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第二十話:『明日が平和になるのなら』1

「やっと到着ね、ここが西の地で一番大きな街、西の都よ!」

「わぁ、ここがそうなのね!」


一行は西の都にたどり着く、西の地で最大なだけあり、活気が溢れている。

たくさんの人が行き交い、たくさんの物が行き交う。まさに商業都市といった風景だ。


なぜこの都市だけが大きな都市になったのか、その答えはすぐに分かった、港だ。


人も物も輸送するのには限度がある、私が乗っているこの馬車でも数人乗れば満杯になるように、陸路の輸送は数を用意しなければ、大量の物資を運ぶのは難しい。


だが船はそれ1隻で、隊商で運べる物資の輸送量を遥かに超える量を一度で運べてしまう、海運とはそれほどまでに素晴らしいものだ、とまあ、父さんの受け売りだったのだが。


実際の所、私は父さんの仕事についてはあまり良く知らない。社交界に連れて行かれることはあれど、仕事を直に感じることはなかったからだ。


まぁ父さんの事だから、わざとそういうところを見せないようにしていたんだろうけど。

見栄っ張りだし過保護で甘やかしすぎってよく母さんがどついてたっけ。


そんなこんな昔の思い出を思い出しながら宿屋に到着する。

ホリィ姉は到着早々、そのまま西の都の聖堂に顔を出すらしい。なら私達はアメリさんの用事に付き合うとしよう。


この西の地を治めているという貴族に銃の図面を売り込むらしい、この新銃の特許販売が自警団の運用資金になるというのだから、必死なのだ。


「そういえば、ここを治めている領主ってどんな人なの?」

「ん?そうだねえ、元々は別の土地の領主だったそうだが、過去に色々あってこの土地に移り住んだそうだ。」


「そうなんだ、なんでまた西の地なんてところに?」

「むかーしにどうやら没落したそうだ。まぁ今は貴族も、商人の台頭で権力を無くしつつあるようだけど・・・って、この話は秘密にしておいてくれよ?」


アメリさんは慌てて私達に取り繕うが、あんまり相手を敬っては無いようで苦笑してしまう。


「ま、試作品はお前さんが使ってるんだから、しっかりアピールしておくれよ?」

「もちろん、実演だってお手の物よ!」


そうこう話しているうちに貴族様のお屋敷に到着する、少しシンプルに見えるお屋敷は貴族としての体裁を一応保っていると言わんばかりだ、貴族のお屋敷にしてはかなりみすぼらしく見える。


アメリさんが門を叩いてやり取りしているのを遠巻きに眺める。

ふと、横を見ると夕霧の横顔が見える。凛々しい顔つきながら、その目は穏やかに前を見てぼーっとしているようにも見える。


視線に気づいたのか、夕霧がこっちを向いて微笑む。その天使のような穏やかな笑顔に少しドキッとして視線を外してしまう。


「だーめだ、出かけていないらしい、タイミング悪かったな・・・。」

「えっ?出かけてるの?」


アメリさんが戻ってきて慌てて顔を向ける、どうやら所有している鉱山の巡視に出かけてるそうで、数日は帰ってこないそうだ。


「・・・それはタイミングがちょうど悪かったわね。」

「しゃーない、しばらく滞在して帰ってくるのを待つよ。」


となると、本日の予定は何もなくなってしまう。それならこの街の観光もいいかもしれない。


「じゃあ、今日は観光にしよう!港を見てみたい!」

「港?観光地じゃないんだからビーチなんて無いぞ。」


大規模な港は今まで見たことがなかったので、一度でも船を間近に見てみたかったのだ。


巨大な乗り物というのはロマンであり、人類の技術の結晶でもある。かつて勇者も人助けをして王から船を下賜され大海原に乗り出したという歴史もあるくらい、海の向こうというのは人類が挑むべき場所だった。


そんな人類進歩の乗り物である船を見るのは密かな夢であり、西の都でそれが見れるならまたとないチャンスなのだ。


「というわけで、港行きましょ港、何もなくてもいいの。私は船がみたいの!」

「はぁ、船なんか見て何が面白いんだか・・・、歩くと時間かかるしだるいし、アレ乗るか。」


アメリさんはそういうと、大通りまで案内する。大通りには大きな道路があり、中央にはよくわからない溝が2つ走って伸びていた。


しばらくきょろきょろしたと思えば、アメリさんは何かに気づき手を挙げる。

その先に何があるのかと見てみれば、何やらよくわからない馬車のようなものが走って向かってくるではないか!


溝に沿うようにして走ってくるそれは、後ろは馬車の乗り場のようになっているが、引っ張っているのは馬車じゃない、なんだかよくわからないものが車輪を転がして走っている。


「どちらまで?」

「港まで、3人。」


アメリさんに招かれ後ろの席に座る、座るのを見て走り出すが初めての感覚にびっくりしてしまう。


「あ、アメリさんこれは・・・?」

「ん?ああそうか、車は初めてなのか。」


「車?これ車っていうんです?」

「そ、決まった道しか走れないが馬車より早いし魔石機関だからコストも安い、いい乗り物さ。」


この奇妙な乗り物は車と言うらしい、この西の地に来てからよく見かける魔石機関だが、乗り物に使われてるのは初めてかもしれない。


道路中央にある溝は車輪が通るための溝だったようだ、この溝に沿って車は走っていく、自動で走るトロッコのようで面白い。


「しかしすごいですねアルマ、こんな乗り物とか初めてみました。」

「そうね~、こんな乗り物他の街にあるかどうか、この魔石機関も広まれば世界が変わりそう。」


「そうですねぇ、西の地までの間に色んなものを見てきましたが、ここまですごい技術があるのは見たことがなかったですよ。」

「そうなんだ、夕霧が見てきたもの、いつか私も見れるかな。」


「旅を続けていれば、きっと見れますよ。まだまだ旅は始まったばかりなんですから。」

「ふふっ、そうよね!まだ交易都市を出てまっすぐ西に行っただけだしね!」


車に乗って揺られること数分、潮風の匂いを感じながら港に到着する。

これほどまでに大きな港は今まで見たことがなく、それだけで興奮物だが、それより大量にある帆船の数だ。


大小様々な帆船が埠頭を埋め尽くしていて、巨木のように高々とマストがそびえ立っている。

とっても壮観な光景に感動を隠しきれない。大はしゃぎしたくなるのをぐっとこらえて近くに寄ってみる。


近寄れば近寄るほどその存在感を増していく、こんな巨大なものが浮いていて、かつ水平線の向こうまで行けるというのだから人類というものはすごい。


ふと、船に積み下ろししてる貨物に目が留まる、それはとても見覚えがあるマークをしていた。

周囲を見るとどれも全部同じマークがある、つまりこれは・・・。


「これ、全部うちの紋章だ!?」

「ええっ、そうなんですか!?」


この紋章は父さんが貴族の爵位を手に入れた時に自分で決めたらしい、商いする時もこの紋章をそのまま使っているのですぐわかる、よくみたら船にも同じ紋章の入った旗がたなびいているではないか。


父さん、私が知らないだけで船を持っていたのは知らなかった、商売人だから持っててもおかしくなかったが娘に秘密にするほどだったのか・・・?


父さんとの思い出を思い出してるうちに、声まで聞こえてくる気がする・・・。まぁ自分の父親なんだから声も姿も思い出せて当然なのだが・・・。

もしこの場に父さんがいたら、真っ先に抱きついてくるんだろうな、私が旅に出たんだし多分寂しがってそうだ。


「会いたかったぞぉアルマよぉ~~~~~~~~~~~!!!!!」


そうそう、こんな感じに感動のセリフを言って力いっぱい抱きしめてくるんだろうなぁ・・・。

しかしやけに生々しいなぁ、私そんなお父さんっ子だったっけ・・・?


「って、父さん!?なんでここにいるのっ!?」

「おお愛しの我が娘よ、それはこっちのセリフだよ、どうしてこんな汗臭い場所にいるのだ?もっとこう、きらびやかなところを旅してるのかと思ったのに。」


「そりゃ冒険してるんだし、行きたいところに行くもんさ、久しぶりだねアルマ、それに夕霧さんよ。」

「母さんも!?」


思わぬ両親との再開にびっくりした、偶然とは言え二人が商売のためにこの地に来ていたとは思いもしなかった。


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