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284:神話顕現聖域7

 一瞬先の絶望を先に見た。これから何が起こるかはわからないが、この状況を絶望的に帰る何かが起こることだけはわかった。


 しかし、もはや始まった落下に逆らえるわけがない。俺達が巻き込まれない高度まで落下してから、リリィの砲撃が放たれる。


 ひときわ強い光を放つ皇都。そして神をも殺すのではないかというほどの火力の砲撃が天を横切る。


 目を閉じていても失明しそうな激しい光だ。そのエネルギーは熱を持ち近くで焚き火に当たっているように熱い。


 じりじりと少しずつ肌が焦げる。ミュラを背にして光から護りつつ、ゆっくりと落下する。この、嫌な予感は。


「そんな……」


 砲撃が終わっても、少女は無傷だった。少しも傷ついていない。その熱量に焼かれることもなく、砲撃に身を削り取られることもない。


 あれは……二枚目だ。少女は障壁を複数枚展開し、切り札となる砲撃を防ぐつもりだったのか。


 そして、その目論見は見事なまでに成功した。もはや俺達に為す術はなく、あの雷に身体の芯まで焼き尽くされる他道がない。


「悪い、ミュラ。とんでもねえことに巻き込んだ」


船の残骸を足場に下りつつ、腕の中のミュラに謝る。まだ意識ははっきりしているが、身体はボロボロだ。


 このままでは今までの全てが水の泡になってしまう。せっかく積み上げた努力が全て無駄になる。


 もう一度、あの障壁を破るには。もはや届かない空に手を伸ばすには。ナイフを投げても少女の許には届くまい。どうすれば。


 リリィは俺の頼みもあってもう一発撃てる分の魔力を貯めてくれている。もし俺に翼があったならば、勝利をもたらせるのに。


「飛翔を、望まれますか……?」


 絞り出すようにミュラが言う。その表情は、ほとんど動いていなかったにも拘わらず、どこか俺に安心感を与えてくれた。干したばかりの柔らかい布団のように。


「ああ。今翔べるのならば、俺はなんだってする」


「では私が……レイ、貴方の翼となりましょう」


 ミュラは初めてはっきりと微笑みを見せると、ふわりと俺の手から離れていく。


「ミュラ……?」




教皇の寿命まで─────あと134時間

次回、285:神話顕現聖域8 お楽しみに!

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