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689:新兵器

「ほう、今日は随分自信がありそうだな! 叩き潰し甲斐があるわい!」


「追われるばっかにならないってトコ、見せてやるよ」


 昨夜の練習で何かを掴んだのか、【破】の言う通りティモニは相当自信がありそうだった。俺のアドバイスも少なからず役に立っているといいのだが。


 そして、いつものように訓練が始まる。【影】は救護室あたり、おそらくユニが休んでいる方が気がかりだったようだが、訓練が始まってからは、さすがはプロ、真剣な顔でルーチェルに向き合っている。


 教師としてではなく、俺個人としてもっとも興味がある組み合わせはデトルと【滅】だ。剣士同士の対決もなかなか気になるが、それよりも頑強さや力強さを活かす戦いの方が俺には近い。俺の得意は刀だけではないし。


 デトルは指摘されていた自分の力に対する内なる過信も減り、魔術や打撃を叩き込んだ後もきちんと動いて退路を作ったり、反撃を防ぐ準備をできるようになっている。確かに警戒は絶対に必要なのだが、この意識がきちんと生きるのはどのタイミングになるのだろう。


 【滅】ほどの耐久性を誇る肉体は、彼の魔術を込みにするともうほとんどないだろう。俺も丈夫さには自信があるが、それでも【滅】のように無尽蔵かつ高速の修復はできないしなにしろ体力を消耗する。


 一対一で戦って、もっとも勝ち目が薄いと言ってもいいかもしれない。なにしろ俺の売りに対して、完全に上をいっている。他の何かを得意とする相手ならば俺の頑強さで押し通すこともあるいはできるかもしれないが、【滅】とはその我慢比べで確実に負ける。一人で勝つ未来が全く見えない。


「食らえチビっ子ッ!」


「かかか! 威勢だけか!?」


 宣言通り、ティモニと【破】は激しい空中戦を繰り広げていた。昨日までと違うのは、宣言通りティモニも攻勢に出ているというところ。【魔弾】や魔術で起こした突風を利用して、うまいこと張り合っている。


 空中での安定性は比べるまでもなく圧倒的にティモニの方が上、それはおそらく本人もわかっているのだろう。動き回らなくてはいけない【破】をうまい具合に狙い撃ちできれば一撃くらいはありうるかもしれない。


 もっとも、その新兵器も初撃が決まらなかった時点で諦めた方がいい気がするが。あくまで彼らが提示できる「強さ」は想像を超えた一撃、今までになかった、思ってもいなかった一撃だ。そうでもなければあらゆる攻撃が意味をなさない。


 実際【破】は拳と脚で全ての魔術を弾き返している。何がすごいかといえば、そのバランス感覚だろう。【縛】からの支援を受けているとはいえ、滞空しながら、それでいてまるで地上にいるかのように打撃を放っている。


 そんな感じでデトルとティモニが派手に戦っているせいで、他になかなか目が行きにくい。もともとの経験不足や怠惰が相まって、成長が見受けやすいというのも原因だろう。


 しっかりしているように見えるオルフォーズやロプトも、きちんと見てやらないと。二人も俺の生徒だし、彼らなりに困りごとも抱えている。俺の同僚たちがしっかりしすぎているせいで忘れてしまうが、彼らはまだ子どもとされる歳だ。場合によっては俺もそう呼ばれる年代ではあるけれど。


 のんびり全体を俯瞰するか、なんて呑気なことを思って椅子に深く腰掛ける。気合を入れすぎずに、なんて俺の気分を引き裂くように、演習場の扉が勢いよく開く。


「どうした。緊急時以外は部下を通すよう言ってあるはずだが」


 もっとも近くにいた【静】が、訓練を中断して対応する。俺が代わりにやってやりたいところだが、あくまで俺は特殊部隊の一員ではない。どうにも彼らと共に活動しているとその認識まで少し緩くなってくる。


「研究員が意識を取り戻しました。現在保護を継続中です」

次回、690:取調 お楽しみに!

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