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第十一話:『盗賊との戦い』2

「・・・ここが終着点というわけね。」


私達の乗った馬車は盗賊に追い込まれ山の谷間に入った後、待ち伏せだったり道を塞がれていたりで誘導され、たどり着いたのが落石で通れない道、つまり行き止まりであった。


「さて、ここからが本番よ、ミィーシャが助けを連れてくるまで何とか時間を稼がなきゃね。」


後ろから悠々と盗賊が追いついてくる、予定通りといった感じの余裕の表情が伺える。

私達は馬車から降りて武器を構え有事に備える、ホリィ姉が一応交渉してみるそうだがうまくは行かないだろう。


「こいつぁ驚いた、女ばかりが3人か。」

「私達はしがない教会の巡礼者にございます。我々は聖女様の教えにより、悪には一切の容赦はするべからずとの教えを習っております。しかし我らは数にも劣り戦うには非力、金銀財宝の類は持ち合わせておりませんが、数少ない食料ならございます。ここはそれで我らを見逃してはいただけませんでしょうか。」


「長い講釈たれやがって、教会だか何だか知らねぇが、捕まえて身代金要求したほうがよっぽど金にならぁ!」

「で、でもさすがに教会に手を出すのはまずいんじゃないか・・・?手を出したなんて知れ渡ったらどの村も敵に回っちまうぞ。」


「それが何だって言うんだ、むしろ俺たちが名を挙げる絶好のチャンスじゃないか、お前らこいつらを生け捕りにするぞ!」


盗賊たちが堰を切ったようになだれ込んでくる、こうなることは十中八九予想できていたので迎え撃つ準備はしっかりとしてある。


「耳をふさいで!」


残り2つのゴブリンの擲弾を投げつける、密かに導火線に着火したタイミングも完璧、起爆すると、ものすごい音と火薬が燃焼した白煙が周囲にもうもうと広がり煙幕を作る。


「作戦うまくいったわね、さぁやっちゃいましょう!」


ホリィ姉は意気揚々と屋根に積んである飼葉に手を突っ込む、今度は何が出てくるのだろうか・・・。

やがて出てきたのは自分の背丈より大きな剣だ、ホリィ姉がよく好んで使ってた得物なのは覚えている。


「私は弓で援護します、二人ともお気をつけて。」


敵陣は擲弾のおかげで大混乱になっていた、爆音で気絶する者や白煙の煙幕で同士討ちを行う者、統率が取れておらず混乱は回復できていない。


切り込むなら今が絶好のチャンスだ、風が吹いているので煙幕もすぐに晴れてしまうだろう、その前に少しでも数を減らさねばならない。


煙の中に突っ込むと右往左往している盗賊を見つける、まるでやってくださいと言わんばかりだ。

私はレイピアを構え、相手の腕や膝を狙い突き刺し、悲痛な声を上げて倒れ伏す。


命を取らずに無力化するにはこうするしか無いと自分で考えた結果だ。独善的かもしれないが、いくら悪人だろうと私には人を殺すことはできない、だから相手をできるだけ無力化するように立ち回るのだ。


煙もかなり晴れてきて相手の顔が見えるくらいには煙が薄くなる、こうなると混乱も自然と収まり敵意をこちらに明確に向けてくる。優位が無くなって戦いはこれからが正念場と言ったところだ。


私のレイピアでの戦い方は母に教えてもらった構えだ、その構えとはただまっすぐ相手に剣を突き付けるだけという単純なものだ。


相手にまっすぐ向けられた剣というのは意外と攻めにくいもので、まっすぐ突っ込めばそのまま串刺しになってしまう、だから対峙した相手は回り込むか剣を払いのけることを強要される。


攻撃に転じる時も、相手に突きつけてる構えなので、そのまま踏み込めば予備動作無く相手を攻撃できるので防御はとても難しいものになる、とても優れたスタイルである。


「えぇぃたった3人だぞ!?なんでここまで・・・っ!?」

「相手が悪すぎたってことよ・・・!そこら辺のボンクラとは一緒にしないでもらいたいわね!」


ホリィ姉は大剣を振り回し盗賊を薙ぎ払い吹き飛ばしている、あれはもう剣というより鈍器の類ではなかろうか。

まるで小石を蹴飛ばすかのように、剣を振り回すと面白いように吹っ飛んでいく、すごい怪力にみえる・・・。


「囲め囲め!一斉に飛びかかればいくら奴でも・・・!」


盗賊たちは瞬く間にホリィ姉を取り囲み、一斉に襲おうと飛びかかる、いくら大剣を振り回そうとも全員を薙ぎ払うのは不可能だ。


「闘気・・・開放!」


絶体絶命かと思われたその時、ホリィ姉からオーラが出て大きな衝撃波が起こる。これは闘気だ。

人間の体にはマナと呼ばれるエネルギーが別に蓄積している、魔法使いはこれを使い魔法を使い、剣士はこれを利用して闘気を扱う。


闘気の爆発は体内のマナをすべて吐き出すものであり、剣士にとって闘気を使用するのは切り札と言っても過言ではない、事実としてこの爆発はとても凄まじく、囲んでいた盗賊たちも全員ふっ飛んでしまっていた。


「さすがホリィ姉、やることが無茶苦茶ね・・・。」


私は闘気は扱えないし、地味に一人一人倒していくだけだ、盗賊たちは隙だらけの素人殺法なので対処がしやすく、多数と対峙することになっても夕霧が弓で援護してくれるおかげで何とか相手取ることができている。


だが盗賊たちは次から次へと襲いかかってきてきりがない。


「もうっ、こいつら何人居るのよ・・・っ!」

「さすがに多勢に無勢ですか・・・、きりがありませんね・・・っ。」


いくら私達が強くとも、盗賊たちは数で優勢だ。倒しても倒しても次から次へと新しい敵と対峙することになる。

これだけずっと戦い続けていては疲労もするし集中力も落ちてくる、そうなるととても危険だ。


「このままじゃ身が持たない・・・っ。」


いつになったら終わるのか、長い長い時間剣を交えてる錯覚を覚える。盗賊の人数が半端なく多いからそう感じるだけなのかもしれないが、そろそろ腕や脚も限界に近くなって重くなって動かなくなってきた。


「・・・うぐっ!」


そしてついにその時がきた、盗賊のナイフが腕に深々と突き刺さっているのがわかる。

痛みで剣を持っていられず剣を落としてしまう、やはり人数差相手にはどうしようもできなかったのだろうか、今まで感じたことのない激痛と疲労感で膝をついてしまう。


「アルマ・・・ッ!」


夕霧が負傷した私を見て駆け寄ってくる、それを見てホリィ姉も援護するように立ち回り始めた。


「アルマ、立てますか・・・?」

「ぐぅ・・・、うぅ・・・。」


痛みで呻くことしかできない私を夕霧が庇う、こうしている間にも盗賊は次から次へと押し寄せてくる。

刺された方の腕は感覚がない、それにズキズキと鈍い痛みもあるし血も流れ続けている。


だがこんなところに居ては二人の邪魔になるだけだ、離れようと立ち上がりフラフラとした足取りで歩き始める、だがそんな隙だらけの私に彼らは容赦などなかった。


「動くな!仲間の命が惜しかったら武器を捨てろ!」

「しまった・・・!」


盗賊の一人に捕まり羽交い締めにされる、本来ならこんな捕まるヘマはしないが疲労と負傷で思ったより力が入らない・・・。


「わ、私のことはいいから・・・、従っちゃダメ・・・!」

「うるせぇ!手こずらせやがって!」


ナイフの柄で頭を殴られ、意識が朦朧として視界がぼやける、殴られてどこか切れたのか血も流れてきた。


「うぐっ・・・!」

「これ以上は命を取るぞ!わかったら武器を捨てろ!」


「・・・どうしますか?」

「これまでのようね、武器を下ろすしかなさそうかしら・・・。」


二人は頷いて武器を下ろす、本当にこれで終わりなのだろうか?

私のせいで二人の足を引っ張ったかと思うと後悔しか出てこなかった、何よりこんなことで私の冒険が終わりを告げようとしていることが一番悔しかった。


「二人とも・・・ごめん・・・。」


今はこの言葉を言うだけで精一杯だった。


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