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454:秘密の相棒

「許可したとはいえ、なんだこの食事会は……」


「ま、リリィの頼みだ。許してくれよ」


 マスクを外し、大きく溜息を吐くオラージュ。一緒に食事をすること自体は許可を得たのだが、食事をするにはマスクを外す必要がある。魔力の薄いところではマスクを外せない彼女のために、本人の部屋に集まる事になってしまったのだ。


「良いじゃないかオラージュ、皆で食事をするのは楽しいぞッ!」


「騒々しいのがいなければな。ま、とりあえず頂くよ」


 自分のことを指されているとわかっていないのか、レオはニコニコしながら首を傾げている。この中で群を抜いて騒々しいだろうに。


 俺もオラージュに倣って羊肉を挟んだパンを齧る。オルのものとは一部調味料、香辛料を変えたソースだ。確かファルスの方ではメジャーな薬草を加工したものだったはず。


 贅沢に厚めに切った羊肉は、食べ応えがあって良い。ソースのおかげで独特の風味も気にならないし、これは良い出来だ。今回はリリィにほとんど任せきりになってしまったが。


「焼いた肉を食べると、やはりアイラを思い出すッ! あのときの肉も旨かったッ!」


「飯の度に昔話か。身体は変わらずとも随分老いたな」


「かか、オラージュの言う通りッ! 心も常に若く在らねばなッ!」


 アイラ、とはあのアイラ・エルマのことだろう。フラマも言っていたが、こいつらもその時代からこの国に仕えているのか。それにしても、焼いた肉で思い出される人間ってなんだ。


「昔の肉はおいしかったの?」


「いや、食事の文化は今の方が優れているなッ! あの時は極めて腹が減っていたんだッ! やはり空腹の時の飯が一番旨いッ!」


 リリィがうんうんと頷く。それに関しては俺も同意だ。古くなって固くなったパンも、腹が減って死にそうな時には何より美味かった。空腹を満たせる幸福感が、全てを上回るのだ。


「あの時のガキがこうなるとは、ってな。アイラもよく言ってた」


 なんでもレオは幼少期に空腹のところをアイラ・エルマに救われたらしい。行き倒れていたところに、焼いた肉を分けてもらったのだとか。それで焼いた肉か。肉一つでここまで強力な部下がついてくるのなら、相当安い買い物だろう。


「それで、なんで私まで巻き込まれたんだ。呼んだのは君だろう、リリィ嬢」


 自分がなぜこの奇妙な食事会の一員になってしまったのかわからないオラージュの問いはもっともだ。というかこの場でそれを知っているのはリリィだけ。俺もレオもわかっていない。


「んむ……?」


 リリィがオラージュの方を見ると、オラージュはぎょっとしたような感じで少し後ろに下がる。そんなに怖いだろうか。自己紹介の時に、いつ炸裂するかわからない銃口を向けられたせいか。


 しばらく口いっぱいのパンを噛んでいたリリィだが、飲み込んでお茶を一口飲むと、やっと口を開く。


「ヴィアージュが、オラージュに怒られそうって言ってたから。勘弁してあげてって言いに来たの」


 なるほど、そういうことだったか。リリィも律儀なやつだ。今頃俺たちを覗き見ていれば、ヴィアージュは笑い転げていそうなものだが。


 いまいち状況の飲み込めないオラージュのために、何があったかを説明してやる。最後まで話すと、呆れたような、そして少し拗ねたような表情になる。


「まったく、あの子は私をなんだと思ってるんだか。現状リリィ嬢に急ぎの用はない。休みの日の過ごし方にまでうるさく言うほど私は細かくない」


「ん、わかった。ありがとう。レオも、オラージュのこと誘ってくれてありがとう」


「いいってことよッ! 嬢ちゃんはまだ小さいんだ、頼れる時に頼ってくれよッ!」


 にかっと笑いながら、親指を立てるレオ。リリィも親指を立てて返す。レオからすれば静かながらもしっかり反応があるあたりが、面白くて仕方ないのだろう。リリィに構ってくれる人間は多いに越したことはないが。


「この手の女には勝てない運命か……」


 そう呟くと、オラージュは諦めたようにお茶を啜る。その瞳は、レオがアイラの話をする時以上に遠いところを映しているような気がした。


 そういえば、ヴィアージュも似たような目でリリィを見ていた。リリィに似ている共通の知り合いでもいるのだろうか。


「聞いてなかったか。あの子の元相棒さ。神代に死んだけどな」


 返ってきた答えは、少し意外なものだった。『超越者』とまで呼ばれたあのヴィアージュに、相棒がいたとは。後方支援が主な役割だったのだろうか。ヴィアージュに関する記述の中にも、相棒的存在の影は見られなかったはずだ。


「どんな奴だったんだ?」


「んー……。私からすれば『ワガママなクソ女』ってとこだ。話したい時がくればあの子が話してくれるだろう。気長に待て」


 リリィに似た相棒、か。少し気になるが、オラージュの言う通り今は話したくはないのだろう。いつ話してくれるのかはわからないがのんびり待つとしよう。


 まだまだ俺にはやることがたくさんあるのだ。まずは明日のカイルの帰国。荷物も多いし俺が出迎えてやらなければ。

次回、455:イミテーション お楽しみに!

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