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260:金剛石の輝き

 白く気高い輝きが皇都全体を包む。リリィの輝きが白い皇都の建物に反射しているのだ。まるで、皇都がダイヤモンドになったかのよう。


「さすがに眩しすぎるな」


「一生に一度あるかないかの光景さ、焼き切れるギリギリまで目に焼き付けておきたまえ」


 確かに、こんなに大きいダイヤモンドはこの世界にはあり得ない。疑似的にでもこんなものを見られる機会は二度とないだろう。


 黒曜石と金剛石と言ったところか。遠方で天に浮かぶ黒雲と、燦然と輝く最後の神の都市。そのどちらがより力を持っているのだろうか。


「あ、見えたっす!」


「あれが、魔獣の王……?」


 巨大な暗雲を従える神話領域外の王は、意外なことに少女の姿をしていた。一対の角と翼を持つ異形だったが。


「あれ、やればいいの」


「おうよ、撃ち落としちまいな!」


 見れば、リリィの背の近くにも魔法陣が展開され、まるで翼のようだ。さながら天使と悪魔の戦いというところか。


 巨大な光の奔流が南へ向かって飛んで行く。聖なるその輝きは、まさにこの国で振るうに相応しい神の力だった。


 絶対不壊の不屈のダイヤモンド。その輝きは誰にも侵されることのない、この星の頂点に立つ最強の一閃だった。


 あまりの眩しさに、とうとう目を開けていられなくなる。といってもおそらく俺が一番長く目を開けていたはずだが。


 腕越しにも光が引いたのがわかったところで、ゆっくりと目を開ける。光の奔流のせいで、まだ目がチカチカする。


「滅ぼすことは、叶わないか」


 異形の少女は、未だその形を完全に保っていた。本体にはほとんどダメージが入っていないように思える。


 しかし、空を覆いつつあったあの暗雲は大部分が消え、残るは少女周辺の一部分のみとなった。


 あの雷がなければ俺達が接近しての戦闘にもかなり可能性が出てくる。あの空を晴らしてしまうとは、やはりリリィの魔法は常軌を逸している。


「あとは任せろ。ここからは俺達の専門だ」


 リリィの頭を軽く撫でると、塔の上から身を乗り出す。そして気付いた。


「リリィちゃんパワーですかね……」


「まあ、それ以外にないっすよね」


 眼下の皇都では、生き残った人々が歓声を上げていた。闇を打ち払った神威の力に、それを振るった白の御子に。




教皇の寿命まで─────あと173時間

次回、261:異形 お楽しみに!

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