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211:諜報

 魔獣の出現が凶兆だなんて伝承はさらさら信じちゃいないが、それを抜きにしても魔獣の大量出現は危険だ。


 現在はまだ行商路が断たれる程度で済んでいるが、もしこれがさらに拡大したら。飢えた魔獣は恐ろしい。都市一つくらいなら一集団で破壊してしまうだろう。


 現在はファルス皇国の方で活動しているようだから静観していてもいいが、もしアイラ方面に進出してくるのであれば放っておけない。とりあえず軍上層部に情報を伝えておこう。


 街を駆け抜けて王国軍の本部へ向かう。街を走るのは悪くない。自分の足に合わせて景色が流れていく様子はなかなか気持ちがいい。


 王国軍司令部に入ると、顔見知りの兵士に声をかけて奥に入れてもらう。南で魔獣が増えていることはやはりこちらまで届いていなかったらしく、すぐに南部の砦に追加戦力を派遣してくれるとのことだった。


 司令官のひとり、オルダーは、狙撃事件をきっかけにずいぶん出世したようだ。無理矢理働かせたのだしこれくらい出世してもらわないと恨まれてしまいそうだが。


 ただ、戦場に引きずり出しただけだというのに、彼には出世の立役者のように扱われてしまっている。先生なんて言われるとさすがに対応に困ってしまう。


「しかし、先生と同僚の方は本当にすごいですね。軍にも諜報班はありますけど、こんなに早く地方の情報は回ってきませんよ」


 まあ厳密に言えば諜報ではないのだが。どちらかというとただの世間話だ。まあそこが軍などの諜報班の弱点でもあって、市井にあまり目を向けようとしない。今回はその点で彼らを上回ったのだろう。


「調査だけでなく、行商人に扮して街の人と話してみるといい。別の視点からの情報が手に入る」


 手紙のやり取りで、なんて言うと格好がつかないから適当に誤魔化す。実際間違ったことは言っていない。それをしきりにメモしたりするものだから少し心が痛いが。


「それで先生、少しご相談なんですが」


 真面目な顔をしてこちらを向いてくるものだから、思わず目をそらしたくなる。恥ずかしいとかではなくて、これは面倒な用を押し付けられる前兆だ。


 魔獣はどうだか知らないが、こういう目は凶兆だ。面倒な依頼が降ってくる。


「もしもの時のために、オル州に滞在してもらえないでしょうか?」

次回、212:バカンス お楽しみに!

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