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78:魔力喰らいの剣

「そうだレイ坊、あんたの力って魔術消去じゃなくて魔力喰らいだったんだね」


 キャスが思い出したように言う。そういえばグラシールもヴィアージュもそんなことを言っていた。特に変わりない気もするが、何か問題でもあるのだろうか。


「魔術消去と魔力喰らいってそんなに違うか? 大した差はない気がするけど」


 アーツがやれやれといった様子で首を振る。なんだろう、この俺一人だけが何も理解できていない感は。


「魔力を喰らうということは、魔力を用いたすべての手段に対応できるということさ。たとえそれがどんな存在であろうと、魔力に拠っている以上レイくんの敵じゃないってことだ」


「まあ逆に、触れた部分の魔力を喰らうだけだから高位の結界みたいな小さくまとまった魔術単位が集合している魔術に関しては効果が薄いけどね。鉄格子を一本ずつ壊していくような作業、レイ坊は好きじゃないだろ」


 なるほど。俺が魔術を消去できていたのは魔術を構成している魔力を一部喰らうことで、その魔術の存在をあやふやにしていたから。キャスが言ったように結界魔術などは構成がしっかりしているが、炎魔術などは一度崩れてしまえばその存在を保てない。


 聖遺物に対して効果が薄かったのはそのせいだ。【奉神の御剣】の魔力刃を消去できなかったのは、その構成が緻密だったから。俺の血を受けたイッカの迷彩が解けなかったのは、聖遺物によってそれが為されていたから。


 そもそも、触れるだけで魔術が解呪できるならば俺の悪魔認定も受けることはなかったはずだ。受けたとしても触れれば止めることが出来る。


 俺の得手不得手がはっきりしたのはいいことだ。元から対魔術師に向いているのは分かっていたことだが、ここまで格上殺しに特化した力だったとは。そこまでの怪物はそういないだろうに。


「それから、これは確定していることじゃないけど、レイくんが身体補強フィジカル・シフトと呼んでいるその力は神話顕現の一種だと思うんだ」


 神話顕現。ファルス皇国でベルフォードが為した、【奉神の御剣】の力を真に引き出す術。


 現代の魔術師では聖遺物の力を最大限に引き出すことは難しい。そのため英雄たちの偉業を、いわば憑依させることで圧倒的な効果を発揮する聖遺物の奥の手だ。


 そんな大技俺に使えるわけがない。そもそも魔力がないんだから神話顕現などできるわけがない。


「魔術でない身体能力の強化、ずっと考えていたんだよ。そしてレイくんが聖遺物を基にできていると分かれば、もはやそれは聖遺物か【リベレーター】本人の力であると考えるのが自然なのさ」


 はてさてアイラ・エルマ叙事詩にどれだけ記述があったかとリリィの荷物から拝借してきて開いてみる。神話顕現で逸話を再現できるのであれば、俺の技術では達成しえない技なんかも使えるかもしれない。


 話全体を通して目立つような存在、例えば大英雄インヴィクタ・モースのようなそれではないが、姫との恋物語は若い娘などに人気がある。


 魔剣【破幻の剣】を手に各地を放浪していた彼は、旅の途中で立ち寄った国、現在のアイラ王国で一人の少女に出会う。


 大河で溺れかけ、【リベレーター】に助けられた少女の名はベルース。王の娘、つまり姫君であった。庭の川に足を滑らせ落ちてしまい、国を流れる大河に辿り着いてしまったという。


 光の神と水の神からの祝福を受けたベルースは、その魔法の才からガーブルグ帝国に狙われており、【リベレーター】に警護を依頼した。


 二人は多くの敵を退けた。互いが互いの不得手を補い、危機を救った。そうして共に戦ううち、二人は自分の中に芽生えていた恋心に気が付く。長く二人で戦っていたのだから、そういうことだってあるだろう。


 身分の違いに逡巡していた【リベレーター】だったが、ベルースがかなり強引に王を説得、二人はめでたく結婚することになった。


 だが、挙式を挙げようと準備をしているそのとき、ガーブルグ帝国から大規模な侵攻が起こった。


 ベルースと【リベレーター】は共に戦った。しかし、それを分断したのが【リベレーター】のライバルである騎士テイネブライス。闇の神の加護を受けたガーブルグ帝国の精鋭だ。


 二人での戦いに慣れ過ぎていたせいか、二人は本来の力を発揮することが出来ず、テイネブライスを退けられない【リベレーター】の目の前でベルースは殺されてしまう。


 目の前で最愛の人を殺された【リベレーター】は激昂した。それはもう、この瞬間であれば神すら地に叩き墜とせるのではないかと思えるほどに。


 怒りのままに彼は単身で侵攻軍を全員殺し尽くし、「もはや守る者なし」と言い残し、再び放浪の旅に出たという。


 それからの【リベレーター】に関しての記述は極めて曖昧だ。ガーブルグ帝国に与する者を殺して回っていたとか、闇の神を殺しに向かったとか、恨みの果てに悪霊になり果てたなんて説もある。


 さらに彼の魔剣に関してはさらに謎が多く、基本的に来歴のはっきりしている神話の武具の中で珍しくその起源が不明であり、どこへ消えたかもわかっていない。


 【破幻の剣】に関して一番支持されている説は、アダマンタイトが何らかの影響を受けて変質したというもの。実際魔法金属というのは変質することで生まれるものも多く、最高の硬度を誇るオリハルコンは変質することで生まれる金属らしい。


 神話好きの考古学者の中には神という存在のカウンターとして生まれた剣だと言う者もいる。神話において不可解な発生の原因のほとんどは大きな存在に対するカウンターであり、世界がバランスの調整のために生み出したものだとされている。


 神という強大な存在に対して鍛錬された、魔力を喰らう剣。考えられない話ではないが、どうにも現実感がない。今度ヴィアージュに会ったら少し聞いてみよう。


 アイラ・エルマ叙事詩の【リベレーター】の部分を一通り読んでみたが、逸話らしい逸話は見つからなかった。強いて言えばガーブルグ帝国の軍を単身全滅させたことくらいだが、これをどう活用すればいいのか良くわからない。


 本を閉じて思案にふける俺の頭をキャスが軽く叩く。


「まあ焦るなレイ坊。時間はたっぷりある、無理して一度に自分の全てを見る必要はないんだぞ」


 随分威力のある励ましではあったが、少しだけ、頭の中がごちゃまぜになっている状態から俺を掬い上げてくれたような気がした。

今回は【リベレーター】の話についていろいろと書きました

レイの力はどこからきたものなのか、【破幻の剣】はどのように生まれたのか……?

こういう謎に関しても少しずつ明かしていくつもりです

次回78:タイトル未定 お楽しみに!

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