつも仲いいよね~」


「フッフッフー、羨ましかろう」


「仲いいことはいいことだけどさぁ、いつまでも妹にべったりだと嫌われるわよ?」


「楓が私のことを嫌う? ないない。そんなの天と地がひっくり返るくらいありえないよ」


「わぁ凄い自信。だけどさ、楓ちゃんも高校生にあがったじゃない? 部活や委員会とかで一緒にいる時間も少なくなるし、その中で楓ちゃんの事を好きになる子もいると思うけど?」


「楓の為に、楓のことを好きになる子は排除するわ」


「物騒ね。でも、もしかしたら茜のことが嫌いになって彼氏でも作るかもしれないわよ?」


「彼氏? かれし? カレシ? KARESHI?」


「茜? おーい、茜ってば」


「そ、そんなわけない。楓が私以外の人のことを好きになるなんて。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない……」


「……ま、いっか」


 友人の言葉を私の頭の中で反芻する。

 私がいくら楓の事が好きでも楓が私のことを嫌いになってしまう可能性はある。

 そして私ではなく、どこぞの馬の骨と付き合ってしまう可能性も。


 いや、ありえない。

 楓が私のことを嫌いになるなど。絶対にない。

 そう絶対にないのだ。

 と思いたい。


 だが、万が一という可能性もある。

 楓を獲られないためにはどうしたらいいか。


 答えは簡単だ。

 獲られる前に獲ってしまえばいい。


 私と茜は仲良し姉妹。

 そう姉妹なのだ。

 姉妹の関係より先の関係。

 つまりは恋人。

 そう、恋人になればいいのだ。


 思い立ったが吉日、私は今日妹に告白する。




☆☆☆




「楓、ちょっといい?」


「なーにー?」


 私の膝を枕にしてテレビを見ている楓に問いかける。

 楓は私の方に顔を向けて答える。


「えっと、大事な話があるの」


「大事な話?」


 そう、大事な話だ。

 いつまでも仲良し姉妹の関係ではなく、その先。

 楓と恋人になるための大事な話。


 楓は大事な話と言われ、姿勢を正す。


「楓、その、あの……あのね……」


「なーに?」


「私ね、楓のことが……す、す」


「す?」


 楓のことが好き。恋人になって欲しい。

 そう言えばいいのに、言葉がでない。

 とても単純なことなのにできない。

 言おうとすると、喉元で止まってしまうのだ。


 告白するのにこんなにも勇気がいるのか。

 私に勇気があればと考えているとふいに楓とのキスを思い出した。


 行ってきますのキスは元気を貰えるし、なんでもできると思えるほどの勇気も貰えるのだ。

 そう思い、楓の唇に私の唇を軽く重ねる。


 3秒……5秒、いや10秒ほど重ね合わせた。


「楓、あなたのことが好き。これからもずっと一緒にいたい」


「? 私も好きだし、お姉ちゃんとはこれからもずっと一緒にいたいよ」


「そ、そう?」


「うん。突然どうしたの?」


 うん?

 あれ、もしかして伝わってない?

 そもそも日常的に好き好き言い合っているし、今更好きと言われても当然の反応なのかもしれない。

 ちゃんと勇気を出して告白したのに……。


 いや、私の言葉が伝わりにくかったのも問題だ。

 そう思い、私はもう一度楓に告白する。


「楓。私は楓と一生を添い遂げたい。楓と恋人になりたい。仲良し姉妹より先の関係に。私の好きはそういう意味」


 はっきりと恋人になりたいと言葉にする。

 ちゃんと楓に伝わるように。


「楓?」


 楓は目をパチパチさせた後、スマホを取り出した。

 そして。


『楓。私は楓と一生を添い遂げたい。楓と恋人になりたい。仲良し姉妹より先の関係に。私の好きはそういう意味』


 私が楓に告白した言葉、それが録音されていた。


「ちょ、ちょっと楓! 恥ずかしいからやめて!」


「これから毎晩これを聞く。安眠確定」


 楓はフンスっと鼻息を出し、グッと親指を立てる。


「そっ、それより、私の告白に対する返事は!?」


「私もお姉ちゃんとずっと一緒にいたい。私もお姉ちゃんの事が好き!」


「私と恋人になってくれる?」


「うん!」


 この瞬間から、私たち仲良し姉妹は恋人になった。






 高校では、仲良し恋人姉妹として有名になったのだった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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