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66:破壊の化身

 再び見えた巨砲は、やはり異様かつ威容だった。一面の白を打ち破るようにそびえる無骨な砲。しかし内部への侵入自体はそう難くはなさそうだった。


 前回は正面から突っ込んだのが悪かった。いくら怠慢な警備であろうと、正面からの攻撃には嫌でも気が付く。しかし忍び込むことを前提とすれば話は違う。万全の警備が為されているのだろうが、もともと俺はそちらの専門分野だ。


「やっぱり慣れちまうと、敵地に入るのにカイルがいないと不安だな」


 裏手に回り様子を伺いながら、ふと言葉が零れる。中に入るには警備の間隙を突くのが基本だが、カイルがいれば空間把握でその手間をかなり省ける。


 どこかに辿り着くのが目的であれば、会敵する確率をほとんどゼロまで抑えられるし、かなり強力な魔術だ。攻撃手段が銃なのもあるし、一対一で戦ったら負けるかもしれない。


 だがカイルは今回拠点防衛に回さなければならない。現在この狙撃銃が最も安全で有効な攻撃手段である以上、俺とカイルの両名が行動を共にするのは良くない。だが幸いこの国は戦い慣れておらず、戦力の分断によるリスクが少ない。


「あそこの倉庫なんてどうです? 武器庫は警備が堅いですが、食糧庫に人影は見えません」


「俺もいいと思う。使い魔を回して確認しよう」


 ハイネが小さなネズミを放つ。ハイネは使い魔にネズミを使っているのか。


 使い魔は少し訓練された魔術師なら基本的に誰でも使える、魔術師の基本装備のようなものだ。使役するのは大抵小動物で、視覚や聴覚などの感覚を共有できる。


 小さいから発見しにくく、また見つかった場合も魔術の接続を斬ってしまえば探知はかなり困難だ。そのため偵察や情報収集に使われることが多い。もっとも、結界を張られてしまえば入ることすら許されないが。


 数多の結界で覆われているこの国も、さすがにここまでは気が回らなかった、もしくは使い魔の存在そのものを知らなかったか。無事侵入できたようだ。使い魔については今度クレメンタインかシャーロットにでも聞いてみることにしよう。


「食糧庫付近、敵影ありません」


 ハイネの報告に頷き、食糧庫へ続く裏口の鍵を破壊しようとする。だが、金属製の錠前を静かに破壊するのは難しい。躊躇している俺にハイネが声をかける。


「レイさん、私の魔力特性なら……」


 小声で呪文を唱え、ハイネが【サイレント・フィールド】を発動する。ハイネは禁呪使いだが、【静寂の一刈り(インビジブル・デッド)】との適応性ゆえに自身の魔力特性に近い魔術ならば行使することが可能だった。


 ハイネの魔力特性は静謐。周囲を無音にする【サイレント・フィールド】ならばかなり魔力特性に近い。これなら一般人より簡単に巧く発動できるだろう。


 弾丸を鍵穴に撃ち込み破壊する。音が消えているのでついでに扉も蹴り開けた。中には各地から略奪したのであろう食糧。正規軍のような準備はなく、品目もまちまちだ。ただ数カ月は持ちそうな量だけはある。


 使い魔の視覚で見回りのいない廊下を探して進む。さっきカイルがいないと大変と言ったが、訂正しよう。ハイネがいなかったらもっと大変だった。むしろ俺は今まで一人でよくやっていた。


 俺が常に全範囲を警戒しつつ先へ進む。相手は何の警戒もない見回りだ、足音や息遣い、気配がダダ洩れになっているからすぐに探知できる。


 今のところは誰も近づいて来ていない。通路選びがいいのか、たまたま運が良かったのか、誰に遭遇することもない。


「次の角を右です。中心部までかなり近づいてきたので今まで以上の警戒をお願いします」


「了解。俺に任せて進路を探すことに注力してくれ」


 しかし、恐ろしいほどに見回りがいない。上手く見回りと見回りの隙間に入り込めたのだろうか。一人二人との交戦は覚悟していたものだから少し拍子抜けした。


 音も立てず慎重に、だが着々と進む。少し遠回りはしたが、とうとう制御等が行われているであろう部屋の前までたどり着いた。


「さすがに部屋の前には固定された見張りがいるみたいですね。私が落とします」


 ハイネが手を握ると見張りが崩れ落ちる。さすがは【静寂の一刈り(インビジブル・デッド)】、隠密暗殺にかけては一線級だ。


「見張りを倒せたのはいいですが、中に大きな魔力の反応がありますね。おそらくこの砲を造らせた者かそれに近い人物でしょう。交戦は避けられません」


 向こうは俺達に気付いているのかいないのか。攻撃的な魔力が扉一枚挟んだ向こう側に感じられる。それから、少し毒素のようなものも。


「息を吸うと少しだけ舌がぴりぴりします。罠でしょうか」


 それも考えられるが、味方まで巻き込みかねない罠など仕掛けるだろうか。それでは一日数人ずつ見張りが死んでしまう。


「効くかはわからないが毒を軽減、無効化する薬だ。とりあえず舌の痺れは消える」


 貧民街で仕入れておいた薬を手渡す。俺が服用するものだから魔術薬ではないが、ないよりマシだろう。


 例えば麻痺毒なら全く動けないのと指先、口だけでも動けるのではかなり違う。即死の毒でも少しの猶予が生まれれば治療できるかもしれない。とにかく、毒というのは完全に消せなくともできるだけ軽減させることが大切なのだ。


「俺の合図で突入するぞ」


 指を立てて3秒カウント。そしてゼロになった瞬間突入する。そこに立っていたのは……。


「この女は……」


 ハイネが怯えたように、小さく呟いた。


またまた更新が遅くなってしまいました……!

いまちょっと新作を少し書いていましてすみません!(言い訳)

時間取れるようになったので急いで書きます!!!!


次回、レイたちを待ち受けていた刺客の正体とは……?

66:毒の女(仮題)、お楽しみに!

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