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651:できる限りのこと

「な、に……」


 何が起こったのかはわからないが、アエニアが苦しんでいる。管理用魔術に侵入した瞬間、苦しみ始めたということは……。


 堂々とスピーチをするイゾルデ。その姿を穏やかに眺めるドロシー先生の顔が軽く歪む。まるで大笑いをするのを我慢しているかのよう。よく見ればふるふると震えているようにすら思える。


 だが、これはチャンスだ。動くことも声を出すこともできないらしい。苦しそうにしているこのときを利用するのは少しばかり心が痛むが、そんなことは言っていられない。


「具合が悪いのか? 少しここから離れよう」


「ダ……イゾ……ル……」


 何かを叫ぼうと震えているが、漏れるのは言葉ではなく細い息だけ。何が起きている。車椅子を押して講堂から出ると、人が多いところからは離れ空いた教室に入る。オルフォーズも付いてきてくれたようだ。


 今のうちにと魔力を抑制する手枷を嵌め、ナイフを突きつける。魔力が抑えられたからか、それとも単純に治っただけなのか、徐々にアエニアの体調は戻っていった。


「よ、大丈夫か?」


「く……あの女……」


 自分が置かれている状況はわかっているのだろう。決して大きな声を出すことはしなかったが、その顔は今までにないくらい憤怒で歪んでいた。驚きだ、こんな顔もすることができたのか。


「私はお手上げです。が、まだ戦いは終わっていませんよ」


 まだ何か策を残してあるというのか。相手の二人、アティとフェインといったか。彼らも倒され、アエニアも俺たちが制圧した。これ以上奴らにできることはないと思うのだが、まだ何かするつもりなのか。


「管制室前の戦い、あれそのものは相討ちという形で終わりましたが、おそらくはアティが先に起き上がるでしょう。彼らにも魔術は指南していますから、管理用魔術は乱してくれるはずです」


 原理はわからないが頑強になれる魔術を使うあの女なら魔術を受けることにも慣れているということだろう。これが彼女のいう運に天を任せるというやつなのだろう。ということは、こちらに転ぶこともあるということ。


「よく起きたな、デトル君。今すぐそこの二人を拘束し、宝石を破壊してくれ」


 やはり先に目を覚ますのはデトルだったか。デトルは魔術への耐性こそ並だろうが、勉強をしつつもずっと親を手伝ってきたといっていた。実際その体格は他の生徒よりも明確に優れている。魔術師の間では軽視されがちだが、こういう時には無視できない要素になる。


 ついに全ての策と可能性が尽きたのか、アエニアは目を伏せ身体の力を抜く。俺のナイフも意に介さない様子で力を抜くから、切っ先が細い喉に細い喉に食い込んで、慌てて少し腕を引く。


「まだ抵抗するか?」


「いえ、降参です。申し訳ないですが、私がきちんと負けたことを伝えますのでアティとフェインを連れてきていただけますか?」


 少し考えてから頷く。デトルが少し心配だが、魔力抑制の手枷は持たせているし殴り合いになれば勝てるだろう。多分大丈夫だ。


 オルフォーズがデトルに連絡してくれたし、10分くらいで二人、というか三人はここに到着するだろう。その間ずっとナイフを向け続けているというのも気分が悪いし、すぐに抜ける、ということを見せつけながら懐に仕舞う。この状況で抵抗はしないだろうが、一応備えておくに越したことはない。


 デトルとは別に、管制室前の兵士を介抱するための要員も要請するようオルフォーズに頼む。本人は今回何もできていないと思っているのだろうが、彼がいなければ今回確実に負けていた。俺としては感謝しているのだが、優柔不断な部分を見せてしまったから信用は少し失ってしまったかもしれない。


 救護部隊が動き始めたと同時に、扉が叩かれる。デトルが来るには少し早い時間だが、その音の主を確認をする前に扉が開く。


「助かりましたよ、レイ先生」

次回、652:知識・場数・才能 お楽しみに!

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