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248:二人の天使2

「無茶だ。俺の力じゃお前を守り切れない」


 確かに、リリィの火力は彼らを打ち倒すには必要なものだ。しかし俺単身で守れるのはせいぜい1.5人分くらい。相手があれだけの火力になると俺にもできる限界がある。


 いくらリリィが小さいとはいえ、少しでもあの砲撃に触れれば余波でかなり身体を持って行かれる。指先が触れただけで肘まで無くなるとか、そういうことになってもおかしくない。


 そして、俺にはリリィを守る自信がない。リリィの命、リリィの身体を預かる自信がない。敵の大きさか、もしくはリリィを喪うことを恐れている。


「レイが私を守るんじゃない、私がレイを守るの」


「「「へ?」」」


 突然の宣言に、全員がリリィを見て口を開ける。確かに魔力を全力で回せばあの火力とも渡り合えるだろう。


 なにしろ、そういう発想がなかったのだ。俺達はいつも彼女を庇護するべき切り札、最終的な最高火力ではあるものの、守る存在として扱ってきた。


 しかし、俺達はもう少しリリィに頼ってもいいのかもしれない。まだ幼くとも、十分に戦力と呼べる力を持っている。


 むしろ、俺よりも単純な力ならよっぽど強い。小さい見た目で俺達は無意識に彼女を戦力としてカウントするのを忘れていた。


「それなら話が早い。レイ、カイルの二名は前衛として天使の直接排除に当たる。俺とリリィで後衛、キャスとハイネは教皇庁の防衛。いいかな?」


 リリィを防御要因として運用できるから、こうして余裕を持った布陣で展開できるのだ。やると言ってくれたことに感謝しなければ。


 すでに暴徒が押し寄せている教皇庁の入り口へキャスとハイネが向かったのを見届けると、アーツから詳しい作戦について教えてもらう。


 基本的に、俺たちは自由に動いていいようだ。リリィが俺達に飛来する攻撃を防ぎ、アーツが固定砲台となっているリリィを守る。


 アーツの禁呪ならば容易に耐えられるだろう。先程行ったときも正面から攻撃されていたが無傷だったし。


「悪いけど俺はガーブルグ帝国での傷が治ってなくてね、鎖での支援はできないのであしからず」


「それだけで十分だ。あ、リリィ、俺とカイルは3:7くらいの割合で守ってくれ。俺の分は進路を開く程度でいい」


「うん、そうする」


 いくら俺が魔力を喰らう体質とはいえ、魔力の圧は俺の脚を止めてしまう。だから進むには攻撃を避ける必要があるが、そんなことをしていてはいつまで経っても前に進めない。一撃も喰らってはいけないカイルとは違うから、俺の守りは薄めでいい。


 なんだか、リーンの力を借りてグラシールと戦った時のことを思い出す。あのときも結局、誰かに背中を押してもらっていた。


「悪いな」


「いつも、レイが守ってくれるから」


 絶対に負けられない。背中を押す手の温かさと、それがもたらす血液の滾りを、俺は今更ながらに知るのだった。




教皇の寿命まで─────あと218時間

次回、259:二人の天使3 お楽しみに!

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