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181:アルタン山脈の死闘4

 収束する魔力と光。そして炸裂。極大の聖なるエネルギーと化したリリィの魔力は、一直線に【滅】へと突き刺さる。


 これぞ、こちらの持つ最高火力。圧倒的な魔力を以て、通った跡全てを灰燼に帰す。光に貫かれた【滅】の左半身は、まるで元からなかったかのように消え去っていた。


「馬鹿な……!」


 そして、リリィの光に抉られた部分は俺の刀傷のように瞬時に回復はしなかった。少しずつ再生はしている。しかし、その速度は異様なまでに遅かった。


「俺の身体に何をした!」


「ただ、壊しただけ」


 今までリリィの魔法にこんな効果があるなんて知らなかった。喰らった者は大抵消滅していたから、再生を抑制するなんて効果があるのは知ることが出来なかったのだ。


 再び魔法を発動しようとするリリィに向かって、【滅】が先手を打とうと突撃しようとする。


「させるかよ」


 【滅】の目の前に飛び出て顔面を思い切り蹴り飛ばす。左脚を失っているとはいえ、もとはあの超高火力を誇る巨躯だ。脚の骨が砕け、地面に落ちる。


 しかし、【滅】の進行を防ぐことはできた。そして、稼ぐ時間はこの一瞬で十分だった。


「天地別つ極光よ」


 再び炸裂する光が今度は右腕を消滅させる。残るのは胴体と右脚だけ。しかしさすがに三連射は厳しそうだ。もう一撃を待つ間にあと少し、時間を稼がなければ。


「【滅】、ここは一度負けを認めて帰投したらどうだい? このままでは君は死ぬよ」


 アーツが無数の鎖を展開しながら【滅】の前に出る。静かに蠢く鎖は、やろうと思えば一瞬で【滅】の身体の自由を奪える。


 そうなれば今度こそ彼は死ぬ。しかし、それが損失になるのはあくまでガーブルグ帝国だけだ。何故ここで帰投を提案するのか。


「貴様、何者だ。ただ毅く狡猾なだけの魔術師ではないな」


「いやいや、買い被りだよ。俺はただの禁呪使いさ」


「貴様の従えているモノの正体、俺は気付いているぞ。古禁呪の使い手、魔剣の化身、それはまだいい。白き終焉、よく扱える」


 魔剣の化身というのは俺のことか。【破幻の剣】と俺が関係があるというのは聞いていたがよく分かったものだ。


 しかし、白い終焉というのは聞いたことがない。アーツには聞きおぼえがあるようで、笑って適当に流しているが、そういう時こそそれは重要な何かだ。


 オーウェンもその名を聞いて目を見開いている。普段は細めで見えない瞳が露わになっていた。


 きっと神話やらアイラ・エルマ叙事詩には出てこない、秘匿された神秘なのだろう。秘匿された神秘が存在するという事実だけは隠されていない。


 神秘を隠すのにはいくつかの理由がある。それが大衆に知れ渡ると危険だから。魔術、魔法世界の禁忌に触れているから。そして、世界を破滅に導くから。


 白き終焉、名前を聞くに最後の理由が当てはまりそうだ。それがもし本当に世界を滅ぼすほどの何かがあるのなら、俺はそれをどうすべきなのだろうか。


「貴様の言う通りだ、一旦退こう。だが次はない、覚悟しておけ」


 【滅】はそう言うと、右脚に力を集中させて遠くへと飛んで行く。それと同時にリリィたちも魔力の集中を辞める。


 とりあえず危機は去ったが、【滅】は『次はない』と言っていた。次は油断も手加減もなし、正真正銘全力のぶつかり合いになるだろう。


 脚の骨折を最低限修復すると、俺達はまた山道を登っていく。

182:未来 お楽しみに!

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