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第二十三話:『決着、そして・・・』2

あの決闘の後、色々あって大変だった。


まずは決闘の決着で両者が誓約書を交わし、これで正式に私の結婚は無かったことになった。


次に、父さんが西の地を救いたいという想いを汲んで、当主と共同出資の会社を設立することになった。

この会社で各地の鉱山を買収し、運営、採掘資源の輸送まで一挙に管理する大規模になるものだという。


父さんはしばらく西の地でこの会社の陣頭指揮をとるらしい、しばらく家に帰れそうにないと嘆いていた。


母さんも輸送隊が被害を受けないように、護衛に携わる人員の確保と教練を一緒に行うらしい。

アメリさんは銃を使うので剣術なんていらない、と言っていたが、母さんが銃さばきを披露すると腰を抜かしていた。


そんなこんなで、西の地はこれから平和に、良くなっていくことだろう、安定すればこの土地はとてもいい土地になっていく、そう未来に期待を込めておこう。


そして私達はと言うと・・・


「わぁ、アルマ!ここはすごいですね、何でもありますよ!」


あの激しい戦いの後にも関わらず、夕霧と買い物に来ていた。


西の都に来てすぐにあんな事が起きたので、ろくに街を見て回ることもできなかったから、今になってあちこち見て回っているのである。


「ほんと、港街だけあって色んなものが入ってくるのね~、交易都市を思い出しちゃうな。」


大きな港がある街だけあって、船便で様々なものや人が行き来している、商店の品揃えを見るだけでもちょっとした世界旅行だ。

先日の戦いで夕霧の服が修繕できないくらいボロボロになったので、新しい服を買いに来たのが目的である。


ちなみに今は私のシャツを代わりに貸している、シャツに袴という格好だが普段と違う姿で割と新鮮である。


「どう?夕霧、いい服見つかった?」

「あんまり、良さげな服は見つかりませんね・・・。」


お店に色んな服が並んでいて見ているだけでも楽しいが、冒険に不向きなものだったりなかなか納得がいくものがない。


「うーん、どれも着心地とかはいいのですが、旅向けではないのが少し・・・。」

「確かにねぇ、ここにあるのはどれも富裕層向けな感じがする。」


この街自体、金持ちが多いように見えるし、旅に適したような服は取り扱ってないのかもしれない。


「ん・・・?」

「どうしたの?何か見つけた?」


夕霧が見ているのはどうやら、軍の払い下げ品を取り扱ってるお店のようだ。

時に軍隊というのは装備にすごくお金がかかるもので、装備を新しくした時に古くなったものは売りに出されたりするのだ。


「これ、試着しても?」


どうやら払い下げの軍服に目が行ったようだ、たしかに荒っぽい事を想定して考えてある軍服は旅に使うには最適だろう。

問題としては元々これを着ていた人に合わせて作られているので、サイズが合うかどうかだが・・・。


夕霧は店の奥に試着に行く、幸いなことにあまり売れていないようでサイズは選びたい放題のようだ。


「どうですか?アルマ、似合ってますか?」


店の奥から出てきたのはかっちりとした軍服に身を包んだ夕霧だった。洋装に身を包んだ彼女は、その華奢な体がラインにそってくっきりと現れる。


「おお~、すごい、似合ってる!」

「あはは、ありがとうございます。これは士官用らしいのですが、これしか合うものがなくて。」


夕霧が着ているものは確かに兵士用に比べ、装飾が多い。どこの軍服なのかはわからないが、士官用の服としては標準的だろう。


本当は夕霧が住んでいた極東の服も置いてないか期待しての買い物だったが、期待はずれで置いてなかったのでしばらくはこの洋装で過ごしてもらうしかなさそうだ。


「後で不要な装飾品は外してしまいましょう。これ、いただきます。」


元の服に着替え、宿への帰路につく、魔石で動く車に乗れば宿まではあっという間だ。


「ねぇ、夕霧?」

「ん?どうしましたアルマ?」


車に乗って、ガタゴトと揺られている道中、しばらく無言だったがアルマが口を開く。


「今回の件、私が突っ走っちゃって、夕霧には迷惑かけちゃったなって、もう一度言っておきたくて。」

「あぁ、いいんですよ。私は気にしてませんし、アルマは大義名分のためにしようとしてたことですから、むしろ立派な行いだったと思いますよ。」


「でも、ずっとそばにいてくれてる夕霧を蔑ろにしちゃって、少し後悔してるの、だから・・・、迷惑かけてごめんなさい。」

「ふふ、アルマはいい子ですね、本当に。自分が正しいと思ってやったことなんですから、気にしなくていいんですよ。」


夕霧は優しく微笑みかけ、そっと頭を撫でる、夕霧の掌の感触が優しさとなって私に伝わってくる。


「でも、そうですね・・・、私を蔑ろにしたと思っているなら、今後はちゃんと相談してくださいね?私は相棒なんですから、置き去りは嫌ですから。」

「うん、これからはちゃんと相談するね・・・。」


お互いに話し合い、後悔の念も消え去って笑い合う、そうしてる間に宿へ到着する。


「ただいま~。」

「おかえりなさ~いっ!」


宿の部屋に戻ると、アイシャちゃんが飛び込んでくる、アメリさんやホリィ姉も私達を出迎えてくれた。


「おかえり、どんな服を買ったんだ?・・・って軍服じゃんか、もっといい服なかったのか?」

「あはは、これが一番しっくり来ましたので・・・。」


「えぇ?夕霧払い下げの軍服買ったの?もうちょっとおしゃれすればいいのに。」


買ってきた服を見てワイワイと賑やかにはしゃぐ、思えば西の地の旅路の始めは、ホリィ姉との再開に始まって、アメリさんやアイシャちゃんなどが加わり、大所帯での賑やかな旅だったなと振り返る。


色々な問題があったけど西の地の旅はなんだかんだ楽しかったし、危機に陥った事もあったけど、無事に切り抜けられてよかったと思うこともある。


新しい武器、銃を手に入れたり、新しいものを見るのはやっぱり冒険の醍醐味だ、魔石を使った機械文化、銃の威力、どれも旅をしなければ見れないものでもあった。


そして新しい出会い、自警団のアメリさんや獣人のアイシャちゃん、この旅で出会った素敵な仲間だ、こういう出会いも旅でしかえられないものだ。


西の都では両親と再会して、結婚に決闘と、かなり忙しなかった。

夕霧とすれ違いが起きたけど、雨降って地固まると言った感じで、よりお互いの理解が深まった気がする。


「そういえば、今夜は食事会に呼ばれてるのよね皆?」

「あぁそうだったな、堅苦しいのは嫌いだが、皆出るなら私も出るさ、商品も無事に売り込めたしな!」


「食事会?誰と?」

「あら?アルマは聞いてないの?合弁会社設立の記念の食事会よ、お騒がせしたお詫びも兼ねてぜひってね。」


「そうなんだ、ずっと出かけてたから聞いてなかったかも。」

「なら、私達も参加しないとですね。」


「わーい、ごはんたのしみ!」

「いい機会だし、アルマのご両親にもちゃんとご挨拶しなきゃね。」


皆それぞれの部屋に用意をしに散っていく、さっきまでの喧騒はどこに、静まり返って夕霧と二人になる。


「ふふ、じゃあ私達も準備しないとね。」

「でもそんな宴会に出られる服装持ってませんし、どうしますか?」


「それならまた買いに行きましょっ、お金ならまだあるんだし、服の1着2着くらいね!」

「また市場に戻るんですか?ふふ、まったく。」


身支度を整えて、再び部屋を後にする。計画性もないいきあたりばったりな行動もたまにはいいだろう。


これからもまだまだ旅は続くのだから。


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