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717:青天井

 このままでは終われない。終わらせることができない。ルーチェルとティモニもまだ見つかっていないし、ここでこいつと遊んでいる余裕はない。


 だが、ここで焦って下手に刀を出せば懐に入り込まれる。妙にこいつが喧嘩慣れしていなければそれもできたのだが、不都合なことにこういう時に限ってよく動いてくる。眼鏡すら放り投げているあたり、顔面に貰うのも覚悟しているということだろう。


 【真】を倒すために、やるべきこと。それは奴の体質の確認だ。もしもこいつの体質に穴があるのなら。そこにこそ付け入る隙がある。そのためにもまずは……。


 少し、しかし明確に変化が起こるくらいに身体補強(フィジカル・シフト)の出力を引き上げる。もし彼の体質が今の俺ではなく彼の知っている俺を模倣しているのであれば。


 なんて、都合のいい考えは良くないか。俺の放った一撃は、俺と同じだけの力で弾き飛ばされた。つまり、こいつの身体能力は常に俺と同等になるようになっている。一方的に力を出して押し切るというのは難しいらしい。


 こいつの身体能力は常に俺のものに依存している。ならば、逆をいけばいいのだ。「体質」の厄介なところ、悪いが利用させてもらう。


 【真】の打撃を捌き、隙を作る。この、一撃だ。軽い飛び上がりと、鋭い蹴り、その加速。十分に勢いがついたその瞬間に、身体補強(フィジカル・シフト)の出力を大きく下げる。もう止められないほどに速度の乗った脚はほとんど失速せずに【真】に突き刺さるが、彼はそうではない。


 出せる力よりずっと上、圧倒的な速度と重さの乗った脚が、常人より少し上くらいまで出力の落ちた身体で受け止め切れるわけがない。今まで通らなかった攻撃が、面白いほどの有効打になる。


 彼の力はその体質で得たもの。自分の都合のいい強度で維持できるわけでもないし、それを元に戻すことも、少なくとも彼はもう一度嘘をつかない限りできない。


 俺の強化に青天井に追随してくると知った時は焦ったが、そのスイッチをいじる権利は俺にある。戦いの主導権が俺にあるのと同義だ。


「なんや、急に分が悪くなってきたな」


 それでも【真】は諦めない。再び拳を放ってくるが、もはやその攻撃は微風と同じ。攻撃の予兆があるのならば出力を落とし、俺にぶつかるその瞬間だけ出力を引き上げる。俺が攻撃をするならその逆。確かに神経はすり減るが、肉体へのダメージには明らかに顕著な差が生まれ始めている。


「もう止めにしないか。俺はお前が犯人でも、そうじゃなくてもいい。一旦俺に従って、俺を安心させてくれよ」


 ここまで抵抗するからには犯人なのかもしれないけれど。もしこいつが犯人でないとするならば、こうまでして俺と戦う理由がない。この事件の解決には、俺が代わりに向かってもいいのだから。


「俺だってレイさんとは戦いたくない。せやけどな、ここで捕まるわけにはいかんのや」


 焦りはどんどん高まっていく。理由はわからないけれど、本当に【影】が犯人ではなかったとしたら。その間に、何か恐ろしい計画が進んでいるとすれば。少し話を聞くべきなのかもしれない。


「理由を言え。でなけりゃ理解も納得もできない」


 困ったような顔の【真】。実のところ、彼への疑念は時間が経てば経つほど薄れている。今の状況は彼が犯人だと告げているが、うるさいほどに叫んでいるのはその状況だけ。


 聞かせてくれ、ここまでする理由を。それだけしてくれれば、俺はこいつを認めてやれる。頼む、口を開いてくれ。


「ダチに、俺の手で引導を渡したい。それだけなんや」

次回、718:掴んで離すな お楽しみに!

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