661:一大交流プロジェクト
わざわざ校長が直々に尋ねてくるとは。今までもドロシー先生やら、俺にある程度近い人に手紙を渡すとかそういう呼び出し方をしていたのに、なぜ今ここにきたのだろう。
わざわざ校長が来るだけ重要なことを言い渡しにきたということだろうか。となれば俺の進退……。は流石にないだろう。特に俺は何もしてないし、そのうえ研修旅行の計画中だ。そうか、旅行があったか。
「校長先生、こんにちは!」
「はい、こんにちは。皆さん元気そうで何よりです」
「校長先生こそ。お忙しいでしょうに、どんな御用ですか?」
応対の仕方が俺よりも様になっている。相手は生徒ではあるが、オルフォーズに振る舞い方を習った方がいいかもしれない。
「今日はレイ先生の研究室の研修旅行が国の特別交流プロジェクトに指定されたので、その報告に来たんですよ」
「と、特別交流プロジェクト……?」
「どうせ四国同盟のよくわかんないハナシでしょ。あたしに実害ないなら別にいいけど」
校長相手でも態度を変えないとは、一種恐ろしいほどの若さというか、胆力だ。俺も一応偉い奴にはそれなりの態度を取らないといけないと思うくらいの気持ちはある。ティモニがどの程度の相手までならこの態度を貫き通せるのか少し気になってきた。
それはそうと、ティモニの予想はおそらく当たっている。大きな公的プロジェクトとすることで、信頼感を高めて許諾を得やすいように、というアーツたちの計らいだろう。現地で駆けずり回るのは俺なのだから、これくらいの支援はしてくれないと困る。
「ええ、その通りです。四国交流に特に寄与してくれそうな方々が指定される、名誉なことですよ」
そう言って校長からリストが手渡される。後からの認定にはなっているようだが、イゾルデのニクスロットへの渡航や俺たちによるファルスへの指導、他にもアイラには関係のない事業でもいくつか認定されているらしい。
現状彼らの予想では許諾は問題なくもらえそうだが、最終的にどう転ぶかはわからない。材料は多くあるに越したこともないし、こうして後ろ盾がつくことで国外に研修旅行に行くのも不自然ではなくなっただろう。
「先生見せてよ。げ、あのイゾルデと同じかぁ……」
発表会を通しても、結局イゾルデと仲良くなることはできなかったらしい。控え室で色々話す機会はあっただろうが、まあそれだけで仲良くなるというのも厳しいのだろう。イゾルデとはそこそこ関わりもあるし、できればうまく接してほしいのだが。
「僕名誉とか興味ないなぁ〜。校長先生、指定されてイイコトとかないんですか?」
「事業に応じて支援がありますが、皆さんの場合は旅費の負担くらいですかね。あまり支援できる項目がないもので……」
「ふぅん、まあ得するだけマシかぁ」
普段から騒がないせいで忘れていたが、傍若無人はもう一人いたか。最初は随分頑張っていたようだが、二人へのオルフォーズの注意もだんだん減ってきた。
もっとも、口調の前に校長が来ているというのに見向きもせずに好きなことをやっている時点で大概だが。もう少し緊張とかしないものなのだろうか。俺は内心女王陛下に謁見する時よりも緊張しているが。
「皆さんの予定などには何も影響しませんので、特に気にせず旅行を楽しんできてくださいね」
「はい、頑張ります!」
「お気遣いありがとうございます」
研究室を出て去っていく校長に、にこやかに手を振るデトル。もしかしたらこいつが一番おかしいかもしれない。素直でいいやつではあるのだが、素直すぎて俺には少し眩しい。カイルを煮詰めたような底知れなさがある。
決して不快ではないが、やはり微量の劣等感はある。それもこういう人間が俺の近くには必要だ。なにせ、見ていると俺も立ち上がる気力が湧く。
「よし、今日も練習するぞ!」
次回、662:デトルの変化 お楽しみに!




