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489:訪問者たち2

「こんにちはー!」


「起き上がれるようになったんですね、よかったです」


 【影】と【破】の訪問の翌日、俺の部屋に現れたのはシャーロットとリーンだった。心強いが、ニクスロットは大丈夫なのだろうか。


「クレメンタイン様の護衛はグラシールさんに任せてるんです! ボクたちが守るよりよっぽど安全ですよ〜」


 シャーロットが教えてくれる。なるほど。そういえば四国会議の時も護衛として来ていたか。俺たちとの戦いの後、かなり丸くなったような気がする。何か心境の変化でもあったのだろうか。


 いや、変えざるを得なかったのか。彼が作り上げた永遠の国は俺たちが打ち砕いてしまったのだ。新しい時代に取り残されなかったのは、彼が内に持つ柔軟さゆえなのだろうか。


 きっかけはファルス皇国での戦いだったのかもしれない。ヴィアージュのところに顔を出して、自由に魔法を使い始めてから少し表情が柔らかくなった。


 神代を生き抜いた、永遠の命を得た彼もまた人なのだ。背負うものが大きければその分動きも鈍り、苦しくなるものだろう。それから解放できたのは、いいことだったのかもしれない。


 とはいえ、俺たちがグラシールを砕くだけではこうはならなかっただろうが。クレメンタインをはじめ、今を生きる強い意志があったからこそだ。


「あいつにも、また今度会いたいもんだな」


 女王の護衛をしている今は難しいだろうが。これから俺も忙しくなるのだし、そういうことができるのはまだまだ先のことだ。


「しかし、よくこんなに集まってくれたよな。同盟様様だ」


 ぽつりと呟くと、シャーロットとリーンは不思議そうに顔を見合わせる。そんなにおかしいことを言っただろうか。


「もしかして、連合軍の結成については聞いていないんですか?」


「あ、ああ……」


 そんなに特殊な裏話があったのだろうか。対策方法がある程度定まったから各国協力して防衛しようということになっていたのだが、違うのだろうか。


 リリィもシーナも、【影】も【破】も言っていなかったから普通にそういう取り決めがあったのだと思っていたが、そう簡単でもないらしい。


「リリィちゃんが、事前に声をかけて人を集めてたんですよ〜! だから対抗策が見つかった時に、ボクたちも急行できたんです!」


 そうだったのか。確かに対策が見つかってから軍を結成、実際に動き出すまでは時間がかかるはずだ。迅速に集まれたのはリリィの下準備のおかげだったのか。


 俺が倒れた時、ギリギリのところでシーナが駆けつけてくれたのはそのおかげだ。リリィが動いてくれていなければ、異形を止めることもできず、俺もあのまま意識を失って、最悪死んでいたかもしれない。


 今思えば、気を失う直前に聞こえた音、あれは【影】が刀を抜く時のものだったのだ。全て合点がいった。


 こうして俺が話していられるのも意志と奇跡の積み重ねの上なのだと思うと、少し感慨深い。


「そうだ、あれから魔獣は減ったか? 結局異変の原因はわからなかったみたいだが」


 俺たちがイゾルデを連れてニクスロットに行けたのも、魔獣の増加が名目だった。それ自体は助かったが、害があるようなら減った方がいい。


「完全に収まったわけではないですが、数は減っていますね。お肉や血管などを買い取っていただけるようになったので、むしろ助かっています」


 それならばよかった。血管を買い取っているのは主にイゾルデだろうか。今は他に魔獣の血管が有用だと考えている人は少ないはずだ。イゾルデが卒業研究を発表すれば、徐々に需要が高まっていくだろう。


 今のうちに買い占めておけば一儲けできるかもしれない。それもこれが解決してからだ。そもそも魔獣の血管など保管する方法も知らなければ場所もない。こういうのは商人に任せるのがいい。餅は餅屋、ということだ。


「ボクがいるからよゆーですけど、早く元気になってくださいね!」


「本当に、今までありがとうございました」


 シャーロットとリーンが出て行ってすぐ、近くの廊下が騒がしくなる。この爆弾が暴れ回っているような感じ、もしかして……。


 まるで大砲のように、力強く扉が開く。


「レイさーん、遊びに……じゃなくてお見舞いにきましたよっ!」

次回、490:訪問者たち3 お楽しみに!

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