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408:ここに来た理由

 なぜここにシャーロットとリーンがいるのか。幻覚かと思って何度か目を擦るが、どうやら真実らしい。


「お、二人とも、元気そうでなにより! クレメンタイン陛下は一緒じゃないのかい?」


「はい! クレメンタイン様は自室で考えることがあるそうです!」


 この二人、護衛だろうに二人でふらふら遊びに出てきてよかったのだろうか。これだけ強固な城の中だし、危険は少ないだろうが。


 それよりも、クレメンタインまでもがここに来ているとなると、話はかなり大きなものになってくる。この会議とは、もしや。


「おい、キャス……」


「ま、こうしてみんなを驚かせることもできたし、黙ってる必要もないか。私たちがここに来た理由は、アイラ、ファルス、ニクスロット、そしてガーブルグの四国による同盟を結ぶためだよ」


 リリィも、ハイネも、カイルも、みんな同じく目を見開いている。手を合わせ、それと同時に刃も交えた国々と、同盟を結ぶことになるとは。考えてもみなかった。


「確定事項ではないがな。各国で条件が合意されて初めて同盟は結ばれる」


「まあまあ、そう言わず仲良くしましょうよ〜。あ、それ美味しそうですね! なんていう料理なんですか!?」


「ちょっと、シャーロットちゃん……!」


 冷静に厳しい指摘をする【破】に対し、驚くほど軽い調子でシャーロットが絡む。それを止めるリーンを見ていると、少しリリィとハイネに似ているようにも見える。


「わ、妾とて、同盟に反対なわけではない……! そう欲しがらずとも妾のを一個やるから食べてみるといい」


 焦ったように【破】がパンを差し出す。どうやら本当に敵対したいわけではないらしい。敵だったからというのもあるが、前会った時とは随分印象が変わったように思える。


「【破】、優しいね。前は怖かったのに」


「リ、リリィちゃん……!」


 少々聞きにくいことだったが、リリィのおかげで多少角が立たなくなってよかった。それはそれとして、リリィが『優しい』と判断したのは食べ物を差し出したからだろう。わかりやすい。


 リリィの言葉に、【破】は少し顔を曇らせる。何か触れてほしくないことに触れてしまったのだろうか。


「【縛】の支配が無くなったからな。おかげであやつは謹慎中だが」


 当然といえば、当然だが、長いこと相棒としてやってきた【破】にはどこか思い入れのようなものもあるのだろう。表情を見たところ恨んだりはあまりしていないようだ。


 シャーロットとリーンにはよくわからない話だろうが、リーンは興味深そうに聞いているしシャーロットは食べ物に夢中だ。問題ないだろう。


「あやつの布がないから妾の出力もダダ下がりでな、早く思い切り戦いたいものよ」


 そう言うと、【破】はちらりと俺を見る。【影】と一緒ではあったが、そこそこ渡り合ったのを覚えていたか。


 熱を扱う魔術師は苦手だ。特に【破】の拳は熱くて速い。できれば二度と相手はしたくない。


「ふ、お主との戦いも面白そうだが、妾が真に倒したいのはあの黒衣の男。あの悔しさは忘れんぞ」


 そういえば、アルタン山脈での戦いではアーツが彼らを引き受けてくれたのだったか。【破】の言葉に、リーンがぴくりと反応する。


「そういえば、アーツさんはいらっしゃらないんですか?」


「今回は、アーツさんはお留守番っす。会いたかったんすか?」


「い、いえ! お世話になったのでご挨拶できたらな、と……!」


 リーンはぶんぶんと首を振る。ここまで否定されるとは、アーツも不憫なものだ。確かにアーツに情けをかけられて今の立場にいるようだし、少なからず感謝はしているのだろう。


「今度ニクスロットに行く用があったら連れて行くよ。楽しみにしててね」


「は、はい……!」


 キャスも心なしか嬉しそうだ。実際アーツが何か直接人に感謝される機会は少ないような気もするし、新鮮なのだろう。


 それからも、他愛もないことを話しながら軽食の時間は過ぎていった。

次回、409:会議 お楽しみに!

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