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196:絶望の暴食

 船上で輝く蒼白い光。それは、俺達の希望の光。現状を打破できるのは、リリィの魔法と、それに込められた特殊な力しかない。


 【滅】の脅威的な再生能力を大幅に減衰させるその効果は、対【滅】のためにあると言っても過言ではないほどに強力だ。


 圧倒的な熱量の光が、【滅】に向かって迸る。その光は、全ての存在を許さない。そんな絶対的な破壊の力を感じた。


「させるかッ!」


 【滅】は、破山剣を思い切り振り上げて光に叩きつける。普通なら刃ごと消し飛ぶはずだが、そうはならなかった。刃に魔力を纏わせて拮抗しているのだ。


 すごい。激しく叩きつける光を今のところ完全に防いでいる。山道で弾かれたような即興の一撃ではない。魔力を高めたうえでの全力砲撃だ。


 ひときわ強く輝いた最後の一波すらを凌ぎ、【滅】は無傷で立っていた。リリィも驚いたような顔をしている。


 アルタン山脈で戦った時から成長しているのか。いや、これが彼の本来の姿と考えるのが自然だろう。この前とは防ぎ方も変わっているし、ただ彼の本気度合いが変わっただけだ。


「光の魔法には、負けん。絶対に、負けて堪るか!」


 その瞳には、国の防人とは違う憎悪の炎が灯っていた。ただの私怨というには根深いが、国を守るといった高潔さはない。


 それにしても、怒りの対象は光の魔法か。ずいぶん大きなものを相手取ったものだ。過去に何かあったのだろうか。


「神殺しの戦士の逸話をご存知ですか?」


「ああ、まあ一応」


 創世の五大神の死因は様々だが、唯一敵に殺されたのは大地の神だ。彼は創世の際に多くの力を使い、神々の戦いが始まるころには五大神の中では一番力を失ってしまっていた。


 五大神のうち一番力を持っていたのは光の神。その力も凄まじかったが、なにより彼女に力を与えたのは信仰だ。神々の中でも最初に生まれた光の神は、創世の立役者として多くに祀られていた。


 その差は部下、眷属にも影響する。圧倒的な力を持つ光の眷属に、大地の眷属は手も足も出なかった。


 そんな中起きたのが神殺しの事件だった。低級の神などはそこら中で生まれたり死んだりしているのだが、五大神が殺されるのは初めてだった。


 大地の神を殺したのは光の眷属、四大天使の一人に使える者だった。眷属の中でも上位に食い込む実力を持った光の戦士は、大地の神を側近数人ごとまとめて殺したのだ。


 それ以来、大地勢力は神々の戦いで最初に陥落した脱落者として、他勢力から蔑まれるようになった。現代に至っても、大地勢力を信仰している者はほとんどいない。


「【滅】は大地の神の力を強く引き継いだ一族の末裔ですからね。大地の神の力を決定的に削いだ光の魔法は許しがたいものなんですよ」


 一族の仇のようなものか。確かに根深い内容ではある。それが神代から続く恨みであればなおさらだ。


 であれば、山脈でリリィに撃ち抜かれた時はさぞ屈辱的だっただろう。あれでは先祖の二の舞だ。


「許さん。許さんぞ光の魔法使い。ここで滅ぼしてくれる」


 憎悪で、人はここまで強くなれるものか。身体が何倍にも大きくなって見える。ただ怒りで魔力が膨れ上がっているだけなのだが、その魔力のうねりが身体の膨張に見えてしまうほど濃いものだった。


「しかしまあ。こいつ、倒しようがあるのか?」


 もはや、【滅】は神と呼んだ方がいいのではないかと思うほどに強大に変質していた。神に会ったことなどないが。


「どうすんだよ、これ」


「今は耐えましょう。きっと勝てます」

次回、197:大地の怒り お楽しみに!

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