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第十四話:『勇者を駆逐する者』1

「で、銃を作るって言っても、私は知識ないわよ?」

「私も、銃器のことはさっぱりですね・・・。」


「あぁ大丈夫大丈夫、作るのはあたしだし、君らには意見聞きたいだけだからさぁ。とりあえず要望聞かせてよ。」


そう言われてもすぐには思い浮かばないので、ひとまず冒険のシチュエーションから想像してみることにする。


これから冒険を続けるにあたって、暑いところにも行けば、ここに来るまでに通ってきた山脈のように寒いところもあるだろう、そう言う場所でも問題なく動作する必要はあるだろう。


「うんうん、確かにその辺は基本だ、どんな武器でもあらゆる環境に耐えられないと意味ないからな。他にはなにか思いつくことはあるかい?」

「うーん・・・、巨大なイノシシと戦った時もそうだけど、剣とかで歯が立たない相手にも通用する火力はほしいよね。」


「ふむふむ、なるほど、火力ね・・・。」

「後は、盗賊のように多数で襲ってくるような相手にも対抗できるといいでしょうか?」


とまぁこんな感じに議論を続け数日後、アメリさんが試作品を持って私達が借りている客間を訪れたのはまだ日が昇る直前の時だった。


「ほらほら起きた!!試作品がついに完成したぞぉ!!!」

「ま、まだねむい・・・。」


「起きろ起きろ、世紀の発明だぞ!一番最初に見られるお前さんたちは幸運だぞ!」


シーツを引っ剥がされ無理やり起こされる、最近はもう一緒にいることが多くなったアイシャちゃんもまとめて起こされる。


「ふふふ、まだ試作品だから不格好なのは許せよ、じゃーん!こいつだ!」


アメリさんが取り出したそれは本当に不格好なものだった、ピストルのグリップになにやら銃身がいっぱいついたそれはかなりシュールだ。


「ふっふっふ、火力と装弾数の両立でかなり頭を悩ませたが、これなら一挙に解決できるぞ!」


実演してくれるというので、まだ目覚めてない脳みそでぼーっとしながらその様子を見守る。

どうやらくっついてる銃身一つ一つに弾を込めているようだ。


「・・・結構装填に時間かかりますねぇ。」

「ま、まぁ銃身全部に入れると大変だが、予め装填しておけばいいんだよ!」


しばらくしてようやく全部の銃身に装填し終わり、銃を構えて引き金を引く。

するとどうだろうか、壁は一瞬で穴だらけの蜂の巣になった、恐ろしいほどに火力は高そうだ。


「どう!これなら冒険にも使える銃でしょ!」

「うーん、たしかに火力はあるけど・・・だめね。」


「ええっ、駄目なの!?」


アメリはダメ出しを受け、膝を落として落胆した。徹夜して制作していたようでその気の落ちようは凄まじいものがある。


「威力はあるのは見て分かるけど、複数の相手には当たらないわよねこれ・・・。」

「で、でも一度に何十発と撃てるから、複数の相手にも当たる・・・かもしれないし!」


「でも一発撃ったらまた何十発分も装填しないとだし、これなら従来のピストルのほうが使い勝手いいと思うかなぁ、それに・・・これすごく重たいし取り回しよくないよ。」


落胆して床に転がった試作品を手に取る。銃身がいくつも束ねてあるためとにかくすごく重たい、それにとても大きいので剣みたいに腰にぶら下げると、多分重くて体が引っ張られるだろう。


「そっかぁ・・・いけると思ったんだけどなぁ・・・。」

「そもそも、どうして冒険向けの銃など作り始めたのですか?この前見せてもらったあの銃でも、性能十分だと思いますが・・・。」


「・・・私がどうして自警団に出資できてると思う?それは銃の新作を作っては売ってを繰り返しているからだよ、それで莫大な資金を稼いでいるのさ。」

「銃を・・・?」


「そうさ、銃は軍に浸透したとはいえ、まだまだ市場で見れば開拓地なんだ、この西の地みたいにね。」

「じゃあアドバイス求めてるのはお金儲けのため・・・?」


「それだけじゃないぞ、冒険者の装備は旧態然とした剣と弓だそうじゃないか、だが冒険者が持てるような安価で使いやすい銃ができれば、彼らに起きる悲劇も少なくなろうよ。」


「確かに銃は貴族は持ってたりするけど、まだまだ普通の人たちが持ってるかと言うと全然ね。」

「だろう?あたしはこの銃という素晴らしい武器をこの世に広めたいのさ!」


アメリは両手を広げて興奮気味にそう話す、まだ日が昇る前なのにとても元気だな、と苦笑いしておくことにした。


「ふふふ、それにあたしにはもう一つ野望があるんだ、今こうして銃を作っているのもその野望の一環だと思ってもらっても構わない。」


「野望・・・?銃を普及させる以外になにかあるの?」

「それはね・・・。」


アメリはそう言うと少し無言になって、アルマが手にしていた試作品を受け取り、口を開く。


「それは、勇者を殺すことだよ。」


今まで眠たげにして話を聞いていたが、その話を聞いて驚き、多少目が覚める。

彼女はその反応待ってましたと言わんばかりに、得意げな顔をしていた。そして丁度その時、太陽が地平線から昇ってきて眩しいほどの朝陽が部屋の窓から差し込んでくる。


「勇者を・・・?どういうこと?」


勇者は知っての通りもう遠くおとぎ話の存在だ、今でも世界を救ったと語り継がれるくらいには知られる存在であり、憧れの対象ともされたりもする。


それを殺すというのは一体どういう意味だろうか、困惑して思案していると、アメリは笑いながら語り始める。


「殺すっていうのは何もそのままの意味じゃないさ、彼の、彼らの神話を打ち砕くっていうことだよ。」


神話を打ち砕くとはどういうことだろうか、やっぱりまだ寝起きで思考回路が鈍っているのかもしれない、意味がさっぱりわからなかった。


「わからないかい?銃が生まれてかなりの時間が立つが、まだまだこの世界は剣や魔法と言った旧時代的なものがまだまだ使われていることに、あたしは憤りを感じるんだ。」


そう言うと、アメリは窓辺に立ち、銃を構え引き金を引く、弾丸はもう撃ち尽くしているのでガチっという金属音だけが聞こえてくる。


「・・・最初は勇者の伝説が強すぎて、誰も銃に見向きもしなかったんだ。私が作った銃も、子供の玩具だって言って何回も門前払いされたさ。」


眩しい朝陽を見つめながらアメリはぽつぽつと語り始める、眠たげにあくびをして、目をこすっているが、その悲しげな顔の目尻の涙はあくびしたからなのか感情から来たものなのかわからない。


「勇者の伝説に憧れて、皆剣や弓や杖を持ちたがる、銃があればどんな相手も倒せるというのに、誰も有用性に見向きもしない、終わった古い話にいつまでもロマンを求め続ける、こんな馬鹿な話があるか?」


最初はさみしげに語っていたアメリだったが、どんどんとその感情が怒りに変わっていくのがあからさまに分かる、過去に何があったのかは知らないが、銃に相当な思い入れがあるようでそれが伝わってくる。


「だからあたしは誓ったのさ、この世から勇者を駆逐してやるってね。古き良き剣や魔法の時代をこの手で終わらせて、銃と火薬の世界を実現させてやるのさ!」


それで取り憑かれたように銃を設計しては売りさばいていたという、彼女の猛烈とも言えるアピールは多分銃を広める一助にはなっただろう。現に軍の装備から剣や弓と言ったものは消えているのだから。


「でもまだまだ足りない、そう、軍とか貴族は資金豊富で銃を買ってくれる、だが民間はどうだ?ここでまた勇者があたしの前に立ちはだかるのさ、銃の弾丸は盾を貫き剣をへし折れるのにな。」


アメリは興奮した様子でアルマの肩を掴み、顔を寄せて真っ青な目の隈を見せながら笑顔で瞳を見つめてくる。


「だから、私は勇者を駆逐するために、新しい勇者がほしいんだ、そしてそれは君だと私は思ってる。何のめぐり合わせか君は私のもとに来たのだから。」


それだけ言うと彼女は離れ、ベッドに倒れ込む。


「ま、とりあえずこの試作品は失敗だ。次はもっと良いものをつくるよ、おやすみ・・・。」


言い終わると即座に寝息を立てて寝てしまった、彼女が寝て、まるで嵐が去ったように部屋が静かになり、部屋には朝を伝える小鳥の鳴き声が聞こえてくるだけだった。

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