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347:鼎立

 現れたのは黒服黒傘の3人と、赤服赤鞘の3人。雨も降らない夜に傘。魔術師の時代に刀。側から見るとかなりおかしな集団だが、正体はわかる。


 おそらくこいつらは王都北部・南部のギルドの幹部級メンバーだ。先程の先頭に参加していたメンバーと服の色が一致している。


「ギルドは色だとか持ち物だとか揃える決まりでもあるのか?」


 奥の集団と睨み合うモルガンの後ろに立ちながら、エリアスに尋ねる。


「そうだ、各ギルドそれぞれにある程度の色と持ち物が決まっている。服飾規定のようなものだと思ってくれればいい。北部は黒、持ち物は傘。南部は赤、持ち物は刀。そしてウチは白で持ち物は……」


 そこまで言うと、エリアスは耳を覆っていた髪をかき上げる。そこには綺麗な空色の耳飾りが下がっていた。


 他のギルドに比べてかなり地味というか、目立たない持ち物だ。傘や刀と違って小さいから戦闘の邪魔にもならないだろうし、効率的というか、使いやすく思える。


「ここは北部が引き受けよう。日が昇る前には痕跡も残さず撤退する」


 やけにあっさり引き受けたな。やはり俺のせいで北部メンバーの死者が多いからだろうか。戦場の後片付けなど面倒で仕方がないはずなのに。


「じゃあ、俺たちは行こうか」


 北部、南部のメンバーと鋭い視線を交わしながら、モルガンは広場を去る。まるでこの広場が圧縮された戦場であるかのように空気が張り詰めている。モルガンに従いて広場をでてから、思わず大きく息を吐いてしまった。


「モルさん、あいつらに任せてよかったんですか?」


「冷てぇ話かもしれねぇが、裏切り者にそこまで情をかけられるほどウチに余裕はねぇよ」


 どうやらエリアスは北部ギルドに後処理を任せたことに不安を覚えているようだ。なにか悪い噂でもあるのだろうか。


「北部が一番損しただろ?だから他のギルドのメンバーも皆殺しにしちまおうって魂胆なのよ」


 俺が困っていることを察したのか、アクベンスが耳打ちしてくれる。おかげで事情を飲み込むことができた。


 北部としてはそうしたいだろう。ギルドの影響力もだんだんと衰退している現在、メンバーを失うことは数字以上に大きな影響が出る。


 そこを突いて南部と共謀し東部を潰しにかかったのだろうが、負けてしまってはもう他のギルドの力をできるだけ削るために足掻くしかない。


 おそらく北部の生き残りは一人程度、モルガンの魔術による気絶で済んだのは新生・東部と南部だけだから、それを全員殺せばとりあえず南部との損失の差はイコールにできる。


 そうであればむしろ南部が動かなかったことが不思議だ。そもそもこの戦いに出した時点で捨て駒として使い捨てるつもりだったのだろうか。それとも先に言われてしまった手前後から名乗れなかったとか。


 理由はどうでもいいが、あの場で三ギルドの決戦なんて話にならなくてよかった。あくまで今はこの国をひっくり返すのが目的だ。ギルドの頂上決戦なんて始められては困ってしまう。


「アイツらは俺が嫌で出て行ったんだ。助けたところでまた殺し合うだけなんて、俺はイヤだよ」


 先頭を歩くモルガンは、俺たちに顔を見せてはくれなかった。ただひたすら、帰路を往く。


「それに、今戦うべきは北部と南部のヤツらじゃないしね。【蒼銀団(アビス・インディゴ)】と国王、アイツらよりもよっぽど大変だ。頑張らなきゃね」


 彼に、危うさと恐ろしさばかりを感じていた。しかし、今は違う。俺は確かに、前を歩くこの背中に、頼もしさを感じていた。

次回、348:共同戦線 お楽しみに!

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