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小さなもぐら君と大きな竜

作者: 天海彗星

 むかしむかしあるところに、動物達が暮らす豊かな森が有りました。森に棲む動物達は皆誰もが取り柄を持っていました。たとえば鹿には硬く鋭く美しい角が有りました。イタチは風のように素早い脚を持っています。熊は誰よりも力持ちでした。しかし、小さなもぐら君にはこれといって素晴らしいものは持っていませんでした。見た目は毛玉のようで鹿のように美しくありません。イタチのように大地を駆け抜けたりしません。熊の足元にも及ばないほど力が有りません。出来ることといえば、せいぜい、土の中をもそもそと潜って移動するくらいです。

 派手でかっこいいところの無いもぐら君は、森の動物達から馬鹿にされていました。もぐら君は今の自分に満足出来なくて、一生懸命変わる努力をしました。毛並を整えて角を作ろうとしたり、イタチに追いつこうと走ってみたり、熊に相撲を挑んで転ばされたりして、しまいにフクロウの真似をして空を飛ぼうと木に登って落っこちて怪我をしてしまいました。周りはもぐら君の努力を認めるどころか、却って馬鹿にするばかりです。惨めな気持ちになったもぐら君は土の中に籠って、ひっそりとしくしく泣いて過ごす日々が続きました。

 そんなある日のこと、森に木よりも大きな竜がやって来ました。竜は森の木々を踏み倒し、火を吐きながら、果物を食べ漁りました。森の動物達は、突然やって来た迷惑な竜に怒りました。すると、竜は尻尾を振るって動物達を跳ね飛ばします。それならば、と森の動物達は竜に戦いを挑みました。しかし、突き刺そうとした鹿の角は竜の鱗に折れ、素早く迫るイタチは竜の飛行に追い抜かれ、熊は相撲で竜に転がされました。おまけに火を吹いて森がちょっと焦げたので、皆大慌てで逃げていきます。残ったのは小さなもぐら君ただ一匹でした。

 このままでは森は竜のものとなり、動物達は住処を失って、路頭に迷うでしょう。小さなもぐら君は震える自分の身体を無理矢理押さえつけ、空を覆う翼を持つ大きな竜に向かって立ち向かっていきました。大きな竜は小さなもぐら君を見て、油断しました。あんなふわふわの毛玉が硬い鱗の自分に何が出来ると思ったからです。すると、もぐら君はあろうことか竜の目の前で地面に潜ってしまいました。竜は大爆笑です。敵前逃亡したのだと思いこんだ竜の真下で、もぐら君はせっせと穴を掘り続けました。次第に竜の足元は空洞になっていきました。

 竜は驚きました。翼をはためかせる時間も無いまま、一瞬で身体が丸ごと地面の中へ落ちて行ったからです。この穴の横幅が狭いでこぼこので、口は閉じられるし、翼は開けないし、身体も動かせません。竜は自分を出し抜いたもぐら君に敬意を払い、褒め称え、自分の敗北を認めました。もぐら君は竜が出られないままなのは可哀想だと考え、反省した竜を助けてあげました。竜はもぐら君に感謝し、友達になると、彼を背に載せて空を飛びました。それから、森の動物達は誰ももぐら君を馬鹿にすることは無くなったそうですよ。

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