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91:運命の日(n)◇

────これは、現在いまの価値を問う旅路。


ニクスロット王国での戦いを終えたレイ。

そんな彼の前に立ちはだかるのは幼い老練な刃。

永遠に思える今日の中で、絶対に負けられない戦いが始まる。

最後に彼らが選ぶ明日の姿は。


第3章 《廻転遡上時空》 開幕。

挿絵(By みてみん)


 俺はニクスロット王国での出来事の報告のため、アーツと共に王城へ向かっていた。俺は正装で行くべきじゃないかと言ったが、それは不要だと言われ官庁街を歩いている。


しかし、どう考えてもここは王城の門に向かう道ではない。アーツに限って道を間違えるなんてことはないだろう。


 そのまま入っていったのは遊撃隊の本部。入口の男にペンダントを見せて中に入ると、そのまま地下にある通路へと歩いていく。


「ここは?」


「王政府機関の主要な施設は全て王城に繋がる通路を持っているのさ。俺達は一応遊撃隊の名前があるからここを使うんだよ」


 非常時か非公式の場合にこの通路を使うらしい。なるほど、俺達は正式な機関ではないから、堂々と正門から入ることはできないと。


 きちんと王城に辿り着けるのが分かったならとりあえずどこに向かっているかは考えなくて良さそうだ。それより俺はアーツの言った王と争うことになるという話が気になっていた。


「おい、王と戦うってどういうことだ。この国を乗っ取る、いやぶち壊すつもりか?」


 声を潜めて聞く。王と本気で戦うとなったら親衛隊との全面対決は避けられない。それこそ国が壊滅する。


 アーツは王を殺すではなく王と戦うと言った。ただ暗殺をするだけならアーツは殺すと言うはずだ。だが戦うと言った以上、そこには親衛隊の衝突という意味が暗に込められている。


「まあ、壊すっていうのも案外間違いじゃない。ただ、壊すのはこの国そのものじゃなく、そのシステムさ。俺の目的は、この国を在るべき人の許にに戻すことなんだ」


「在るべき人?」


「ああ、この国の正式な……っと、そろそろ王城だ。話はまた今度ね」


 これほど道が短いことを恨んだことはない。もう少しでアーツの目的、その核心について何か聞き出せるところだったのに。


 ただ、アーツがこの国の正式な何かを取り戻すことを目的にしているのだけは分かった。王を殺して取り戻す正式なもの。


 そこまで考えてはっとする。それは、王しかいない。王を廃して挿げ替えるもの、それはすなわち王だ。それは確かに王城で安易に口に出せるものではない。今度詳しく聞いてみることにしよう。


 確かに今の王は国の初代王アイラ・エルマの血を引いてはいるが、傍系だ。直系であった先々代の王が死んだ際、傍系の前王がその座を継いだという話は俺も知っている。


 先々代の娘は十数年前、父が死んですぐに出かけた先の貴族街の大火災に巻き込まれて死んだらしい。その娘が、実は生きていたりするのだろうか。


 いろいろと考えているうちに、王の部屋の前へとたどり着く。この先に、アーツが命を狙う相手がいるのか。


 扉を開け、中へ入ると鋭い視線が一瞬で俺達に集中するのが分かる。親衛隊だ。王の玉座の左右に4人ずつ、微動だにせず控えている。


 親衛隊は全部で12人、いや、ハーグはアーツが殺したから11人か。ここにいない3人はどこか別の任務か何かに行っているのだろうか。


「国王陛下、魔導遊撃隊特務分室ただいま帰還致しました。ニクスロット王国との条約は無事締結できました」


 アーツが条約の内容などを記した紙を王に手渡す。王は父親を殺させて即位しただけありかなり若く、好戦的そうな、どちらかというと戦士に近い魔術師らしさがあまりない男だった。


 これでも魔術の腕は相当のようで、魔力特性は赫灼。火炎と光を自在に操るらしい。ハーグには及ばないだろうが、現代の炎熱を得意とする魔術師の中ではかなり上手の方だろう。


 現王の魔力特性などがここまで判明しているのに対し、直系の王族の魔力特性に関してはほとんどわかっていない。


 なんでも初代のアイラ・エルマは真理に関係するなにかだという話があるが、その真相は未だに解明されていない。


「お前だな、親衛隊を退け我が父を殺したのは」


 話が一通り終わり、興味が条約から俺に向いたのか王が声をかけてくる。その眼に敵意はなく、そういえばもともと暗殺を依頼してきたのも元をたどればこの男だったと思い出させる。


「いかにも」


「その節はよくやってくれた。私が王座に就けたのもお前のおかげだよ」


 殺し屋をしていると、恨んでいる相手を殺してくれなんて依頼されることもよくあったから、間接的に感謝されるなんてしょっちゅうだった。だが、どうにも人の悪性を垣間見るようで俺は好きではなかった。


「いえ、仕事なので」


 たぶん俺は、この男とは致命的に気が合わない。適当に話を切り上げ、玉座の間を後にする。


 すぐに王城を抜け出し、道路に出る。ああいう城はやっぱり息が詰まるし、なにしろ王とあまり話していたくなかった。それに手練れの親衛隊に睨みつけられているのも疲れが溜まる。


 用事があるアーツと別れ、一足早く特務分室に戻る。早めに出てきたつもりだったが、空は赤く染まっていた。


「お前、レイだな」


 近道をしようと路地に入ったところで、少年に呼びとめられる。彼との出会いが、長い長い一日の始まりだった。

第三章『廻転遡上時空』始まりました!

第三章も楽しんでいただければ幸いです

次回、91:運命の日(n)2 お楽しみに!


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