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735:帰郷

 ユニがこの一連の事件の犯人。である可能性が高い。自分でもこの仮説に辿り着いたというのに、それでも未だに信じられなかった。状況的には【真】を疑っていたときに似ている。状況的にはユニが怪しいが、俺自身が信じがたいと思っている。


 ユニの姿と大事件の犯人の姿が、どうしても一致しない。あんなにも平和な時代のために尽力していた彼が、ここまで大きな事件を裏から仕組んでいたといくら信じても納得できない。


 だが、俺は根拠をひとつ握っている。彼は別れ際、俺ともう一度会うだろうと言っていた。あれがもし、俺たちが真実に気付いて彼を追うことを予見していたものだったとしたら。教職にある俺が本当に彼を追うことになるかはわからないが、少なくともその姿を求めることにはなるのだろう。


 思えば彼が持つ雰囲気は、常人のものではなかった。ファルスで俺を焚き付けたときも、ただの研究員では持ちえない覇気があった。おかげで俺は少しだけ彼を疑うことができているが、そもそも、なぜそんなことをしたのか。


 周到に自分の正体を隠していた彼が、疑念の根拠になりかねないような言動を俺に見せた理由。【影】に話しても、彼にそういう様子は見られなかったというし、少なくとも特殊部隊にはそういう姿は見せていないということだろう。


 思い当たるとすれば、彼も俺も平穏を目指しているということだろうか。その点に関しては【影】たちとは違っていて、そして俺と共通している部分だ。そんな理由で正体の一端を見せたとは思えないが、可能性としてはありうる。


「先生、お疲れですか?」


 俺が難しい顔をしていたのを不審に思ったのか、オルフォーズが声をかけてくる。せっかくの帰郷だというのに浮かない顔をしているように見えたのだろうか。一旦宿に着くまでは考えるのをやめた方がいいかもしれない。


「ま、最後まで色々やることがあったからな。普段は使わない頭も使ったし、少し疲れたよ」


 誤魔化すように適当なことを言うと、ティモニの目がきらりと鈍くひかる。他の人に言いふらさないでいてくれているのはありがたいが、それはそれとして毎度毎度俺を怪しむのはなんとかならないだろうか。毎回緊張してしまう。


 多分今回も、何か国の仕事の関係で誰かしら殺してきたとかそんなふうに思われているのだろう。今のところ、話している感触だけでいえば普通に指導は受け続けてくれそうだが内心どう思われているかはゆっくりと探っていくとしよう。


 一旦考えるのをやめて、反省やこれからに思いを馳せる生徒たちの話を聞いていると、時間はすぐに経った。こういうとき、近くに人がいるのはありがたいな。特務分室に所属していたときともまた違う。


 あのころは気になったことを全て話して、皆で相談することができた。今はそうではないけれど、心に刺さった棘のような懸念を、一瞬だけでも忘れることができる。何も知らない相手というのはある意味では気楽で、心地よい。


 そうこうしているうちにキデンス州の州都が見えてきた。ガーブルグのものよりも少し木の多いアイラ式の建物を見ると、別に思い入れのある都市ではなくとも少し落ち着く。俺も随分アイラという国に愛着が湧いたものだ。


 ひとまず休息の時間であり、そして気持ちを落ち着ける時間だ。王都に着くまでに、俺自身の考えを整理しておかないと。

次回、736:成果報告 お楽しみに!

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