247:二人の天使
248:二人の天使
とりあえず特務分室全員を教皇庁の広めの部屋に集め、教皇にこれから倒す天使について教わることにした。
「地下に眠る天使の名はスピネルとガーネット────」
「光の神が信仰を集めるために造った心の天使。他者を操る魔法が得意」
最近よく勉強のためにアイラ・エルマ叙事詩を読んでいたリリィが呟く。さすがに記憶が新しいからすぐに出てくる。
しかし、心の天使か。道理で宗教一つで国を創れるものだ。人の心を強制的に束ねたのだから、強力なのも当然だ。
あの儀式魔術も、彼らの力で生まれたものなのだろう。本来強力な効果を発揮することのない儀式魔術があれだけの深度で洗脳できるのだから、少しおかしいとは思っていたのだ。
スピネルとガーネットの二人は、四大天使の一角である紅玉の天使の下で戦っていたという。
神の直属ではなかったものの、四大天使の右腕、つまり神の二番手として特に自陣内で活躍したとされている。
しかし、アイラ・エルマ叙事詩で語られているのはこの程度。なにしろ活躍していたのは神の力の及ぶ領域内。主な戦場となった地帯ではないのだ。
ゆえに彼らのイメージは鮮明に残っておらず、光の神陣営にいた天使の一人、という認識しかないのだ。
「では、実際の彼らの能力はどうだったのかといえば、特異な点は双子であることくらいで、それ以外は普通の精神魔法の使い手だったとか」
「なーるほど、反響増幅か!」
キャスが合点がいったという様子で手を叩く。聞いたことのない単語だが、意味は大体分かる。
「その通り。ほぼ同一に近い二者が詠唱を共鳴、反響させることで魔法の効果を飛躍的に向上させる高等技術」
ジェイムがやっていた両腕での詠唱と同じ系統の技術だろう。それよりもずっと高度で強力なもののようだが。
だから先程様子見に行ったときの砲撃は一撃で、かつ超高火力だったのだ。【魔弾】のようなものを増幅したのだろう。
あれと戦うには相応の火力が必要だ。撃ち合うにしろ、相殺するにしろ、あれとほぼ同じ火力を用意しなければどうにもならない。
「わたしがやる。レイ、援護して」
教皇の寿命まで─────あと218時間
次回、248:二人の天使2 お楽しみに!




