626:警護隊
結果的には賛成4、反対1。説得は必要なようだが、全体的にやるという話で進んでいくことになりそうだ。
「なんでアンタらこんなこと自分からやろうとするワケ? 面倒ごとに首突っ込むなんて。それに、あの女……」
どうやらティモニはイゾルデがあまり好きではないようだ。確かにイゾルデは一見完璧な優等生といった感じだし、ティモニが嫌うのも仕方ないか。その姿勢は崩すこともないだろうし、特に印象が良くなることもないだろう。
だというのにわざわざイゾルデへの偏見についてとやかく言っても仕方がない。どちらかといえば今回の件をきっかけにうまい具合関わって仲良くなってほしいものだが、無理強いするのも好みではない。
「でも、美人先輩って先生と仲良いんでしょ? ティモちが思ってるほどマジメな人でもないんじゃない?」
「アンタはその変な呼び方をまず直しなさいよ……」
呼び方のせいで軽く流されてしまったが、ロプトの考えはいい線をいっている。本当に絵に描いたような優等生ならば俺と教師として適切な対応こそするだろうが、こんな依頼をしてくることはない。少しでも響けばいいが。
「俺は先生のお誘いならやりますよ〜! 人を守るとか、腕が鳴ります!!」
「わ、私もです……」
いったいどんな惨状になることを想像しているのか。生徒が参加できるという時点で形式的なものだろうというのは簡単にわかる。
俺が依頼されたのは研究発表会におけるイゾルデたち研究室の護衛。一班単位、俺たちでいえば研究室丸々だが、それだけの人員を要するということで、毎年生徒にも参加を要請しているらしい。
「俺たちはルーチェルの転科の条件、競技祭の出場と活躍を目指してる。そのためにもイゾルデと関わり合いになるのはいいと思うんだがな」
直接の協力はしない、と言われてしまった。思えばあれは俺の考えが甘かった。俺はイゾルデたちに関する情報を外部に漏らすつもりはないし、イゾルデも俺がそんなことはしないと思ってくれている。と思いたい。
しかし問題はそこではないのだ。連勝を重ねてきた彼女にもはや負けは許されない。たとえ俺たちであっても負けるわけにはいかない。だからこそ直接の協力はできない。が。
個人的に関わり、そしてその力を肌で感じてもらうというのはいい機会だ。代表を選ぶとなって急に相対するのとは話が違うだろう。
「私も先生の意見に同意だ。イゾルデさんは尊敬すべき先達であり目指すべき目標。得られるものがあるかもしれない」
そこまで言われてもティモニの顔色はよくならない。どうしてもやりたくないことをやらせる趣味はないが、4人もやると言っているのだからその気持ちを無碍にすることもしたくない。少人数でもいいと許諾をもらうか、もしくは欠けた分をどうにか埋めるしかないだろう。授業を受けてくれている生徒に頼めばなんとかなるはずだ。
「無理はしなくていい。俺の方で頼んでおくから、ティモニは不参加でも大丈夫だ」
一班単位、つまり5人の生徒を動員することが明確に規定されているわけでもない。慣例として「そう」というだけの話だ。いざとなっても俺が生徒三人分くらいの働きは出来るだろう。ティモニの件は伏せておくとして、事情を説明すれば通してくれないドロシー先生ではあるまい。
連絡をするならば早い方がいい。書類を片付けて小脇に抱えるとドロシー先生の研究室に向かうために立ち上がる。
「待ちなよ」
俺の腕を掴み動きを止めたのはティモニだった。まだ何か言いたいことでもあっただろうか。
「担当に恥かかせるワケにもいかないでしょ。あたしも参加する」
次回、627:権力闘争 お楽しみに!




