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579:稀代の天才

 手袋を嵌めて俺を見据えるオルフォーズ。正直、このメンバーの中で一番期待しているのはオルフォーズだ。入学試験をほぼ満点で通過したのもそうだが、ジェイムに戦いを習っているというのが一番大きい。既に戦う力こそ失った彼だが、積み重ねた経験は健在だ。


 おそらくは、現時点でも多くの同世代とは比較にならない力を持っているだろう。その力を遺憾無く発揮してくれるというのであれば、この研究室を引っ張っていってくれる絶対的な立場になるだろう。


 ティモニが魔術で開戦の合図を鳴らす。しかしオルフォーズは動かない。身体能力強化、魔術の事前起動、やっておけばいいのに律儀なものだ。


 しかし、その真面目さは仇になっていない。彼の真面目さはあくまで彼の性質、信念であって隙ではないのだ。俺がこの間に攻めてもきちんと対応してくる。それがわかるからこそ俺も手を出さない。全力のオルフォーズの戦いが見てみたい。


「行きますよ」


 その声と同時か、少し早く、ゆらりと垂らした腕のその先、指全てから【魔弾】が放たれる。5発もの魔術を同時に保持できる技量もそうだが、魔術の精度もとんでもない。


 一般的に直線的に飛ぶ魔術である【魔弾】。しかし、今回はちがう。ところどころで曲がりながら、俺に向かってくる。5発の魔術を同時に、それも全く違う軌道で操作するとは。


 だが、見切れない速さではない。5発程度ならば……。


「流石です。そう簡単にいくとは思っていませんでしたが」


 ここまで余裕を出されると、俺も少し悔しい。【魔弾】を全て叩き落としたのはいいが、その威力で少々木剣が傷み始めている。ルーチェルに続き連戦だったし、このままでは木剣が折れる。


 ならば、俺の方からも少し攻めてやろう。追加で放たれた【魔弾】を滑り込みで躱すと、そのまま前へ出る。とはいえここで簡単に接近を許すほど甘くはないはずだ。さて、どう仕掛けてくるだろうか。


「熾天よ!」


 空を払うように振るわれたオルフォーズの腕から噴き出たのは炎だ。確かに俺、だけでなく敵の接近を防ぐならばこれ以上のものはない。触れば消せるが、俺は触れたら負けのルールだ、ここは迂回して……。


「地を這う雷鳴よ」


 やはり、そう来るか。方向転換が必須の炎の護り。空中の姿勢制御だけでは避けられないとなれば地に足をつけるしかなく、動きを強制したのならばそれを狩るのは必定。正しい動きだ。


 何より驚いたのは、ここに至るまで魔術を全てストックしてあったということ。俺はオルフォーズに誘導され、彼はそれに従って必要な魔術を吐き出したにすぎない。現状オルフォーズが有利と言っていいだろう。


「すっげぇ、先生相手にあそこまで……」


「ただ真面目なわけじゃないってことだね。妬けちゃうなぁ」


 だが、それを覆すのが俺の仕事だ。無理な体勢で跳び上がり、迅雷を避ける。が、空中で大きく姿勢を崩す。しかしオルフォーズからは目を離さない。少しでも意識を他に割けば、撃ち抜かれる。


 うまく腕を使って着地すると、その勢いを利用して足元まで滑り込み、木剣を振るう。こう来るのは読めなかったのか一瞬焦ったようだったが、冷静に下がることで俺の攻撃を避け、次の攻撃の準備をしてくる。


 なかなかやる。さすが、稀代の天才と評されるだけの魔術師だ。とはいえ教師としてはここで負けてやるわけにはいかない。より前に出て、追撃を加える。


 魔術を撃たせない。そのまま押し切ってやる。普通の魔術師ならば、この距離になればもはや無抵抗。つまり俺の間合いだ。


 結論から言えば、オルフォーズも例外ではなかった。懐に俺を入れてしまえば最後、俺の投げの前に沈んだ。


 だが、他の魔術師と違う部分が一つあった。彼は俺の接近に際し、明らかに格闘の構えを取っていた。デトルもそうだったが、咄嗟に『そう』できる魔術師はたとえ軍人でも多くない。稀有な才能、というよりこれは訓練の賜物だろう。最終的には問題にならない強さではあったが、それでも飛び抜けて脅威的ではあった。


「流石です、先生。ありがとうございました」

次回、580:未熟と不満 お楽しみに!

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