413:合流
終わりを迎えた神の国。
焦土にも芽吹きがあるように、それでも彼らは死んでいなかった。
EX章 《廻生神聖王国》 開幕。
「よっ、久しぶりだな! ちょっと雰囲気変わったか?」
見送りに来たカイルと共に、王都でアルタイルと合流する。あれから特に会っていなかったのか、二人とも嬉しそうだ。
「確かに、レイさんちょっと大人っぽくなったっすね」
「カイルもな! その、親父として誇らしいよ」
「えへへ……」
この二人も、ちょっとずつ親子として在ろうとしているのかもしれない。それらしいことをする前に俺の養父は死んでしまったから、少し羨ましい。
今思えば彼は父親らしく在ろうと頑張ってくれていたが、俺はただ生きるだけで精一杯だ。親子らしく在れなかったのではなく、俺が子らしくできなかっただけだ。
だが、いくら他を羨んだところで養父が死んだ事実に変わりはない。やり直すことはできないのだから、カイルを見守るのに徹するとしよう。
「ま、そろそろ時間だしな。また今度!」
「はいっす!」
カイルに手を振って別れると、アルタイルと一緒に馬車に乗り込む。絶妙に似合うとも似合わないとも言えない色眼鏡を額まで上げた彼は、いつもよりも嬉しそうな顔をしていた。
「親子をやりなおす、ってのはどんな気分だ?」
「やってみて思うが、まあ意味のあることではないよ。子供の頃やりたかったことを今やっても満たされないのと同じさ」
「じゃあ……」
「やらなきゃいい、と思うだろ? そういうもんではないんだな。俺にも、多分カイルにもわからねぇのさ」
まあ、ままならないこともあるだろう。意味があるからやる、意味がいないからやらないというものでもないのだろうし、お互いこうありたいという意志が一致しているならばそれでいい。
そういう意味では、こうして心が通じ合っていることが最も親子らしいとも言えるかもしれない。
しばらく進み、国境に近い砦で馬車を停める。ここでもう一人拾うことになっている。
「お待たせしました。お世話になります」
ニクスロットからの使者はリーンらしい。シャーロットは実力こそあるが指導に向いた性格ではないし、リーンに頼むのでちょうどいいだろう。
リーンと同時に、もう一人。マントと帽子で顔を覆ったこのスタイル、顔を見なくてもわかる。
「我も世話になる」
ギシギシとした金属質の声、間違いない、【静】だ。他に馬車に乗り込む人がいないところを見ると、これで全てなのだろう。
ずいぶん奇妙な組み合わせだが、指導力については問題なさそうだ。これならファルスも満足してくれることだろう。
そうなると、やはり不安材料になるのは俺だ。俺がやっていることはいわばズルだ。再現のできないズルの方法を教えたって仕方がない。
「とりあえず、みんな初対面だろうし自己紹介でもしておくか!」
馬車が再び出発すると、アルタイルが軽く膝を叩きながら宣言する。微妙に話しにくい空気だったから助かった。
「俺はジェローム・アルタイル。王国軍では狙撃部門狙撃部門を纏めてる。今回は、一応彼の補佐ってことで来てるんで、そういうことで一つよろしく頼むぜ!」
「我は【静】。帝国軍特殊部隊所属だ。訳あって顔と真名は明かせない」
「えっと、リーンといいます! 剣を作る魔法が得意で、今はクレメンタイン様の護衛をしています。よろしくお願いします!」
「あー、レイだ。ここのメンバーとはそれぞれ面識があるんだが、覚えてくれてるか?」
全員がこくりと頷く。そう昔のことでもないし忘れられてはいないと思ったが、それでも少し不安だった。何せ俺の方だけ覚えているというのは格好がつかない。
アルタイルのおかげでなんとか場の空気は和やかになり、お互い会話も弾んできた。これならば、ファルスの王都まではそう長くは感じなさそうだ。
次回、414:指導開始 お楽しみに!




