団子屋の鎌足さん
団子の発祥って何?
藤原鎌足が団子屋さんだったら?
そんな、IFストーリーです。
大化の改新。
それは、蘇我氏により支配されていた、天皇家の解放から始まる。
そして、天皇による中央集権国家の形成を目指し、歴史が動き始めた瞬間でもあった。
その改革を成した中心人物、中臣鎌足
なかとみのかまたり
は蘇我氏を打ち滅ぼす。
しかし、それは始まりでしか無かった。
「だんごぉ~ぉだんごぉ。だんごはいらんかぇ~」
藤原京の一角で、醤油の焦げた匂いが立ちこめる。
だが、訝しげに人々は、前を通り過ぎる。
「中臣っち~。売れないな~」
「馬鹿野郎、なかの! おめぇも声出せよ」
「やだよ。俺ってば、皇子だよ」
自分を皇子と呼んだこの男、中大兄皇子
なかのおうえのおうじ
と言い、後の天智天皇となる男である。
なぜそんな男が、藤原京の一角で団子を焼いているか。
それは、親友である鎌足の思い付きによるものだった。
「そもそもな。これは、俺が唐で学んだ最新の食い物なんだ。売れないはずがねぇんだよ」
「中臣ッち。最新だからって、民衆に受け入れられるのか~」
「ばっきゃろ~。お前が声出さねぇから、売れねぇんだ。それにせっかく蘇我を倒したんだぜ。あいつ等だけ、いつもいつも、上手い物を食いやがって。やっと俺達の時代なんだぜ。俺達で、ニューウェーブを作り出すんだよ!」
「でもよ~、中臣ッち~」
「中臣じゃねぇ。もう藤原だ! 俺の事は、藤原さんって呼べよな」
キラッと、歯を輝かせて、ポーズを決める鎌足さん。
藤原氏の始祖として名高い、鎌足さん。
実は蘇我氏を倒して、調子に乗った鎌足さんが、恐喝気味に中大兄皇子にご褒美を貰ったとか。
そんなこんながありつつも、超仲の良い二人が、食糧事情の改善の意図もあった。
クーデーターが成功したは良いものの、やらなくてならない事は、山の様にある。
全ての土地と人民は、天皇に帰属する様に、公地公民の制定を急がねばならない。
同時に、地方行政の再編も行わなければならない。
戸籍管理から始まり、公の農地を民に貸し与える、班田収授法を定めよう。
それ以外にも、税制改正も急がねば。
しかし、結局は民を元気にだよねって所で、鎌足さんは団子屋を始めた訳である。
「にしても、この白い塊。旨いよな~」
「はぁ? あったりめぇだろう。この鎌足さんの自信作だぜ!」
「鎌足だけに、塊作ったのか。ファハハハハハ」
「あぁ? てめぇ。喧嘩売ってんのか?」
「良いじゃないかよ、中臣っち。鎌足団子だろ。ヒィ~ヒヒッヒ。腹がよじれるぅ」
因みに、この団子という料理。
遣唐使が持ち帰ったとするインド料理が由来とされ、名前は歓喜天に供えることに因んでいるらしい。
本当に、中臣鎌足が作って売っていたかは、謎である。
これは、歴史の中に埋もれた、IFストーリー。
もしかしたらの物語である。