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184:現世の地獄

「さて、もはや音がどうとか言っている場合じゃないね。ここからでもはっきりと魔力を感知できる」


 燃え盛る炎のような、苛烈な魔力が高速でこちらに向かってきている。その速度はまるで獣のようだ。


「少し登るとかなり平坦な土地っす、そこまで行くっすよ。こんな山道で機動力に優れた敵と戦うのは無茶っすよ」


 カイルの言う通りだ。足場も良くないし動くことも守ることもできない。俺達はカイルの言う平坦な土地まで走って逃げる。


「ギリギリ間に合いましたね……」


 ほっとした様子でハイネが呟く。まだまだ安心できる状態ではないが、斜面で襲われるよりはよっぽどいい。


 それにこちらは損耗しているとはいえ全員が揃っている。きちんと対応すれば撃退できるはずだ。


 激しい熱風。次の瞬間眼前に現れた拳を大きく横に飛んで躱す。かなり飛んだはずなのに耐えられないほどの熱さだった。


 以前戦った時とは別物だ。炎の強さだけではない。拳のキレも速さも段違いだった。今のは襲ってくるのが分かっていたからこそギリギリ避けられたが、もし察知出来ていなければ頭の骨が一発で砕けていた。


 【破】は、さながら獣のようだった。業火の中独り吠える狼のように、人の獣性を限界まで引き出した姿だった。


「見つけたぞ。二度も妾から逃れられると思うなよ」


 【破】の標的はどうやら俺のようだ。まあ骨を砕いて逃げたのだから当然か。彼女の言う通り今度は逃げきれないと考えた方がいいだろう。


 しかし、俺に勝算がないわけではない。見たところ【破】はまだ骨が完治していないのだ。山の下から伸びてきている黒い布が身体に巻き付いている。


 おそらく【縛】が布を利用して動作補助をしているのだろう。動きを見る限り運動能力にマイナスはない。むしろ前よりもよく動いているようにすら思える。


「聖遺物【夢幻の縛布】です。複数ある夢幻の聖遺物の一つで、形状を自由に変えることができるものなのだとか」


 【夢幻の縛布】か。確かニクスロット王国の毒の女が似たような布を使っていた。複数ある同じシリーズの一つなのだろう。


「遠方から操っているし撃退は難しいね。カイル、狙撃できるかい?」


「うーん、無理っすね。角度的に狙撃不可能っす」


 【縛】を倒して【破】の体勢を崩すという作戦は使えなさそうだ。毒の女の使っている布と同じようなものなら直接の破壊も難しい。


「大丈夫だレイくん、俺がやろう。君たちは行きたまえ」


 こんな時に俺の前に出たのは、アーツだった。何故ここでという疑問は棄て、言う通りに山の奥へと向かった。


 俺達に行けと告げたアーツの瞳は、何も聞くなと訴えていた。きっとあいつならば、うまくやって帰ってきてくれるだろう。


 不安を呑み込んで、俺達はアーツに背を向けた。

185:現世の地獄2 お楽しみに!

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