表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
691/758

688:昏睡

「どうした、そろそろ訓練の時間だぞ」


「実は、ユニさんが先ほど救出されまして。レイさんの仰る通り体調は最も良かったです。目を覚まし次第お話が聞けそうです」


 ついに見つかったか。交代で夜通し作業をしていると【真】も言っていたし、もうすぐ見つかるだろうとは思っていたが、想像よりも少し早かったな。何はともあれ昨夜俺が救出した研究員やユニから話を聞くことで、少しは進展しそうだ。


「それで、ユニの容体は?」


「現在は他の研究員と同じく昏睡状態です。精神にかなり大きな負荷がかかっていますから、身体が治っても目を覚ますのは少し時間がかかるかもしれません」


 精神感応系の魔術はいわば毒だ。精神に働きかけ、異常を引き起こすもの。身体に作用する毒の魔術と違いがあるとすれば、それは治療の難易度だろう。身体に比べて精神は未だ魔術を用いても未開の領域だ。簡単に壊すことができても治すのは難しい。


 だからアイラでも精神感応系魔術の使用は禁止されている。ガーブルグでも同じだ。今回は魔力を大量に浴びせることによる支配だからその点においては一応法には触れていないといえるが、そんな屁理屈が通じないほどに研究所に打撃を与えている。下手人は捕まればまず言い逃れられないだろう。


 とりあえず、研究所の奪還と証人、もしくは証人になれそうな研究員の保護に関しては成功した。俺がここに来た大元の目的は果たせたと言ってもいいだろう。


「それで、わざわざ俺を呼んだってことは話題はそれだけじゃないんだろ」


 ただこれを伝えにきただけならば、ここまで焦る必要はない。わざわざ生徒に少なからず怪しまれる行動をしてまで俺を呼びつける必要はないはずだ。


 ユニがすぐに目を覚ましたのならばまだしも、そうではない。ただ彼が見つかり今は寝ているというだけであれば、のちのち世間話を装って【真】あたりに教えてもらえればそれでいい。わざわざ来たということは、取り急ぎ俺が、今すぐにでも知っておくべきことがあるということだろう。


「ええ、察しが良くて助かります。実は今回の黒幕が、我らが【滅】を惑わした者と同一人物である可能性が濃厚になっているんです」


 【滅】を惑わした。つまり俺たちが最初にガーブルグを訪れる理由となった根幹魔力の吸い取りを黙認していた、もといさせていた犯人ということか。確かに両者とも犯人は精神感応系の魔術を使用している。可能性は大いにありそうだが。


 未だに納得しきれない俺に【影】が差し出してきたのは帝都は別の研究所で行われた解析の結果。当時の【滅】から得られた残存魔力と今回研究所に蔓延していた魔力が一致していたということらしい。なるほど、これは。


 しかしこれは、よく考えなくともかなりまずい事態なのではないだろうか。【滅】に魔術をかけた犯人がわかっていないどころか、その跳梁を許し、そして再び大きな犯罪を起こさせてしまった。相手はもう、明確に帝国に、世界に仇なすテロリストだ。


 俺たちもすぐにアイラに帰ってしまったから簡単に帝国特殊部隊を責めることはできないが、これは取り急ぎ本国にも伝えてどうにかすべき事態な気がする。とはいえ俺自身は手紙でないと連絡ができないから、【影】にお願いすることとしよう。


「とりあえずは研修旅行の業務を続けましょう。今の我々にできるのはそれだけです」


 どうやら黒幕につながる手がかりは魔力以外、全くないらしい。それこそ、研究所や帝城にもうまく入ることができるという、それだけことがわかっているくらい。他は何も、全くわかっていない。


 こう手がかりがない状態では全く動けないだろう。まずは目を覚ました研究員から話を聞いて、か細くとも情報を集めないと。

次回、689:新兵器 お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ